凍 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235172

感想・レビュー・書評

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  • 「目が覚めるとまだ生きていた」だものビリビリくる。自分の苦しみなんて小さいものだよなと思う。

    深夜特急は好きで何度も読んだ、先日何かで「沢木耕太郎氏の深夜特急以外でもこれを読んでおけ」と言う記事を見て、本作品が乗っており、手に取る。

    クライマー山野井泰史夫妻を書いたノンフィクション。死をかけても雪山に挑む姿を追う。もって生まれた天性を感じる。惚れたモノに対して、考え抜き、攻略する姿。
    妻も18本もの手足の指を凍傷で切った女性クライマー、好きな山で挑戦できるなら指なんて別によい的気迫を感じ畏敬の念を感じる。そしてそれを感じさせない日常生活に驚く。

    著者としても山野氏に出会えたこと、題材として書けたことは幸せな事だろうなとうらやましく思う。

  • 最強のクライマー山野井泰史と妻で同じくクライマーの妙子がヒマラヤの難峰ギャチュンカンに登る。
    高い山にただ登るのではなくて、低くても素晴らしい壁に美しいラインを描いて登ることにこだわる…すごいな。

  • 登山の専門用語が多く、初めは難儀したが、気が付けば、震えるような気持ちで読み終えた。

    大きなことに取り組んだあとだからこそ、どう締めくくるかが大事だな。

    降りるところは手に汗を握った。

  • ヒマラヤの高峰・ギャチュンカンに挑んだ、世界屈指のクライマー・
    山野井泰史・妙子夫妻の究極のクライミングを描くノンフィクション。

    冒険物・探検物のノンフィクションは、ページを繰るごとにわくわく
    させられる反面、困難な場面になると読んでいるだけでも怖くて痛い。

    本書の山野井夫妻についてはテレビのドキュメンタリーでも見たが、
    お互いが凍傷で手足の指を失っている。それでも、クライミングを
    続けるふたりの映像を見て壮絶さを感じたっけ。

    著者特有の淡々とした描写が、遭難時(正確には遭難ではないが)の
    過酷さをより鮮明に想像させてくれる。

    ギャチュンカン登頂を果たしたのは、夫・泰史だけであるので比重が
    そちらにかかっているのは致し方ないか。しかし、登頂こそ果たさな
    かったものの、妻・妙子の精神と肉体の強さには同じ女性として
    驚嘆する他ない。

    既に手足18本の指を凍傷で失っているにも関わらず、夫と共に
    過酷なクライミングに挑み、第二関節から切断された手指に更
    なる凍傷を負う。

    帰国後、凍傷部分の切断手術を受けた夫と妻の姿は対照的だ。
    夫は蒼白な顔色で体が小刻みに震えている。片手だけの手術
    とは言え、術後でも看護婦と談笑している妻。

    妙子については以前の凍傷手術の際のエピソードが紹介されている。

    「同じ病院に小指を詰めた暴力団員が入院していた。あまり痛い、
    痛いと大騒ぎするので、看護師が言ったという。
    「小指の一本くらいなんです。女性病棟には手足十八本の指を詰めて
    も泣き言を追わない人がいますよ」
    しばらくしてその暴力団員が妙子の病室に菓子折りを持って訪ねてきた、
    という。」

    一般論でも男性に比べ女性は肉体的な痛みに強いというが、肉体の
    一部を欠損しながら、料理や家事をこなす妙子に強い興味を覚える。

    山野井泰史・妙子夫妻は、ギャチュンカン以降も毎年クライミングを
    続けている。いつも思う。冒険に駆り立てられる人は、きっと普通の
    人にはない「何か」を持っているのだろう。

    本書も◎な良書。でも…痛くて寒くて怖かった。汗。

  • 引き込まれた。ぐいぐいと。感情移入、私も登攀しているかのように、緊張感を持って靴の一歩を運んで降りていくように。

  • これで沢木耕太郎にハマった。
    読んでる指先までツンと冷えて頭がグラグラしてくる。

  • すげー。これノンフィクションとかマジでハンパない。クライムダウン(下降)はほんと地獄。よく生きて帰ったと思う。読んでてグイグイ引き込まれるけど、下山時は全く休む暇が無いし、ハラハラするし疲れた。
    この人達の強靭な精神力と技術力は尊敬に値するね。

    登山家の事は全く知らないけど、これを機に色々調べてみたら日本にはすごい登山家が多いんだね。皆何で登るんだろねぇ。指とか無くなるのに。マジですごいわ。

  • 以前にNHKのドキュメンタリーで特集されていたので興味を持って山野井泰史さん、妙子さん夫婦のノンフィクション小説の「凍」を読む。 淡々とした筆であってもヒシヒシと圧倒される山の恐怖。おそらく山に魅了されなければ理解しがたい登山の魅力を筆力でもって垣間見た気にさせてくれる良本。

  • 久しぶりに寝るのを惜しんで先に読み進める程に強く惹かれた。何よりもノンフィクションであり壮絶な内容に圧倒される。手足の指のことを心配しながら読み進めるが、本人たち、特に紗子さんはものともせず、そればかりか再び登攀する強靭な精神と山への愛着が凄いです。
    文中でも書かれているが、生還した中ではかなり過酷な登攀ではないでしょうか。
    主人公、山野井の性格から、細部に渡る描写や出来事は証拠がなくても真実だろうし、それを引き出す作者の力量も凄いです。終盤にギャチュンガンに訪れる際に同行した作者が描かれているが、主人公達に信頼されていることがわかるエピソードですね。今まで必ず登場人物を固有名詞で書いていたのに日本の知人とだけ書くのでこれは?思い、解説を読んでやはり、と思った。(自分のことを登山経験の全くないが高度に強い中年男と評するのも楽しい)
    正に、自分が経験することかできない(経験したくない)登山を優れた仲介者を通して経験出来た読書でした。凍と闘を掛けた題名にしたことを後記で知り、納得。

  • 最後までおもしろかったです。
    2002年に山野井泰史さんと妻の妙子さんの二人が標高7952mのギャチュンカン登頂に挑んだ話しです。登山経験まったく無しで知識も無い私でも十分面白かったです。
    GoogleEatrhの3D表示でエベレスト山脈を見てみると分かりますが、あんな絶壁を登るなんてまったく無謀な挑戦に思えます。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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