- Amazon.co.jp ・本 (634ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104188
感想・レビュー・書評
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2週間かかって全巻読破。
日輪の次だったので、時代的にすんなり。
前半のシベリア編は、ありきたりだけれども、戦争の悲惨さ、
特に敗戦の恐ろしさを思い知らされました。
日本だって東南アジアで同じような事をしていたし、
人の尊厳が戦争という特殊環境の中ではいとも簡単に
踏みにじられるというのが改めて衝撃。
そしてこれが僅か50年前で、アフリカや一部の戦闘地域では
未だにこういった事が起こっている事を久しぶりに思い出しました。
またありきたりですが、自分がいる環境が如何に、如何に恵まれて
いるのかを感じずにはいられない。
翻って商社編では、主人公の驀進が気持よく、
一企業人としては、清々しく読めます。
仕事上では有能冷静な主人公も殊家庭事情については
感情的になってしまう部分は、仕事とプライベートの切り替え
という部分で、参考になるというか、なんだかなぁって感じです。
大学自体に読んでたら、もっと商社に行きたくなっていたことは
間違い無いですが、今の立場から言えば、やっぱり大組織って
運の要素や業務外のストレスが多いような気がして、
自分の働きたい形とは少し違うのかなとも思いました。
実際はどうか知らないけど。
とにかく、山崎豊子の小説って読み始めるの凄く気合がいるけど、
一旦初めてしまうと一気にハマってしまうのが流石。
読み終わって、悶々としながらも仕事がんばろ!って思えるがいいよね。
がんばろ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山崎豊子は綿密な取材でノンフィクションとも思える小説を紡ぎだしてゆく。本作は40年ほど前の作品になるだろうが、その詳細さは商社や世界企業となった会社に勤める者にとってかけがえのない資料を提供してくれる。
それはともかくも、シベリア抑留の体験、戦争の悲惨さを実体験したことが、部分的に戦後高度経済成長の原動力になったこと、今のゆるい仕事のやり方や人との接し方のいい加減さなど、40年以上前には普通であったこと、今ではやり過ぎで企業戦士とも思えること、対照的に映る。
そういう機会があるのがいいのかないのがいいのか、なくったって、人生を楽しめる人は勝手に見つけるんだろうけど。
楽な反面、やり遂げたときの達成感が薄い。そういうのって、中学生が一生懸命やることをかっこわるいと思い、大人になると一生懸命やることこそがかっこいいのだと思うのと似ていたるするのかしないのか。 -
尿管結石で入院した時にベッドの上で読んだ本。退院して仕事に復帰したら頑張ろうと遅れを取り返そうとそんな気持ちにしてくれた。
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大本営の参謀として終戦を迎え、10年もの長きにわたるシベリア抑留を経て、商社マンとなった主人公の壱岐が、
次世代戦闘機や自動車や石油をめぐって国内外と戦う話。。
社内の派閥闘争、政治家との裏取引などの泥臭い人間ドラマや、
二度と人生を誤ってはいけないと心に近いながら、自らの心を切り刻みながらビジネスを推し進めていく主人公の心の葛藤がみもの。
ビジネスマン必読の書。 -
読み終わっていたのは去年の年末。
大作4巻目。面白くて3巻まではすいすい読んでいたが、
4巻はなんだか失速してしまいなかなか終わらなかった。
石油をめぐる政治家の利権争いやら
大門社長引退をめぐる一連の社内政治やら
黒々とした世界に少し食傷気味。
世の中こんな壱岐さんみたいに信念をもって生きられる人のほうが苦労が多いだろうなと思った。
主人公の中年の恋はちょっときれいに終わりすぎだったような気もするけどまぁ完全にサブストーリーだから下手にどろどろさすのもね。。。という具合かなぁ?
Dec 2011 -
エンディングに至る過程はシリーズでもっとも引きこまれた。主人公の生きざまはハードボイルドというか、やはり少し時代がかって見える。
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これは…
素晴らしいの一言。
組織と個人。国家と民間。そこで揺れる壹岐さんの描かれ方は、他の山崎豊子のどの主人公よりリアルかもしれない。
泣けるぜ。 -
3巻目までは一気に読めたが、4巻目はなかなか読み進めず。
展開がもどかしい。 -
読み切った。「水滸伝」と並行してこの長編小説を読み進めていたが、約3ヶ月の旅が終了した。登場人物が多く、内容も難解なネタが多かったが、何よりフジテレビのドラマを観ていたお陰で人物や仕事内容のイメージがしやすかった。改めて、鮫島辰三を演じた遠藤憲一、里井副社長を演じた岸辺一徳、角田業務本部長を演じた篠井英介はまさにハマリ役だと思った。
本作品から学んだのは仕事への執念である。どの登場人物も、それぞれが自身の仕事に誇りを持ち、身を賭して闘っており、ともすればぬるま湯を求めがちな私にとっては良い刺激を得られた。
最もお気に入りの登場人物はイランはサルベスタン鉱区で世界を相手に丁々発止の闘いを繰り広げ、激戦の末落札し、見事原油を掘り当てた、兵頭信一良。彼の仕事への執念は素晴らしい。
そしてもう一人、東京商事の鮫島辰三。本作品では壱岐のライバルとして設定されており、ヒールの位置付けではあるが、個人的には好きなキャラクターだった。何しろ「臍の緒を切ったときから商社マン」の心意気が凄い。彼の行動力と突進力、鮫のような嗅覚は見習いたいものだ。
ラストは綿花市場で46億円の損失を出した大門社長に勇退を促し、自らも引退、シベリア抑留者の親睦会である朔風会の世話役を引き受け、シベリアに向かう。次期社長を示さず、恋人の秋津千里との関係は曖昧なまま作品は終了。こうした、読者に想像を預けるような締め括り方は、通常は尻切れトンボのように感じられてストレスが溜まるものだが、本作品においては不思議とすっきり書を閉じることが出来た。巨匠:山崎豊子先生の為せる技である。そして何より、山崎豊子先生の取材力には舌を巻いた。中東産油国の習慣、入札制度、原油掘削の技術…、どれをとっても綿密な取材のもとに描かれており、とても真似出来るものではない。作品をじっくり読み、妥協のない取材をしっかりと感じることが出来た。 -
取材力に脱帽。今まで読んだ山崎豊子作品で一番かも。