海馬 脳は疲れない (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101183145

作品紹介・あらすじ

脳と記憶に関する、目からウロコの集中対談。いわく、「『もの忘れは老化のせい』は間違い」「30歳を過ぎてから頭は爆発的によくなる」-。記憶を司る部位である「海馬」をめぐる脳科学者・池谷裕二のユニークな発想と実証を、縦横無尽に広げていく糸井重里の見事なアプローチ。脳に対する知的好奇心を満たしつつ、むしろオトナの読者に生きる力を与えてくれる、人間賛歌に満ちた科学書。

感想・レビュー・書評

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  • 海馬の本。
    池谷さんと糸井さんの対談で話が進む。
    読みやすい。
    脳科学にとても興味がある事に気がついた。
    脳についての理解が深まれば人生はもっと豊かになる気がする。
    かなり昔の本なので、最近の脳科学についての本もまた読んでみたい。

  • 記憶を司る脳の部位・海馬について、池谷裕二さんが語り、糸井重里さんが切り込む、脳がワクワクしてまさに頭が良くなってしまいそうな対談です。死ぬまで休まない脳。でも2%しか起きていない脳。都合の良いように解釈する脳。それ故に起こる驚きの錯覚…などなど、目からウロコ、年をとっても勇気を出せる、嬉しい知識がてんこ盛りです。

  • つねづね、頭がかたいよりは柔らかいほうが、幸せだよなあ、と思っていて、そして、「頭の柔らかい人」といえば子どもです。頭の柔らかさっていうのは脳科学的にはどういうことなのかなあと興味があり、手に取ってみました。
    対談形式ということもあり、結局あまりよくわからなかったのですが、「海馬」「扁桃体」「可塑性」という、いままでなじみのなかった言葉を知りました。「学ぶ」というのは、海馬が記憶するってことなのかな?だとしたら、新しいことをどんどん学べる、受け入れられるっていうのは、頭のやわらかさに通じるものがあるし、海馬が関わっていそうな気がしました。

  •      -2006.07.21記

    とにかく解りやすく、面白くてためにもなる。
    新進気鋭の脳科学者.池谷裕二と糸井重里による対談で、脳と記憶の最新の知見に触れながら、老若を問わず読む者を明るく元気にしてくれる本といえる。
    初版単行本は糸井重里の「ほぼ日ブックス」で2002年7月刊だが、新潮文庫版はその後の追加対談も増補して昨年6月に発刊、すでに20万部を突破しているというからベストセラーといっていい。
    池谷裕二物としては出版のあとさきが逆になったが「進化しすぎた脳-中高生と語る大脳生理学の最前線」朝日出版社をたしか刊行直後に読んでいるが、こちらはアメリカのハイスクールの生徒たちを相手にレクチャー形式でディスカッションを交えながら、柔軟性に富んだヒトの脳のメカニズムについて語って、先端の脳科学に触れ得たが、解りやすく面白く読める点では本書が数倍するのは、やはり聞き手.糸井重里の引き出し上手の所為だろう。

    あとは煩瑣を省みず長くなるけれど、本書よりアトランダムなピックアップ.メモ。――
    ◇脳がコンピュータと決定的に異なる点は、外界に反応しながらどんどん変容する自発性にある。すなわち脳はその「可塑性」において、経験、学習、成長、老化と、人の本質ともいえる変化の相を生きる。
    ◇脳の「可塑性」という事実は、個人のだれもが潜在的な進化の可能性を秘めているということであり、個を超えた「可塑性の普遍性」は科学的に実証されている。
    ◇好きか嫌いに反応する「偏桃体」と、情報の要不要の判断をする「海馬」とは隣り合っていてたえず情報交換している。
    好きなことならよく憶えていて、興味のあることなら上手くやってのけられるのも、脳機能の本性に適っている。
    ◇宗教の開祖はみんな喩え話上手なのは「結びつきの発明」に長じているから。
    ものや人との結びつきをたえず意識している力、コミュニケーション能力の高い人、一流といわれるような凄い人は、みんな自分流ではあってもお喋り上手で、「結びつきの発明」能力が豊か。
    ◇脳自体は30歳や40歳を超えたほうが、むしろ活発になり、独特なはたらきをするようになる。つながりを発見する能力が飛躍的に伸びる。
    すでに構築したネットワークをどんどん密にしていく時期であり、推理力も優れている。
    ネットワークを密に深めていくことはどんなに年齢を重ねても、どんどんできる。
    ◇脳は1000億もの神経細胞の集合体だが、その98%は休火山のごとく眠っている。
    神経細胞を互いにつなぐシナプスによる網状のさまざまなパターン、その関係性が一つ一つの情報であり、感情をつくり、思考を形成している。
    ◇「脳は疲れない、死ぬまで休まない」
    夢は記憶の再生であり、夢も無意識も、tryとerrorの繰り返しを果てしなく続けて、いろいろな組み合わせをしている。
    脳は刺激がないことに耐えられない。何の刺激もない部屋に二、三日放置されると、脳は幻覚や幻聴を生み出してしまう。
    脳は見たいものしか見ない、自分の都合のいいようにしか見ない。
    ◇「海馬は増える」
    脳はべき乗でよくなる。
    方法的記憶=経験メモリー同志の類似点を見出すと「つながりの発見」が起こって、急に爆発的に頭のはたらきがよくなっていく。
    ◇「脳の可塑性」
    人間の脳の中で最も可塑性に富んだところが海馬。
    海馬は記憶の製造工場、海馬の神経細胞は、ほぼ1000万個くらいだが、一つ一つの神経細胞が2~3万個の他の細胞とつねに連絡を取っている。
    ◇人は一度に7つのことしか憶えられない。Working-Memory=現在はたらいている記憶-短期記憶-の限界は7つ程度。
    記憶は海馬の中に貯えられのではない、情報の要.不要を判断して、他の部位に記憶を貯える。
    いろいろな情報は海馬ではじめて統合される。
    脳の神経細胞は死んで減っていく一方だが、海馬では細胞は次々と死んでもいくが、次々と生み出されてもいる。その需給バランス次第で、海馬は全体として膨らんでもいく。
    海馬と偏桃体の密接な関係は、好きなものは憶えやすいというように、偏桃体を刺激、活性化すると、海馬も活性化される関係にある。海馬は、偏桃体の感情を参照しながら情報を取捨選択していく。
    ◇ある一人の人間がその人である痕跡が残るように「入れ替えをしない構造」=固有性を脳はつくるのだが、唯一、海馬は入れ替わるという不思議。しかもその海馬が記憶をつかさどるのである。
    ◇海馬にとって最も刺激になるのが「空間の情報」であり、絶えず偶発性の中に身を置いている状態は、海馬にとって刺激的であり、神経細胞の死と生が間断なく繰り返される。
    ◇クリエイティブな作業は脳への挑戦――
    経験をすればするほど飛躍的に脳の回路が緊密に複雑になる。
    凡人と天才の差よりも、天才同志の差のほうがずっと大きい。
    刺激を求めてはいるが、同時に安定した見方をしたがるのが脳の習性である。創造的な作業は、画一的なほうへと流れやすい脳への絶えざる挑戦であり、脳の高度化への架け橋となる。
    ◇シナプスの可塑性-海馬における可塑性は、一つ一つの神経細胞に数万あるというシナプスにある。
    ものを憶えるWHATの暗記メモリーとものの方法を憶えるHOWの経験メモリーでは、HOWの経験メモリーが重要。
    眠っているあいだに考えが整理される。海馬は今まで見てきた記憶の断片を脳の中から引き出して夢をつくりあげる。
    朝起きて憶えていられる夢は1%もないといわれるが、夢というのは記憶の断片をでたらめに組み合わせていく作業であり、もし多くの夢を憶えていたら夢と現実の区別がつかなくなって、日常生活に危険が伴う。
    ◇睡眠は、きちんと整理整頓できた情報をしっかりと記憶しようという、取捨選択のプロセスなのだ。
    眠っているあいだに海馬が情報を整理することを「レミネセンス-追憶-」というが、この作業によって、突然、解らなかった問題が解けたり、なかなか弾けなかったピアノの曲が、次の日にすらすらできるようになったりする。
    ◇おなじ視覚情報が入ってくるにも拘わらず、認識するためのパターンの組合せが違う。だからそれぞれの人の見方に個性が出るわけだし、創造性が生れる。
    認識のための基本パターンは現在のところ500くらいだとされているが、それだけでも、その中から適当に10個組み合わせるだけでも、10の20乗くらいの膨大な組合せが成り立つ。
    ◇カート.ヴォネカットが言う「世界は酸化していく歴史である。あらゆるものは酸化していく。」
    酸化するプロセスは、「腐る」ということとほぼ同義であり、人間も酸化するプロセスで年を取るのではないか、と提唱されている。
    「やる気は側坐核から生れる」が、自分に対して報酬があるとやる気が出るもので、達成感が「A10神経」という快楽に関わる神経を刺激して、ドーパミンという物質を出して、やる気を維持させる。
    偏桃体を働かせ、感情に絡むエッチな連想をすると物事を憶えやすい、ということもある。

  • 脳科学者の池谷裕二さんとコピーライターの糸井重里さんの対談形式で綴られた作品です。
    池谷さんの作品はどれも例えがわかりやすく、一般の方が読んでもとても面白いと思います。大好きです^_^
    海馬は記憶の中枢と言われ、ここが萎縮するといわゆる認知症になるわけですが、この作品では海馬をはじめとする脳の機能に触れながら、日々の暮らしの中でどのように過ごすと良いかと教えてくれます。
    最近、物忘れが気になるなぁと思う方、アンチエイジング頑張るぞーという方にオススメです♪

  • 糸井重里さんと池谷裕二さんの対談。
    始めはお二人の会話のペースが掴めず、「糸井さんばっか喋り過ぎじゃない?もうちょっと脳科学の専門的な話聞きたいんだけど!!」とモヤモヤしながら読んでいました。けれども池谷さんもそんなに迷惑そうでもないので(そりゃそうか)途中からは気にならなくなりました。
    池谷さんの本は初めて読んだのですが、その物腰の柔らかい落ち着いた感じに惹かれ、読後に別の本2冊買いました。

  • 心を脳科学活動の観点で論じて表現しているのが面白く新鮮でした。また対談形式で展開されるので比較的難しいテーマだが読みやすいと思います。


    心:脳のプロセス上の活動
      →脳が活動している状態
    可塑性の重要性:周りに反応して変容する自発性
    結果ではなくそのプロセスに注目することが重要
    →ここが刺さりました、あのイチローさんと同じ意見です。
    扁桃体:好き嫌い
    海馬:いるのかいらないのかの判断

    毎日毎日を同じ日だと思って過ごしてはいけない、脳の潜在能力が発揮できない とのこと。

    生きることに慣れてはいけない、脳は慣れることのほうが楽だから。子供のように世界を白紙のままで接するから世界が輝いて見える。大人は知った気になるから驚きや感動が減る 
    →当たり前のことだが、改めて言われるとガツンとくる。

    ToDo
    ①日々やることやったか、内容や過程の振り返りを毎日とる
    ②三行日記を続ける

  • 丁度、30歳になる年にこの本と出会えて良かった。

    まだまだ成長できる余地はある!

    単に脳に関する専門知識を述べているだけではなく、その脳に関する専門知識をどう活用するかや、
    どのように捉えるかということを、

    コピーライターと脳科学者が対話形式で語り合い、生き方や考え方につながるようになっている。

  • 2008年12月読了

    「30歳を過ぎると、つながりを発見する能力が非常に伸びる」

    という言葉に妙に納得。
    自分の場合、昔から興味は持っていたけど繋がりを見つける手段やきっかけがわからずに過ぎてしまっていたことが、最近になって妙に繋がる。

    意識の持ち方の問題かもしれませんが、糸井氏の言う「経験メモリー」の蓄積に励もうと思った一冊。

  • 物覚えの悪さとか、要領の悪さとか、最近色々と気になっていて、「歳とったからなぁ」なんて年齢のせいにしてたのですが、この本を読んで要は脳の使い方なんだと気づきました。「まだまだこれからだ」と思える一冊です。

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著者プロフィール

監修:池谷裕二
脳研究者。東京大学大学院薬学系研究科薬学専攻医療薬学講座教授。薬学博士。一般向け書籍の累計発売部数100万部超え。

「2023年 『3ステップ ジグソー知育パズル どうぶつ だいずかん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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