- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181370
作品紹介・あらすじ
ヴェネツィア共和国はトルコ帝国との争いで、交易拠点を次々に失い始める。海外交易市場の主導権もイギリス、オランダに譲り、衰退の兆しは誰の目にも明らかだった。そしてフランス革命に端を発したヨーロッパ世界の動乱。ナポレオン率いるフランス軍の圧力を前にして、かつて「地中海の女王」とさえ呼ばれたヴェネツィア共和国の命運は尽きつつあった…。歴史大作の完結編。
感想・レビュー・書評
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遂に読み終えた。
ナポレオンのヴェネツィア共和国に対する恫喝の仕方は、圧倒的な軍事的優位を確立した者ならではの嫌らしさ。千年続いたものが終わる時というのはこんなものなか。ドラマティックといえばそうなのかもしれない。
日本はイタリア化(世界一からじわじわ後退、いつのまにか1.5流国になっているが、安定的ではある状態)を目指すべきだ、という声も聞かれるが、このヴェネツィアの長い歴史を考えると悪くない気がしてきた。
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ヴェネツィアの最期
・前巻から指摘されている貧富の差の固定が、制度劣化、精神堕落などではなく、産業構造の変化等に起因するところに、盛者必衰の不可避性がある。
・政治、経済が衰退し、文化のみが栄える頃に得られる賞賛 -
一千年の栄華を誇った美しい都の静かな終焉。
西欧諸国、オスマントルコ、教皇の間でバランスを取り続けて共和制を貫いたヴェネツィアもナポレオンの前にあっけなく平伏す姿に『盛者必衰』の言葉しか思い浮かべられませんでした。
国力の衰退は人の心も消極的にさせる。
的確な判断と行動力で国を導いてきた元首も十人委員会も今や受動的な中立路線を繰り返し確認するばかり。
トップがこれでは元老院も言わずもがな。
諜報能力にかけては追随を許さなかった彼の国が18世紀には他国並みになってしまったのは国力の衰えと密接に関係しているように思えてなりません。
国力の衰退、人々の考え方の変化、共和国フランスでの情報収集の失態(パリ総裁政府でのバラースへの収賄の失敗は以前のヴェネツィアなら有り得ないと思うのですが…)、ナポレオンと言う強い圧力の前に内部から崩壊していったとしか思えませんでした。 -
「ローマ人の物語」の原型ともいえる作品。
ヴェネチアは国を代表するような英雄はいないので、人物に焦点を当てるのではなくて、国家システムに焦点を当てた形になっている。
全6巻と長いので、通して読むと少ししんどいかも。 -
世界史について知識が根本的に不足している身からは
ヴェネツィアの特異性すなわち中世都市国家というもの自体が
なんとなくでも想像つかないのだが
それに対するる入門読み物として
面白くはあったもののあまり適当ではなかった
本国最大十数万人の数で千年に渡りいられたというのは
その位置と周囲の状況がそれを許したからでないと思うが
もちろんそれを作り出した力というものもあっただろう
その歴史を代表する英雄をもたずして
それを成し遂げたことこそが
ヴェネチィア文化の特異性であるかもしれない -
ヴェネツィアの歴史ここに完結。
ナポレオンによって共和制が廃された瞬間にヴェネツィアの歴史は閉じたのだった。
1000年以上もの間、小さな国土でアドリア海を支配し続けたヴェネツィア。
台頭する列強には勝てなかったようだ。
建国当時から蛮族の脅威にさらされ、次はオスマン帝国、そして最後は同じキリスト教側のフランスに滅ぼされたという哀愁漂う終わり方。
本土に資源がなかったからこそ、知恵を使い弱者ゆえの戦い方の見本を見た気がします。
どこかの国も見習いたいものです。 -
トルコは何かっていうと難癖つけてヴェネツィアに喧嘩を売ってきます。
クレタ攻防戦で降伏したフランチェスコ・モロシーニがその後元首としてトルコを破り、ヴェネツィアではありえなかったヒーローとして扱われたのは興味深いです。
トルコとはそんな関係ですが、ドイツイギリスフランスあたりのエリート観光客にはヴェネツィアの良さがよくわかります。
聖地巡礼旅行の時とは違って、彼らはヴェネツィアに訪れます。
ヴェネツィアには5月~9月に行ってブルキエッロに乗りたいです。
そして最後にナポレオンに滅ぼされます。「ナポレオンの恋人たち」を読んだときマリーヴァレフスカの気持ちになってナポレオンが好きになってしまったけど、これ読んですごく嫌な奴と思いました。
でもここの部分はドラマを見ているみたいで臨場感たっぷりで面白かったです。 -
ヴェネツィア共和国の最後、政治家の課題先送りや時間稼ぎ、…いまの日本と重なった。
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中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかったから、か。
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非武装中立国がヤバい奴に目をつけられた時のグダグダ感が見どころ。あとローマ人と違い個人が目立たない体制。組織としての一つの理想の完成形だと感じる。
結論、対イスラムだったら、コンスタンティノープルの陥落から続く三部作のほうが面白い。政治や体制だったらローマ人のほうが面白い。 -
一言で国が滅亡するといっても実際にどんな具合になっていくのかわかっていなかったが、外交上手のはずのヴェネツィアがナポレオンの動きに機敏に対応できず自滅していく様など具体的な事情がよくわかり、非常におもしろかった。これは著者も言っている「寄り道」で、こういうところが著者の真骨頂だ。(それにしても、当時からきちんと宣戦布告を手紙で行っていたとは!ヴェネツィアの死は日本なら江戸時代も後半なので太平の世の中だったが、たとえば家康はいちいち宣戦布告してから大阪城を攻めたのだろうか?そうではない気がする。)ナポレオンについてもフランスの歴史として学校でさわりだけ習ったのに比べ、ジョセフィーヌにぞっこんだったけれどヴェネツィアが懐柔しようとしても妻の言いなりになるわけではなかったなど、優れた軍人の様子がかなり詳しく述べられている。
この巻の巻末に掲載されていた年表が各巻にもあったら、もっと読みやすかったと思う。 -
3.8くらいかな。「海の都〜」では2巻が1番面白かったが、6巻全体として★5つ。絶対全巻一気読みすべき。
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ベネツィア旅行前に読み終わらかったので復習になってしまった。
やはり出かける前に読了しておくべきだった。
旅行は予習しておいた方が楽しい。 -
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20171007
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盛者必衰の理を感じさせる。
ヴェネチアも、滅びるべくして滅んだか。 -
最終章。次第にトルコとの戦いの中で交易拠点を失ったベネチアは衰退。そして18世紀末フランス革命にが起きヨーロッパの動乱。ナポレオンを前に栄華を誇ったベネチア共和国は終焉を迎える。徐々に弱体していくなかで過去起きなかったことが起きる。例えば戦いを勝ち抜き英雄視された現職元首の銅像の建立。しかしながら、これは一人の人間に権力の集中を避けようとする共和政に矛盾するものである。個人的には一喜一憂する国の状況が情緒不安定な一個人の姿に似ているように感じる。とまぁ・・・6巻読んだが、ベネチアに行く前にこの本を読まなかったことを後悔しています。
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共和国の終わり方がすごい。
まさか投票で決まるとは。でも追い詰められていたのね。
千年の都もナポレオンには敵わなかった。
絶対王政の崩壊が従来の政体に影響を与えたのでしょう。
積み上げたものは何かのきっかけであっという間に崩壊する。
塩野作品を読むとつくづく思い知らされるような気がする。 -
【本の内容】
<1>
ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、一千年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国。
外交と貿易、そして軍事力を巧みに駆使し、徹底して共同体の利益を追求した稀有なるリアリスト集団はいかにして誕生したのか。
ヴェネツィア共和国の壮大な興亡史が今、幕を開ける。
「ルネサンス著作集」中の大作、待望の文庫化、全六冊。
<2>
ヴェネツィア共和国は十字軍の熱狂に乗じて東地中海に定期航路を確立し、貿易国としての地歩固めに成功。
異教徒との通商を禁じるローマ法王を出し抜き、独自の経済技術や情報網を駆使して、東方との交易市場に強烈な存在感を示した。
宗教の排除と政治のプロの育成に重点をおき、強力な統治能力を発揮した内政にも裏打ちされた「ヴェネツィア株式会社」の真髄を描き出す。
<3>
東方との通商に乗り出し、地中海の制海権を握ろうとしたのは、ヴェネツィアだけではなかった。
アマルフィやピサといった海洋都市国家が次々と現れ、なかでも最強のライヴァル、ジェノヴァとの争いは苛烈を極めた。
ヴェネツィア共和国は、個人主義的で天才型のジェノヴァの船乗りたちといかにして戦ったのか。
群雄割拠の時代を生き抜くヴェネツィア人の苦闘の物語。
<4>
1453年、トルコ帝国がコンスタンティノープルを攻め落とし、ビザンチン帝国が滅亡。
東地中海の勢力図は一変した。
東方での貿易を最大の糧とするヴェネツィアはこの状況にどう対応したのか。
強大な軍事力を誇り、さらに西へと勢力を広げようとするトルコ帝国との息を呑む攻防、そしてある官吏の記録をもとに、ヴェネツィアの新興ビジネスである観光事業、聖地巡礼旅行を活写する。
<5>
十五世紀末、ポルトガルがインドへの新航路を発見という、中世の一大ニュースがヨーロッパ中を駆け巡る。
トルコ帝国との攻防も続く中、スペインに代表される君主制国家も台頭。
ヴェネツィアは統治能力の向上による対抗を図るも、「持たぬ者の悲哀」を味わうことになる。
地中海から大西洋へ。
海洋都市国家から領土型封建国家へ。
新時代の幕開けはすぐそこまで迫っていた。
<6>
ヴェネツィア共和国はトルコ帝国との争いで、交易拠点を次々に失い始める。
海外交易市場の主導権もイギリス、オランダに譲り、衰退の兆しは誰の目にも明らかだった。
そしてフランス革命に端を発したヨーロッパ世界の動乱。
ナポレオン率いるフランス軍の圧力を前にして、かつて「地中海の女王」とさえ呼ばれたヴェネツィア共和国の命運は尽きつつあった…。
歴史大作の完結編。
[ 目次 ]
<1>
第1話 ヴェネツィア誕生(蛮族から逃れて;迎え撃つ;聖マルコ;海の上の都;運河;地盤づくり;広場;井戸;国づくり)
第2話 海へ!(海賊退治;海の高速道路;海との結婚式;交易商品;ヴェネツィアの船;帆船;ガレー船;東方への進出)
第3話 第四次十字軍(エンリコ・ダンドロ;契約;ヴェネツィアへ;コンスタンティノープル;コンスタンティノープル攻城戦;落城;ラテン帝国;ヴェネツィアが得た“リターン”)
<2>
第4話 ヴェニスの商人(交易商人(その一)
資金の集め方
交易市場
マルコ・ポーロだけではない
定期航路の確立
海上法
羅針盤と航海図
船の変化
中世の“シティ”
交易商人(そのニ))
第5話 政治の技術(共和政維持の苦労;政教分離;政治改革;クィリーニ・ティエポロの乱;「十人委員会」;元首ファリエルの乱;政治と行政)
<3>
第6話 ライヴァル、ジェノヴァ(海の共和国;アマルフィ;ピサ;ジェノヴァ;ジェノヴァの商人;ジェノヴァ対ヴェネツィア;ヴェネツィアの二人の男;キオッジアの戦い)
第7話 ヴェネツィアの女
<4>
第8話 宿敵トルコ(トルコ帝国;「本土」;マホメッド二世;コンスタンティノープルへ;ビザンチン滅亡 ほか)
第9話 聖地巡礼パック旅行(まず、ヴェネツィアへ;ヴェネツィア滞在;旅立ち;イェルサレム;聖地巡礼 ほか)
<5>
第10話 大航海時代の挑戦(胡椒ショック;航海者たち;危機;巻き返し;通商と産業と ほか)
第11話 二大帝国の谷間で(都市国家から領土国家へ;統治能力の向上を期して;ヴェネツィアの光と影;元首グリッティ;その息子 ほか)
<6>
第12話 地中海最後の砦(法王庁に抗して;クレタ攻防戦)
第13話 ヴィヴァルディの世紀
第14話 ヴェネツィアの死
[ POP ]
帯に〈『ローマ人の物語』に並ぶ代表作〉とある。
著者が30年近く前に発表した、「地中海の女王」ヴェネツィア共和国の興亡史が、新潮文庫から全6巻で刊行された。
1981年度のサントリー学芸賞受賞作だ。
ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、ヴェネツィア共和国は1000年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けた。
それはいかに可能だったのか。
彼らの信条は、「はじめに、商売ありき」。
経済的に成り立つことを第一目的に、外交と軍事力を巧みに駆使して、強力な共同体を作り上げた。
「ヴェネツィア株式会社」ともいわれる経済大国の栄枯盛衰を、著者は膨大な資料を読み込み、時にはモーターボートを借り切って沼沢地帯の潟を体感した上で、生き生きと描き出した。
3巻には、渡辺靖氏、6巻には、池内恵氏が解説を寄せた。
気鋭の研究者による塩野史観評も、読み応えがある。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
塩野七生によるヴェネツィア史の最終巻。1000年続いたヴェネツィア共和国が、フランス革命軍(イタリア方面軍の司令官は、若き日のナポレオン)とオーストリアとの戦争に巻き込まれ、翻弄される様子を生き生き(?)と記述している。長らくハイレベルで機能していたヴェネツィアの政治体制も、この時期になるとさすがに制度疲労を起こしていて、政治家も自分の資産維持しか興味を持たなくなっており、目前の危機に対して(問題の先送り以外に)何も決められない国家に成り下がってしまったことが丁寧に説明されている。「栄枯盛衰」は世の常であるとばかりに、著者の大好きなヴェネツィアの歴史を最後までポジティブに書き切ろうとする意図が感じられ、読後感は意外と爽やかであった。
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「驕れる者もひさしからず」と平家は語るけれど、ヴェネツィアは塩野七生さんも言うように、けっして驕ったりはしなかった。それどころか、工夫に工夫を重ねて商品を安定供給し、もってコストダウンも図っていた。にも関わらず趨勢は別のほうに傾いていったようだ。それには産業構造の変化もある。ヴェネツィア自身も毛織物工業などにも積極的に投資し、また職工を集めて産業の育成に努めていた。あるいは、対岸の本土でも農業経営を進めていた。大島真寿美さんの描く『ピエタ』は、この時期のヴェネツィア―まさにヴィヴァルディの世紀―を描く。
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ヴェネツィア共和国の最期は、避けられぬ死を従容と迎えようとする老いた獅子のようでありました…
-
ヴェネチアを創り、公平で合理的な政治を行った人々の
知恵と勇気と愛国心に圧倒された。
作者の巧みな語り口で、
長編だと言う事を忘れて夢中になって
時間を忘れた。
この本を持ってヴェネチアに行きたいなぁ。 -
最後の惨めなまでの取り乱した様子がただただ悲しかったです。サンマルコ、万歳!