白い人・黄色い人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123011

感想・レビュー・書評

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  • 白い人 の方が共感というか、理解しやすかった。
    おかしいな。私は黄色い人

  • 短編ながら鮮やかな愛憎。初期作品。やや硬質。とくに白い人はとても良い愛憎。

  • 『白い人』の主人公は、ドイツ人の父とフランス人の母を持つ青年。容姿の醜いこの青年は、幼い頃から母のカトリックの影響を受けて禁欲的に育てられるが、実際は女中であるイボンヌの真っ白の足から情欲に目覚め、また神への信仰をも心の内では拒絶する。そんな彼とは対照的に描かれるのが、信仰深いジャック、そしてマリー・テレーズ。独仏間での戦争のさなか、主人公の青年はドイツ側に立ち、彼ら二人への拷問に手を貸すことになる。
    一方『黄色い人』の舞台は関西・阪神間に位置する仁川。カトリックの洗礼を受けた千葉という青年は次のように言う。「p91黄色人のぼくには、〜あなたたちのような罪の意識や虚無などのような深刻なもの、大袈裟なものは全くないのです。あるのは、疲れだけ、ふかい疲れだけ。ぼくの黄ばんだ肌の色のように濁り、湿り、おもく沈んだ疲労だけなのです」と。日本人女性との不倫により破門されるデュランという西洋人、彼を援助するブロウ神父をも裏切るこのデュランという男は、自分の犯した罪を、西洋人に特有の罪の意識から自問する。一方、婚約した男性のいる女性と関係を持つという、デュランと同じような"罪"を犯す千葉はというと、激しい罪の意識に苛まれることもなく、あるのは僅かな胸の痛みだけだ。
    宗教は、果たして人間の残虐な本質を、抑止する力となり得るのだろうか。キリストの信者は自己陶酔者に過ぎないのではないか。一方の日本人には、心の中にキリスト教の説く原罪を持っていない。それは果たして、人間の残虐性を加速する結果へと繋がり得るのだろうか…。
    解説にもあるが、確かにとにかくいろんなテーマが詰め込まれている感じがする。キリストという慣れない、というか知識不足な分野の本だったので自分の理解が不十分なのが残念。

  • 私ごとき偉そうに語れる分際ではないが、解説の、まだ未熟な部分があるというところに納得した。
    こういう未熟さは嫌いじゃない。

  • (1995.09.17読了)(1979.11.18購入)
    内容紹介 amazon
    フランス人でありながらナチのゲシュタポの手先となった主人公は、ある日、旧友が同僚から拷問を受けているのを目にする。神のため、苦痛に耐える友。その姿を見て主人公は悪魔的、嗜虐的な行動を取り、己の醜態に酔いしれる(「白い人」)。神父を官憲に売り「キリスト」を試す若きクリスチャン(「黄色い人」)。人間の悪魔性とは何か。神は誰を、何を救いたもうのか。芥川賞受賞。

    ☆遠藤周作さんの本(既読)
    「沈黙」遠藤周作著、新潮社、1966.03.30
    「死海のほとり」遠藤周作著、新潮社、1973.06.25
    「イエスの生涯」遠藤周作著、新潮社、1973.10.15
    「キリストの誕生」遠藤周作著、 新潮社、1978.09.25
    「スキャンダル」遠藤周作著、新潮社、1986.03.05

  • 「白い人」「黄色い人」。
    どちらもずっしりと心に残りました。

  • 白色人と黄色人の考え方の違いをキリストを軸に描き分けられた作品。あまり馴染みのないテーマなので、読むことに疲れたが最後の解説で気持ちよく読み終われた。普段無意識の底にある感情を意識させられた気がします。神と信仰、罪、告解。本当の意味では分からないということが、黄色人ということか。と思い、幸せだと感じるか不幸せと感じるかは、いろんな意見が出るのではないかと思います。たくさんの意見を聞きたいなぁ。良心の呵責、悪夢、そんなものを考え直されました。

  • 白い人これすごく良い!と思った、が本の評論でデビュー作でまだ未熟、テーマも多くを取り上げすぎていると書いてあった。主なテーマは神の不在か神への信仰、挑戦だと感じたが他にも考えればあるだろう。しかし100ページもなしにこれを書いた。恐ろしい才能だ。

  • 「白い人」:読んでしばらくしても忌わしく甘美なイメージがシーンごとにフラッシュバックするような、印象的な一節がいくつもあります。高校生の時に初めて読み、ゲシュタポという言葉を知りました。

  • 作中に、ほとんど同じ記述が2回出てくる。以下の2つである。

    (p45) 悲しみというよりは疲労に、非常に深い疲労にちがいなかった。埋めるべき空間を埋めたあと、もはや、なにを為していいのかわからない。

    (p83) かなしみというより、非常にふかい疲れに似ていた。埋めるべき空間に埋めた後、もはや、なにをしてよいのか、私にはわからなかった。

    前者はマリー・テレーズを屈服させたあと、後者はジャックが舌をかんで死んだあとの主人公の心境であり、この虚しさが、サディスティックな無神論者である主人公の敗北を示している。
    しかし、現代を生きる平凡な日本人である私は、ここから何を学ぶことができるのだろう? 実のところ、このような虚しさは物心ついた頃からの日常であり、それは当たり前のこと、世界とはそういうものなのだ。その救いようのないニヒリスティックな事態がどれだけ理不尽であろうと、現実の私にとって、今から基督者として生きるという解はない。では、どうすればこの虚しさから逃れられるのか? それは個々人の実存の問題であり、今後の読書人生で、それに答えてくれる運命の一冊に巡り会うこともあるのかもしれない。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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