項羽と劉邦(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152332

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  • 項羽と劉邦、追い詰められているのは果たしてどちらか。どこでどう運命が変転してしまったのか…

  • EVERNOTE登録済

  • 2015/12/27

  • ――漢王は能なく智なく勇なく、しかも人間が粗㒒すぎて雅馴でない。まことに不徳の人である。といってるのを劉邦は耳にしたことがある。
    「陛下は、御自分を空虚だと思っておられます。際限もなく空虚だとおもっておられるところに、智者も勇者も入ることができます。そのあたりのつまらぬ智者よりも御自分は不智だと思っておられるし、そのあたりの力自慢程度の男よりも御自分は不勇だと思っておられるために、小智、小勇の者までが陛下の空虚のなかで気楽に呼吸をすることができます。それを徳というのです」

     義とは、骨肉の情や、人間としての自然の情(たとえば命が惜しいなど)を越えて倫理的にそうあらねばならぬことをさす。
    義は戦国期にできあがった倫理ではないかと思われる。のちに儒教にとり入れられて内容が複雑になり、また反面、義という文字から儀礼の儀という文字が作られてゆくように儒教では多分に形骸化されて礼儀作法とか、人と人とのつきあいの仕方といったものへ衰弱してしまう。
     が、この時代は戦国期からほどもない時代だけに、この流行の精神は初期のたけだけしさや壮烈さをうしなっていなかった。
    義という文字は、解字からいえば羊と我とを複合させて作られたとされる。羊はヒツジから転じて美しいという意味を持つ。羊・我は「我を美しくする」ということであろう。古義では「人が美しく舞う姿」をさしたともいわれるが、要するに人情という我を殺して倫理的な美を遂げる――命がけのかっこうよさ――ということを言い、この秦末の乱世では、庶民のはしばしまでこの言葉を口にした。

     かつて若き日に「沛の町の飲屋で」「町中の劉邦好きの男や与太者たち」が自然に集まり、「彼らにすれば、劉邦に見られているというだけで楽しく、酒の座が充実し、くだらない話にも熱中でき、なにかの用があって劉邦がどこかへ行ってしまったりすると急に店が冷え、ひとびとも面白くなくなり、散ってしまう」のであったが、そのような場における劉邦の茫漠たる個性に、強い複雑な印象を受けぬものがあろうか。あえて一息に要約するなら『項羽と劉邦』は、人望とはなにかをめぐる明晰な考察の集大成なのである。

  • 人生 何のために

  • 項羽の死に様には信念があった。

  • 負け戦がつづく劉邦は、配下の助けを借りて何度も窮地を脱出する。やがて広武山にて項羽軍と対峙することになる。

    読了後、2012年に中国で制作されたTVドラマ『項羽と劉邦 King's War』(主演:チェン・ダオミン、ピーター・ホー)を観た。文章だけではわかりにくい当時の様子が視覚的に補足された。

  • 上、中巻は一度に購入できて、一気読みした。
    下巻だけ手に入らなくて、やっとこのたび読めた。
    札幌から新千歳、そしてセントレアに着くまでに読み終えた。

    項羽の滅亡でこの小説は終わる。
    でも、分量としては項羽が劣勢に向かうのは、この間の後半。
    滅亡への道行は、おそろしくあっけなかった。
    まずそれが一番印象に残った。
    もしかすると、司馬さんは項羽のことが好きなのかも、とさえ思った。

    この小説の魅力は、それぞれの人間像が鮮明なこと。
    酃食其とか、韓信の末路には、その人柄と合わせて読むと何とも言えない気持ちになってしまう。
    張良や䔥何といった人物は、戦いに明け暮れる英雄たちの間においてみると、何かすがすがしい感じがする。

  • 11/27

  • 古代中国の話なのに、現代に生きる日本人に通じるところがたくさんあった。
    どちらが勝つかはもうわかっているのに、引き込まれてドキドキわくわくした。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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