- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101215211
感想・レビュー・書評
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「薬指の標本」 小川洋子(著)
平成10年1月1日文庫発行 (株)新潮社
令和2年2月25日29刷
「薬指の標本」「六角形の小部屋」の2篇からなる短編集。
twitterで何度か目にして印象に残り手にしました。
人の内側や世界の外側を思わせる世界観は
村田沙耶香に繋がっている感じ。
ビビットで刺激的な色合いの村田沙耶香
淡く暖かい色合いの小川洋子。
しばらく小川洋子作品を読んでみよう。
やはり文庫本の巻末解説は面白い。
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夢のような、おとぎ話のような不思議な雰囲気。静かな空気感の中、現実と幻想が入り混じる。そして、怖い。
薬指を欠損したわたしは、仕事を探すうちに不思議な標本室に出会う。依頼された物はなんでも標本にできるという弟子丸氏。イメージでしかない物、思い出も全てだ。その標本室で働く事になったわたしは、弟子丸氏と次第に親しくなっていく。ある日、彼にプレゼントされた靴を履くと、あまりにも足にピッタリで同化する感覚になる。わたしも特別な何かを彼に標本にして欲しいと願うようになり…。
何となく、行ってはダメ、これ以上はいけないと読み手の中に危険信号が灯る。小川洋子さんの淫靡な世界。淫らだけど、品がある。
童謡の「赤い靴」を思い出した。
こんな世界に溺れてみたいとも思う。現実と夢の境界線。もう2度と出てこれなくてもそれはそれで本望だ。あちらの世界も良いかもしれない。 -
静かな世界の中に静かさの中にある理解出来るような出来ないようなまっすぐな純粋さと熱に寒気がする話。狂気というようなことでもなく淡々と話が進んでいく。言葉では表せないのにこの小説の世界にはまってしまう。
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小川洋子さんの小説の中でも
とびきり息を潜めて読んでしまう1冊
なのではないだろうか。
幼稚な感想だけど、素直に書くと、
「大人だ………!!」と。
密やかさってえっちなんですね。
大事なことは決して直接書かれず、
きっと読者が各々自分の経験とか哲学とかと
照らし合わせながら読む話だなと思うから、
読む人によって、読む時期によって、
感じることが違ってくるんじゃないかな。
好きとか、愛とか、恋とか、苦しいとか、不幸とか
わかりやすい感情語を使わないで、
安堵とか、嫌な感じはしないとか、
日差しや風の描写とか、
行動とそれが持つ意義とかで
主人公が弟子丸氏に傾倒していく様子や心情が
だからこそ切なく強く
伝わってくるのかも知れない。
これはブラフマンとか他の作品とも共通だ。
しかも標本室とか語り小部屋とか
ちょっと特異な舞台設定って所が
読者の安易な共感を呼ばない、みたいな
なにか大事な効果を持っている気がする。
小川洋子さんの本を何冊か読んで、ずっと、
不幸をサラッと書くな、と思っていて、
主人公たちは
自分を悲劇のヒロインと思っておらず、
淡々として潔く、感性が豊かで意志が強い。
美しさすらある、と思っていたんだけど、
「意思や努力が既に運命なのだと、
わたしは感じます」
とあるように、諦めとはちょっと違うんだけど、
大いなる意思に運ばれていく、
それを受け入れる、過度に心を乱さない、
みたいな人生観が
そんな不幸の取扱いに結びついているのかも。
密やかな結晶でも登場したタイプライターが
また登場しましたが、
これも小川洋子さんにとって、
なにか重要なモチーフなのかしら。 -
『薬指の~』は再読のはずなのに、靴磨きのおじさんとの話や二人のご婦人の話をすっかり抜かしていた。ソーダ工場に溶け消えた主人公の薬指の先、欠けたままの薬指を彼女は標本技師の思い人へ捧げることを望む。
二編目の六角柱の話を知り合い二人から薦められていた意味が分かった。背中の痛みの治療のためにプールに通う主人公はあまりに普通の中年女性ミドリさんと出会い妙に気になってしまうところからはじまり、彼女を付けていくうち廃墟のような社宅の管理事務所へ迷い込んでしまう。そこではミドリさんと息子のユズルさんとが生活をしながら“カタリコベヤ”の番をしている場所だった。人々は看板もないその場所へ吸い寄せられたように集まり、一人ずつその中で自分の中に溜まった言葉を吐き出していく。主人公もまた誰にも話したことのない自分をそこで語りはじめていく。
幻想的というのか、それなのに現実的というのか。そういえば小川節全開。買った小川さんの本二冊目だった。-
「幻想的というのか、それなのに現実的というのか。」
小川洋子を読むとゾクゾクっとします。淡々としているから現実味を帯びるのかなぁ、、、←えっ...「幻想的というのか、それなのに現実的というのか。」
小川洋子を読むとゾクゾクっとします。淡々としているから現実味を帯びるのかなぁ、、、←えっと、私は違う感想なのですが、言葉が思いつきません。2013/01/04
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『まぶた』が大すきだから、この小説で再び似た空気が存在していることがとてもうれしい!
表題作『薬指の標本』も、『六角形の小部屋』も、なんの変哲もない日常であるはずなのに目を凝らせば一点だけおかしい、あんまり周囲と馴染まないから目を逸せない、そんなお話だった。
薬指を読んでいるとき私も標本室に勤めたいと思ったし、小部屋を読んでいる時はこの近くにもあるのかしらと行きたくなった。おかしいはずだけど、それくらい小川さんの書く世界は魅力的だった。もしかして、知らないだけで、そういうのって存在するのかなと考えた。
ドロっとしていて重たい、何度でも読み返したい小説だ。 -
どうしてこうも、小川洋子さんの小説はなんともいえず、エロティックなんだろうか。
そのエロティックさはただ裸になるとか、そういうことではない。欠けた薬指。靴に侵食される足。標本室。これらが読み進めていくうちに、なんともいえぬエロティックさに変わっていく。
とても怪しい世界なのに、抜け出したくないような気持ちにさせる。いつまでも浸っていたいと思わずにはいられない。読後も、肌にいつまでも小川洋子さんの世界がまとわりついてくる。それが心地よい。 -
標本室にも語り小部屋にも行きたい
自分の引き出しが少なくて言い表し辛いけど、
文章がとても美しく物語に惹きつけられます
ブクログでの感想の多さや内容の濃さも凄く、
読書家の誰からも愛される作家さんなんだな、と再確認
映画化もされてる様なので絶対に観たいと思います