- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101215235
感想・レビュー・書評
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小川さんらしい とても洗練された作品。
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博士の
分からないことは何でも正直に尋ねること
会話がついて行けない方向へ進んだ時、焦ることなく、再び自分が発言できる状態になるまで待つこと
親子の
博士を混乱させることのないよう、どんなに聞き飽きていても耳を傾ける努力をすること
私の苦手なことばかり。
できたら素敵だなと思うことばかり。
一方で、ドリルの問題の音読を一篇の詩のようだと言うのは、とても馴染みのことだった。
×枚、×足、×円。×枚、×足、×円……
リズムがあって、音がある。
やっぱり音は、ここにある。 -
数字の記号的なところが好きだった。公式に乗せてしまえば、有無を言わさずに答えに辿り着くのが数字だと思っていた。
でも、この中に出てくる数字の性質は性格、公式は成長であり容姿であり、隣合う数字どうしは本当のご近所や家族、それぞれが特徴的で愛おしいものだった。全てに意味があって、全てに性格や容姿があって独特に関連しあって。時々、自分の性格を隠すシャイな子もいるし、堂々と先陣をきるような子も、分かりやすい性格の子もいる。この話の中の登場人物たちのようだなと思った。余談だが昔、高校の数学の先生が「この数字とこの数字はお友だちじゃん」って言っていたのを思い出した。その数字は何だったか、覚えてはいないけど。
数字で話ができる関係が素晴らしいなと思った。たとえ、80分しか記憶が持たないとしても、数字がその時間を埋めてくれるし温めてくれる。今まで無機質で冷たく感じていた数字に温度感を感じられる素敵な作品でした。 -
もう何度も読みましたが、その度に、人に寄り添うとはこういうことなんだと教わります。とても、とても温かい物語です。映画で博士役をなさった寺尾聰さんは、私の学生時代の王子様。そして虎党歴が半世紀を越える私にとって、お守りのような小説です。
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人と人との出会いは何事にも代え難く何が起きるか予測不能でありそれは誰かにとってはなんとも素晴らしく今後の人生を全く違うものにしてしまうような力強ささえもっているんだと思わせてくれるような素敵なお話でした。
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終始、博士と私とルートの日常が穏やかにえがかれている。
上手く言葉に表すのが難しいが相手が如何なる状況や人格であれ彼らのような関係を築けていることが堪らなく羨ましい。
殺伐とした今だからこそ余計に響いてきたのかもしれない。綺麗事をいうようだが心にはいつも少しだけ余裕を持ち、さらにほんのすこし、関係ない人にも向けられる優しさを持っていたいと思う。 -
仕事で久しぶりに∇(ナブラ)に苦しめられたのをきっかけに、数学が好きになりたくて手を取りました(笑)。
事故の後遺症で80分しか記憶が持たない博士と、そこに通う家政婦さんの“私”と、“私”の10歳の息子のルートが、数学と野球を中心にして、心を通わせていくハートフルなストーリー。過去を回想する“私”の語り口に一抹の哀愁漂うところがとても良いです。素数の美しさや、野球場の喧騒、夏の夜の特別な感じが肌で伝わってくる素晴らしい文章!読んで心地よいです。
読み終わったら数学が少し愛おしくなった気がします( *´艸`)。作中で登場するオイラーの公式も好き!テイラー展開がGIVENであるときの証明もシンプルで面白いと思いました!純粋数学も純文学もいまひとつピンと来なかったけど、どっちの純も、少し好きになれた気がします!
※オイラーの公式の証明は、こちらのサイトがわかりやすかったです♪
☆オイラーの公式とは何か?オイラーの等式の求め方の流れを紹介【我々の至宝と評された公式】
https://atarimae.biz/archives/10492
ちなみに私は博士に「素数でさえ、暗号の基礎となって戦争の片棒を担いでいる。酷いことだ。」(P.178)と言わしめた暗号理論ファンですけど(笑)。
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次第に愛らしく思えてくる博士。そして寄り添う家政婦とその息子。この三人が居てこそ成り立つ日常。阪神タイガースと数学好き以外の人にもオススメできる一冊。