ライオンハート (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234151

感想・レビュー・書評

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  • 中学生くらいで、読んで、きっと私も出逢えると思ってたけど、アラサーになったけど、思ってるよ

  • 時代の錯誤で戻ったりしながら読む。
    何度読んでも飽きることがない。

    何故かエドワードの前に現れるエリザベス。過去と未来のエリザベスが現れる夢を見るエドワード。
    どうしてエドワードはエリザベスを待つのか?エドワードからエリザベスに会う事はない。その原因を調べた学者のエドワードは最初の原因を作ったエリザベスの元に学者のエドワードが会いに行き学者のエドワードは姿を消す。
    その姿を消した学者の元にまだ記憶がないエリザベスが導かれるままに、本能でエドワードの元に行き、管理人にエドワードがエリザベスが来たら渡してほしいとハンカチを託す。
    そこで物語は終わり、エアハート嬢の話になる。
    物語が繋がるように出来ていて、ほろ苦く、切ない話。

  • 何度も生まれ変わっては、ほんの一瞬交わる男女の愛を描いたSF。
    17世紀初頭から20世紀後半まで、エリザベス・ボウエンとエドワード・ネイサンの魂は何度も何度も不思議な邂逅を果たす。
    しかしその逢瀬とも呼べないほどの出会いはほんの一瞬のうちに終わってしまい、二人が長い時を一緒に過ごすことはない。
    二人はその邂逅の瞬間について、過去から未来にわたって記憶を保持している。

    彼らの記憶には不思議な紋章が見え隠れする。
    そのモットーは、「魂は全てを凌駕する。時は内側にある」

    以下、各章について。
    章の始まりには実在の名画が添えられていて、読書時間を彩ってくれる。

    0.プロムナード
    各章のはじめと最終章の最後に挿入される、比較的最近の時代の二人が描かれる。
    現代にもっとも近いエドワードは、その生涯のうちに二度エリザベスと出会うことになる。

    1.エアハート嬢の到着
    物語の始まりにふさわしい、謎と驚きに満ちたドラマチックな物語。
    悲劇的な結末を迎えており、エドワードは何度もこの光景を思い出すこととなる。
    しかし、だからこそ今生のエドワードは、二度目のエリザベスとの邂逅を果たすことができたとも考えられる――そう思うと、希望の萌芽の見える物語であるともいえるだろう。

    2.春
    完璧に美しい物語。エドワード(エドゥアール)とエリザベス(エリザベト)の愛の完璧さが余すことなく描かれている。なお、エドゥアールが母から見せてもらった祖父の日記は、後の章「記憶」への布石となっている。

    3.イヴァンチッツェの思い出
    これまでと打って変わったミステリータッチの物語。本作のエドワードは偽名を用いているため、誰がエドワードなのか、あるいはエリザベスなのか、思索をめぐらすのが本章の楽しみ。

    4.天球のハーモニー
    誰もが知る女王の話。観念的な話が多く、抽象的な物語運びとなっているが、本章にどこまで入り込めるかが、エリザベスとエドワードの関係の原点を理解できるか、非常に重要なポイントだったように思う。

    「そう、私は、彼等の全てを解放したかった――彼等の魂の無垢なる部分を」
    「ええ、そして、それは彼等の魂であると同時に、あなたの魂の一部でもあった。そして、それらの象徴があなたのエドワードになった」
    「私の」
    「ええ。だから、私たちはいつも離れている。無垢なる魂の純粋な結合はあなたの望みだった。けれど、純粋なる結合というのは常に矛盾にさらされている。あなたの魂は何者にも所有されることを望まない。誰かと結びついたとたん、たちまち濁り始め、輝きを失う。離れているからこそ純粋でいられる。ほんの一瞬の逢瀬のみがその魂を輝かせることができる」

    5.記憶
    予定調和の物語ではあるが、添い遂げた相手が運命の相手であると気付いたときには、エドワードはあまりにも年をとり過ぎていた。胸に病を得ていた彼が、エリザベスとともにいられた時間は、ごく僅かだっただろう。しかし最後の最後に邂逅を叶えた彼の一生は、その瞬間に輝いたに違いない。

    0.プロムナード
    最新の――現代の(とはいっても1978年ではあるが)エドワードとエリザベスの物語。今生のエリザベスはエドワードに関する記憶がない。だからこそ彼女は未来に向かって歩いて行くことができるのだろう。

  • 不思議な心地よい読後感。過去を行ったり来たりするストーリーはついていけないことも多かったが、それも含めて、こんなことが起きたらなあと思わせる展開だった

  • 物語の作りだけでなく、残す印象まで、とても不思議な物語。
    “時代を超え、深く愛し合った男女が出会い、すぐに引き裂かれる”というアイデアと1枚の絵画にインスパイアされて書かれた物語が、膨らまされて、時空を超えて織りなされる。
    1932年のロンドン、1871年のシェルブールのお話は、設定を引き受けた真っ当なラブストーリー。
    その2つの話でネタが明かされ、そこからどうやって展開していくかと思ったが、1905年のパナマでは設定を隠し味にミステリー仕立てで興を惹く。
    1603年のエリザベス女王の話はややくどい感じだけど、読み終えてみれば結構重要なパートだったと分かる。
    そして1855年のオックスフォード、この作者ならでは世界を感じる中で、予定調和的な話ながら、収まるべきところに収まった話にちょっと感動。
    その前に置かれた1969年のフロリダの話も良い感じ。

  • 一章目、エアハート嬢の到着で泣いた。
    それだけで読んでよかったと思ってしまった。

  • 2020.7.18

  • わたしとあなたはいつもめぐりあっている。

    時代を越えて、国を渡って、めぐりあうエドワードとエリザベス。差し込まれた絵画がイメージを膨らませ、なんともロマンティックな物語になっている。それぞれの登場人物がつながっているようで、つながっていない。長い間一緒にはいられない、というルールだが、「記憶」の二人は、その謎が解けた瞬間がなんとも感動的である。

  • 恩田さんの作品を読むのも3冊目。初めて映画とは関係のない作品を読んでみました。冒頭推理小説かのような出だしに若干困惑しましたが、最初の章である エアハート嬢の到着 で一気に作品の世界に引き込まれました。他の作品もそうですが、恩田さんの作品は自身がその世界に連れ込まれるような感覚が強いですが、このお話はあまりの緊迫感にこちらも冷や汗が出る思いでした。ところが、次の章である 春 は全く違う世界観。ただし、最初の章のような緊迫感もなくすっかり油断をしていたところにミレーの風景画、春?まさか?という展開にビックリ。全く意識に止めていなかった章の最初の挿し絵を思い出して、ページを戻した瞬間、とても興奮してしまいました。
    ただ、その後は私的には興奮が少しおさまった感がありました。若干ストーリーの難易度が上がって、作品の中から出て現実世界に戻ってしっかり読んだという感じでしょうか。また、最後の章は途中で結末が見えてしまったということもありました。
    でも総じて独特のファンタジックな雰囲気をただよわせながら、それでいて心地良い余韻を残すような結末はとても良かったです。作品のジャンルは違ってもこの心地良い余韻はいかにも恩田さんという気がしました。
    この作品も出会えてとても良かったです。

  • 恩田陸の時空を超えた男女の愛のファンタジージャック・フィニィを彷彿させるそれぞれのエピソードを絵画に、全体のタイトルを曲に例えているなぜエドワードとエリザベスだったのかが野暮だとは思うがやや気にかかる

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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