白い人・黄色い人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 145
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123011

感想・レビュー・書評

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  • 他の作品も読んでみたい。

    私は、幸いにも戦争を身近に感じたことがない。だから、戦時中の辛さや過酷さは、主に映画による影響が強いんだけど、この本を読んで、その当時の鬱屈した疲労感を感じた。全編において、処女の描写、肌の色に対する偏見を。また特に、「黄色い人」では、日本人の精神風土(無神論)に対する悲惨さと醜悪さを感じた。神を信じることに対し、偏見なく考えられるという点において、面白い本だと思う。

  • 読んでいるときは、真剣に背筋を伸ばすように真面目な気持ちで読んだはずなのに、今となっては何も頭に残ってない。だから成長しないんだなぁ。

  • 「白い人」は胸が痛くなるほど残酷なストーリー。祖国を裏切ってゲシュタポに入隊した男が拷問によって神学校時代の優等生に復讐を遂げる。キリスト教信者の英雄主義・自己陶酔を突きつつも神を求める必然性にも触れている、5つ星!

    「黄色い人」は唯一神を持たないが故に罪悪感に無関心な日本人を描いたもの。不倫で教会を追放された破戒僧は悔い改めでなく、そうした日本人の宗教観に身を委ねることによって罪から逃れようとする。遠藤周作は戦時中の鬱屈した空気を描くのがホントに上手い!

  •  『海と毒薬』、『沈黙』、『イエスの生涯』に続いて『白い人・黄色い人』を読んだ。遠藤周作の初期の作品ということらしい。
     簡単に言えば、『白い人』はSMのSの側の話で、『黄色い人』は、『沈黙』と主題が同じ(日本人にキリスト教の神は理解できるか)作品だった。既に『海と毒薬』や『沈黙』を読んでいるので、それほど強い読後感は覚えなかった。
     『白い人』はナチのフランス人拷問に加わる斜視のフランス人、という設定は面白いと思った。主人公は『沈黙』のイノウエのような感じだろうか。
     『黄色い人』は、阪急とか阪神とか、宝塚とか川西とか魚崎とか、実家が尼崎のおれにはなんとなく馴染みのある地名が出てきたのが読みやすさを高めていたが、他の作品を読んでいた後では、特に深い味わいもあまり感じなかった。(11/11/23)

  • 大好きな遠藤周作先生の本。
    キリスト教というテーマはかわらずですが、初期の作品と言うことでかなり荒削りな感じがした。言いたいことがたくさんあって、詰め込まれてる小説だなと思った。
    「沈黙」や「海と毒薬」にも通じるところとして、日本人が神を持っていないということは何なのか?という問題が出てくる「黄色い人」の方がより印象的でした。

  • 昔読んだ記憶が。

    日本人にとって神ってなんなんだろね、という訴えが響く。
    いつも神を裏切る人と、殉じる人がでてくるけど、クリスチャンでありながらそれをひいたところから見る遠藤氏自身はどうだったのだろうか。

  • 結構きつい。
    白い人、黄色い人。
    白い人はフランス人の話で黄色い人は日本人の話。
    変な話。
    昔の人って、皆こんな感じなのかと思う。
    暗い感じ・・・。

  • 遠藤周作が問いかける神が存在することによる
    白人世界のありようと神が存在しない日本という国の
    有り様を描いた作品です。

    作者のいうことは分かるけど、キリスト教の悩みって
    逆に人生の不幸なときに神がなぜ自分を見捨てたか?
    に関する回答が不在なのでそれも寂しいですよね。

    遠藤周作の本では、「イエスの誕生」や「沈黙」
    「反逆」のほうがおもしろいです。

  • 遠藤周作の創作の原点である2作品。どちらにおいても「イエスとユダ」の関係が重要なファクターとなっているのが興味深い。これが後に『イエスの生涯』のユダ像につながっていくのだろうか。
    遠藤周作のユダ像を知る上ではすごく面白かったし、そもそも遠藤周作の最初期の興味の中で「ユダ」が大きなウエイトを占めているとわかったのは収穫だった。
    でも、『黄色い人』の方は、解説の山本さんが言っているように、あまりに図式的すぎると思った。ブロウはあまりにもイエスそのものすぎるし、デュランはあまりにもユダそのものすぎる。あまりにもこの2人が聖書のテンプレートにはまりすぎている。解釈の必要もないほどに。
    まだ『白い人』の方が、聖書の写しそのままではない、複雑な人間の姿が描かれている気がする。

  • 汎神論的な日本人にとってのキリスト教とは、という作者のテーマを汲み取ることができた。「白い人」「黄色い人」どちらかだけでも短時間で読めます。前者の方は、正義と悪という概念を用いて人物の対立などの構図がわかりやすい。後者は、フランス人(元)牧師は「無感動」な日本人の「幸せ」に気付く。どちらも戦争のさなかが舞台であり、性(セックス)がキリスト教的規範と対立する概念として存在する。

    僕はキリスト教という世界観と日本人という世界観を知りたく、この本を読み始めたのだが、それについて感じたことが半分、小説としての面白さ半分で、専門書ではないということは前提にあったので、とても満足している。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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