ゼロの焦点 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109169

感想・レビュー・書評

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  • 最近の傾向の、新作映画の公開前のうっとーしいほどの宣伝活動の洗脳により、読んでみました。

    小説として、たいへんに読み応えのある作品でした。
    さすが清張さん、でありまする。

    ありまする、のですが。
    読み終えてから、沸々と湧き上がるのが、なんつー理不尽な時代だ、という憤慨でありました。

    女性に対して、のね。
    ぶっちゃけて言ってしまえば、殺される男たちは
    「殺されて当然じゃ、ボケ」

    いったいにこの時代周辺の男どもは、女をなんだとおもっちょるのだ。
    ナメくさるのもたいがいにしろ、このクサレ外道どもが。
    というような罵詈讒謗がアタマんなかを満たしてくるほどの理不尽さですよ。
    なのにヒロイン・禎子は少しも怒らない。
    怒らないで健気に失踪した夫(ワタシならたった7日の新婚生活の相手を夫とは呼びたない)を探し続けるんだから、あり得ないほどの従順さと忍耐強さですよ。
    いくらそういう時代だったから、って……。
    アンタの自我はどこにあるのさーーーッ!
    と、禎子にもちょっと物申したい感はありましたが、それが“時代の価値観”というものなのでありましょうな。
    つくづく。
    辛い時代だなあ、とおもったことです。

    果たして清張さんは、我々女性を気の毒におもってこの話を書いてくれたのでありましょうか。
    私としてはそれを望みたいところなのですが、わからない部分

  • 戦後の日本の時代背景を抑えておくと、より理解が深まる作品かなと感じました。
    過去のステータスを知られてしまう事が、いかに地位に関わるのか、暗い過去が何とも言えない気持ちにさせられました。
    半世紀も前の作品なのに飽きがこず、スラスラ読めたし、北陸の寒々しい表現が読んでるこっちも寒くなる感じがしました。

  •  古い小説だが、読みやすく、テンポが良い訳でもないのに飽きが来ない。面白く読んだ小説だった。
     三分の一ほど読み進めた辺りから、ぐんぐんと謎が深まっていき、興味を唆られた。そこでようやく、ミステリとしての色が濃厚に醸し出され始めたように思う。
     一点、推測を事実のように断定調で書くのは、釈然とせず、ミステリとしては、真実へ辿り着くてがかりが、多分に想像に負っている点が、個人的には好みではない。
     上記した瑕疵とは異なるが、推理小説としてはやや不完全であるという点、また解決編とそれ以前とを明白に切り分けるのが難しい小説であるという点は、解説と意見を同じくする。この解説については、本編のあとにつけるにしては、やや手厳しく、書評的性格が強いように思えた。

  • 凄い作品だったな。古い本ではあるが読みやすくとても面白かった。

    舞台が金沢と能登半島とはかなりタイムリーに感じ、少し驚いた。まあそれは時事ネタの部分もあるが、たまたま手にした本が、まさか大地震の被災地が舞台だとはとても思わなかった。北陸の侘しさもあるだろうが、良い街なのだろう。復興して、元気な姿に戻れるよう自分も何かできることはしよう。そしていつか旅行にいこう。

    さて、話をゼロの焦点の感想に戻そう。
    ミステリーなので、細かく感想を書くとネタバレになってしまうが、最初から最後までとてもハラハラして読んでいた。そして、人が次々と死ぬことにも驚いた。ミステリーとはいえ、こんな人が死ぬのかと言うほど死んだ。それも大事な人が次々と。主人公の禎子はたまったものではないだろうな。

    それにしても人間は他人のゴシップが好きだなと改めて実感する。ペラペラと人の秘密や裏話を次々に教えてくれる。まあ田舎では娯楽も少ないから、ゴシップ的なところが一つの娯楽という部分もあったのかもしれないが…

    東野圭吾の白夜行とはまた違うが、どこか似た雰囲気を感じた。戦後のショックを引きずり、それでも逞しく生きる女性たち。本当に女性は凄いパワーを持っている。しかし、この当時は男尊女卑。そこに鬱憤が溜まっているのは当然の背景で、すぐ酒やタバコ、女に逃げる打たれ弱いのは男性、何があってもへこたれない打たれ強いのが女性というのは昔から変わらないな。

    不幸から這い上がり、それを脅かすものは排除する。犯人はまるで、ジョジョの吉良吉影のようだった。ミステリー好きなら誰が読んでも満足できる作品だと思う。とても面白かった。

  • 2024年1発目の作品
    終盤、「長いな…」と思いつつも、素晴らしい作品でした

  • 宮部みゆきの「火車」への影響を感じる。時代背景などをありありと感じる描写もよかった。でもそのウイスキーは飲んじゃいかんでしょ。

  • 書く力に恵まれた方の本を読むと、その場所の情景が目に浮かぶよう。そんなことを感じさせる本。

  • 『ゼロの焦点』
    2023年3月15日読了

    はじめて読んだ松本清張。はまった。すごく面白かった。
    社会派で暗く重いテーマを扱うイメージが多く、少し嫌煙していた節があった。
    しかし今は、「もっと早く読んでおけば…」という気持ちも大きい。

    文章運びが巧妙で「鵜原憲一はどうなったのか?」「一体あの女は誰なのか?」という本書の最大の問題が、最後になるまで全くわからなかった。
    それだけに、まさしく点と点がつながる瞬間の驚き、そして納得感がすごいのだ。

    また、日本の復興とともに忘れ去られてしまったであろう、身を売るしかなかった女たちの苦悩を、日本にも影の歴史があったという事実を、このような小説の中にとどめる意義は大きいように思う。

    推理小説としても、日本社会を描いた作品としても、最高に面白い一冊でした。

  • 再読

  • 松本清張の作品を読むのは三作目なのですが、現代の人間が資料を元に書くのではない、その時代を生きた人間の描写する、その時代の息遣いと空気感にいつも感動を覚えます。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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