勝海舟(一) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101153056

感想・レビュー・書評

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  • 「龍馬伝」が始まったから、というわけではないけれど、子母沢寛の「勝海舟」全六巻を読み始めた。

    海舟が歴史小説の中で取り上げられるのが少ないのは、同じ幕末の人物に比べて悲劇的な面が余り無いせいか、ドラマとして読者に訴えるものが感じられないせいか。咸臨丸での太平洋横断や江戸城無血開城だけでは駄目なようである。むしろ彼が主人公として描かれる場合は、周囲に集まってくる人間との交流に焦点が当てられる。福澤諭吉、坂本龍馬、西郷隆盛、徳川慶喜。彼らと対等な立場でやりあった姿が描かれることがほとんどだ。

    しかし子母沢が描く海舟は、活発に動き回る。特にこの第一巻では、青春時の彼が生き生きと描かれていて、読み進めて行くうちにいつの間にか海舟のペースに巻き込まれて行く。旧幕臣、彰義隊の生き残りを祖父に持つ子母沢の書き綴っていく江戸弁が、落語を聴き慣れている目には小気味いい。歴史小説を読んでいるというより、ひとりの江戸っ子、ひとりの若者の冒険談を読んでいる感じがする。

    この第一巻目では、海舟が蘭学者として名を上げ、長崎海軍伝習所を軌道に乗らせるまで。父小吉や、文武の師、弟子との別れもあり、男として大きくなっていく姿が描かれて行く。二巻目はいよいよ咸臨丸で太平洋に向かう。

  • 2018年3月10日読了。
    昭和初期発表の歴史小説。幕府側の立役者の人物から見た幕末維新を読む。登場人物やその周辺の人々の個性溢れる姿や情景描写も奥行きがある。べらんめいの父小吉の江戸弁には少々戸惑ったが、読み進めてくると味わいがあった。海音寺潮五郎、子母沢寛、また違ったファンになりそうだ。

  • <1巻〜6巻までまとめてのレビュー>
    やはり子母沢寛は面白い!!

    子母沢の小説は全部鵜のみにしてはいけないとは言われているけれども、それでも子母沢が祖父から聞いたという、この時代の雰囲気、江戸っ子気質、ユーモアなどが巧みに表現され、確かにそういう時代があったのだという実感が得られる。江戸時代という時代そのものが伝わってくる、これが子母沢小説の醍醐味である。

    勝麟太郎の性格や考え方が分かり、そしてその勝を慕う人達とのやりとりを読むうちに、まるでその仲間に入ったかのような、どんどん登場人物達と親しくなっていくような感覚に陥り、読み進めていけばいくほど楽しくなる。
    杉さんもは本当に家族のような気になってしまった。
    全くもって、読んでいるのが楽しい本でした。

  • 1巻~4巻まで
    勝麟太郎の父、小吉の話から始まる。
    この父の性格に輪をかけてそっくり受け継いでいる。
    武と文を兼ね備えてこの日本国を愛する。
    大政奉還、坂本竜馬の暗殺、そして陸軍総裁に抜擢される


    5巻 江戸開城
    勝と西郷隆盛の手引きによりスムーズに江戸城の開城へと進んでいき、徳川慶喜の身の安全も確保された。
     開城にあたって大奥の篤姫の最後の粘りがあった様子が想像でき、これで300年近く続いた徳川家の時代の幕引きとなり、徳川を支えてきた人達のやり切れなさが伝わってきた感じである。

    第6巻 明治新政
     徳川家が江戸城を引きはらい、駿府へと幕臣達と移っていくのだが、大勢の人たちが一気に移り住む大変さがあった。

    全6巻読破してみて、勝麟太郎の魅力がよく伝わり、その人間味に惹かれ、いろいろな人物との関わりあいがうまく表現されている。
     幕末のいろいろな思想があるなかで日本国にとって一番的確な道を進んでいった人ではないだろうか。

  • おとこ鷹を読み終わったので、今度は勝海舟を読んでみました。
    6巻まであって、1巻が長い!650ページくらいあります。

    勝海舟のイメージはよく歴史で出てくる「江戸城無血開城」ですが、その勝は実際どんな人間なのか、どういう背景をもっていて、どういう考え方をしていたのか。その背景、考え方、魅力ある人間性などが、エピソード主体に展開していきます。

    父親勝小吉と同様に江戸っ子全開の勝海舟なんて、知らなかったなぁ。憎まれ口を常にたたくも人から愛され、人をよく見抜き、当時の誰より世界というものを意識した。その見識は、若いころの勉学にあったものと思います。とにかく貪欲に学んでいく。本屋で立ち読みして、読みつくして本屋の主人に仕入れる本をリクエストしたり、借りた本を2冊書き写して、1冊売ったり。手に入らない本を買った人のところにいって、寝てる間だけその本を借りに行ったり。必死というより、それが自然なのが勝海舟のすごいところでしょうか。

    今の自分にもあてはめて、もっと貪欲に自ら動いていく大切さを学んだ気がします。

  • 第一巻は勝海舟の少年時代が中心。勝海舟というよりも、父の小吉が主人公かもしれない。
    人情味溢れる江戸っ子の父小吉があってこそ麟太郎がある。
    小吉が(仲間である)隼太より父、子の病を治すために資金援助の依頼を受けた際に、自宅を売ってまで資金を工面をする件はとくに胸が熱くなる。

    江戸っ子の竹を割ったような性格、これは瞬時に決断する能力でもあったのか。

    往年の海舟の基礎が少年時の蘭学の猛勉強、剣術の猛練習により築かれていることを改めて認識。

    以下引用~
    ・心に得て手に応ず、剣そのものが他人を撃つのではない。即ち心が能く人を撃つのだという事である。

    ・伝習生の中では、どうも江戸人が一体に成績が良くない。各藩の選抜生に比べて、学問が落ちるばかりか丸山の廓などへ遊びに行って、次の朝の授業に遅れたり、仮病を使って休んだりも、殆ど江戸人に定まっている。

    以上

  • 私の好きな偉人についての本。父子鷹とともに、貧乏御家人の日常が精巧な筆致で描かれている。

  • 10.6.9

  • 貧乏御家人で江戸っ子の勝海舟の若き姿が目に浮かぶような小説。勝海舟や幕末を描いた小説でこれを越えるものはないような気がする。

  • 全6巻。

    意外に無い勝海舟の長編。
    文章は割と独特で、慣れるのにちょっとかかります。
    読みにくいけど江戸っ子最高。
    べらんめえ。

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