- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101250212
感想・レビュー・書評
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「この島に欠けているものは何だ?」
一行目からすん、と惹き込まれるのに読んでも読んでもよく分からない。
判然としないままストーリーは進み、且つ、カカシ、祖母、徳之助(禄二郎?)、警察、とアイコンが変わる度に時系列やその舞台すら怪しくなり、しかし不思議と読み手は混乱することなくどんどん夢中にさせられる。
現実世界のお話のようでファンタジーのようでもある。強い個性を持つキャラクターたちが、まるで別々の考えで、悪意なく(すごい悪意あるのも居る笑)それぞれが好き勝手しているようで、誰もが変で怪しい。
不穏で、暴力的で、途中まで気持ちがやや重い。
ところがある時点からストーリーはじわじわと加速し始め、読み手はどんどん思いもよらない方へ連れて行かれる。ひとつひとつの疑問符が丁寧に回収され、そして最後には「ああ、」と温かいため息が漏れてしまう。
「この島に欠けているもの」は、はっきりと判っても尚、読み手は想像する以外にない。優午と同様に。
それは、それぞれの読み手にとって一番温かい「それ」としてきっと胸に響く。
まるで偶然のように用意された、緻密な(一見して把握や予見が不可能であるように思われるが、それでも方程式に直すなどして理論的に究明することが可能であるという)カオスによって。
私自身が極度の怖がりの為、周囲から本書を読むことは勧めない、と言われずっと避けてきた。
暴力的な描写やキツいシーンを含む本作を読み進めるのは、或いは私にとってチャレンジングではあったが、無事読み終え、この感動に出会えて良かった。
【「誰かに覚えていてもらいたい」と彼女は言い、そのたびに「僕が覚えている」と答えた】 -
伊坂幸太郎、学生時代大好きだったのにデビュー作を読んでなかったとは…。最近読んでる本とは毛色を変えてミステリーで没頭したいと思い、久しぶりに伊坂さんを選んでみた。
喋るカカシが出てきたり、過去に行ったり、仙台と鎖国状態の荻島を行ったり来たりと、不思議な設定なものの、これがどうやって繋がっていくのかなとワクワクしながら読んだ。あの時のセリフがここに繋がってくるのか!ということが多いから見逃さないようにしながらも、深く考えすぎずに読むのがコツなような気がする…!
伊坂さんの作品はすかっとできるような場面もあったり、ユーモアが効いていたり、キャラクターが愛らしかったり、デビュー当時から伊坂作品は伊坂作品であったんだなと感じました。不思議ながら面白かった! -
伏線の魔法にかかってしまい、そんなバカなという設定にどんどん引き込まれた。
伊坂幸太郎さんも、谷川俊太郎さんを読んでるんだなぁ。好きなこととか、いろんなこと、ぼくと似てる。ほんとに。
いつか伊坂幸太郎さんがビックリして、笑い転げるような小説を書く!!
伊坂さんのデビュー作。 -
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よーえりさん、こんばんは。
あまりに各本への感想、評価が私とおなじなのでコメしてしまいました。100万回猫のチープさや、オーデュポンへの爽...よーえりさん、こんばんは。
あまりに各本への感想、評価が私とおなじなのでコメしてしまいました。100万回猫のチープさや、オーデュポンへの爽やかさ、まだまだ重なる評価がありすぎますが、今後もコメ楽しみにしてます。2018/01/21 -
kakaneさん、こんばんは☆
完全に自分の記録用の、自己満足な感想文なのですが…コメントいただき&共感いただきとても嬉しいです!!kakaneさん、こんばんは☆
完全に自分の記録用の、自己満足な感想文なのですが…コメントいただき&共感いただきとても嬉しいです!!2018/01/21
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物語自体は、切なく悲しい。悲しみを背負った人々が沢山登場する。だが、ささやかであっても救いの手を差し伸べてくれる人が必ずいた。そして希望もあった。
人は大きな達成感や喜びを求めすぎているのではないか?と感じた。ささやかなことの中に大きな救いがあると思えるようになった。
足が不自由で、鳥に愛情を注ぐ「田中」の話が大好きになった。
動物学者:オーデュポンと絶滅したリョコウバトのこと。
「悲しい結末に向かうことは誰にも止められない。人間は失わないと、ことの大きさに気づかない。ただ、祈ること、失われるものへ愛情を込めることはできる」
このフレーズが特に気に入った。止められなくても、祈ること、愛することはできる。そして、その思いが届く奇跡がこの物語にはあった。ほのかで温かい気持ちになれた。
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突飛な発想や展開に驚かされて夢中で読んだ。たった一体のカカシに振り回されて、でも不思議と嫌な気がしない。むしろ読後感は爽やかだった。
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あまりにも設定が現実とはかけ離れている作品だったので作品に入り込めるか心配だったが、先が気になってあっという間だった。
桜と伊藤の「生きている価値のある人間なんているのか」という会話が印象に残る。桜は島の中で唯一殺人が認められているという奇妙なところに惹かれた。
伊坂幸太郎さんの緻密な伏線回収はデビュー作から健在だったことに驚いた。桜が地面に埋めた花がまさかの結末を生み出したところが特に気持ち良かった。