死にゆく妻との旅路 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101186214

感想・レビュー・書評

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  • ・妻には十分なことをしてやった、なんてその時に言える男が一体どのくらいいるんだろうか。などと思いそこで考えることをやめる。

  • 実際にあったことを、手記とした書かれたものです。月刊誌「新潮」に連載されたのを、多くの方の希望で1冊の本として出版されました。


    亡き妻への哀惜の手記。


    会社が傾き、自己破産への道をたどった夫。妻は一回りも年下。一緒に縫製の仕事をしていたが、妻の体はガンに侵されていた

    手術をしたが、早ければ3カ月で再発の可能性があると言われます

    夫は金策と妻の病気から逃れるように、一時期行方をくらましてしまうのです。

    夫の帰りを待つ妻は、心細い思いをし、家を出た夫は全てを捨てて死のうとまで思います。


    しかし、結局は妻のところに戻ります。そして、今度は妻を連れて、逃亡の日々を送ることになって行きます。

    車に少しの荷物を積み、所持金は60万。日本海側を、仕事探しながらの旅が始まりました。

    そこで、感じたもの、観たものは今までのどんな時に感じたものより、美しく、暖かく夫婦の心にしみていきます。

    妻は夫をオッサンと呼びます。夫は妻を・・・・初めて名前で呼ぶようになります。


    長い旅の後半、妻はドンドン体力が落ち、話すこともままならず、そしておむつの交換も夫が・・・。

    医者に行こう・・・・いやや、オッサンと離れたくない。

    この繰り返し。

    夫は、途中で妻を観るのが辛くで逃げ出したくなった事もあったのです。


    そして9カ月・・・・妻は、夫がちょっと離れた間に息を引きとります。


    辛くても、愚痴一つこぼさず、オッサンのそばに居られたそれでいいと・・・。

    夫も、長い結婚生活で、初めて妻の存在を身近に感じ、愛おしいと接した9カ月でした。





    お金が無いから病院に行かなかった・・・それだけではないのでしょうね。

    実際、ここまで追い詰められたことが無いのですから、気持ちを分かるはずもないのですが


    これを読みながら、夫婦の愛を考えさせられました。

    友和さんをイメージし、妻は石田さんのイメージで、一気に読みましたが本当に素晴らしいキャスティングだと感じています。


    夏の公開が待たれる作品です。

  • 人としては美しい。行政が起こしてはいけない事件。

  • 解説が前になければ・・・。心が苦しくなる本。

  • 泣け過ぎる。塚越

  • なけなしの50万、古ぼけたワゴンに末期癌の妻ひとみを乗せて、オッサンは最後の旅に出る。彼女との22年の時を埋めるように静かに綴られていく旅の記憶。はじめから、その時を迎える覚悟をしながらページをめくらなきゃならないけど、北陸の美しい山並みと静かな海。そして夕焼けの空が穏やかな気持ちにさせてくれる。

    旅する本屋 放浪書房
    http//horoshobo.com/

  • まだこんな事を考える年齢ではないのかもしれないけど、私は時々自分の最期を考える。

    誰に看取られ、誰に支えられ、どんな最期を送るのだろう。

    けど、どんな最期であれ、大好きな人に見守られて逝きたいと思う。
    このお話は本当のお話です。


    高度成長期、縫製一筋に生きてきた私は小さな工場を経営し、苦しくも充実した日々を送っていた。
    長引く不況、膨れ上がる借金。万策尽きた時、妻のガンを知る。

    「これからは名前で呼んで」呟く妻、なけなしの50万円、古ぼけたワゴン。二人きりの最後の旅が始まった。

    このお話の中の私は、結局妻を病院に連れて行かなかった―。

    正しくは連れて行けなかった…

    「病院は嫌。オッサン(私の事を妻はそう読んでいた)と一緒におれるだけでいいの。」
    そんな妻の言葉があったから。


    放浪に出て9ヶ月間、私は妻の看病をした。
    妻の最期から目をそらしていた私も、妻の苦悩を知り、逃げずに向き合った。
    そして、二人はいつも一緒だった。

    妻が最期に望んだコト。

    それは自分の愛する人と一緒にいること。
    それだけで良かった。


    そして私も、妻を一人にしないと約束した。

    妻は古ぼけたワゴンの中で息を引き取った。

    私は「保護者遺棄致死」という容疑で警察の取り調べを受けた。


    延命だけじゃなくて、"自分が望む最期を選ぶ"
    そんなことが言われている今だからこそ、読んで欲しい。


    本当の幸せな最期って何なのだろうか。

  • ベタではありますが、やはり泣けます。
    堕落しとるな、あほやなあと思いつつ、共感できます。
    弱いから、人間は素晴らしい!

  • 離れたくない妻の気持ちがすごく切なく、そんな状況になってから後悔しているオッサンは馬鹿だなぁ…と思いつつ…男なんてそんなもんなのか…??とも思いつつ…いろいろ考えさせられた。
    でも、結局、夫婦は良いものだと思える、寂しくもあり、あったかい話だった。

  • とても切ない本です。真面目に生きてきたであろう著者の真面目であるが故の不器用さ、妻への思い、妻の夫に対する思い、
    胸を打ちます。

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