ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101255040

感想・レビュー・書評

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  • 昭和60年 ハ刷 再読
    とっておこうかな

  • すげー。正直ギリシア神話そのものの面白さ以上に、筆者の文才の方に感動してしまった。

    この本を読んだだけでも伝わってくる程に複雑怪奇な神話を、体系的に整理しながら主要な物語を押さえて、端的に要約しながらも物語的な面白さを失わず軽妙洒脱に描ききる天稟よ。
    それもただの神話の粗筋紹介に止まらずに、批評的観点から自身の経験や関連作品に結び付けて纏めるって何事。

    このシリーズ他のやつも読みます。

  •  ギリシャ神話はあまりなじみなく、フロイトが提唱したエディプスコンプレックスの元ネタの話は知ってるなってレベルだった。この本は、そんな自分のような超初心者の入門編としてつくられた本らしい。
     そんな経緯があって、ギリシャ神話の内容自体は割とゆるめ。だけど、ゼウスやアポロンがストーカー気質(というかストーカーしてるし)の色男でちょっとドン引き。まあ……性的なところはフリーダムなところを考慮する必要もあるにせよ、「神なんだぜ?」って詰め寄ってくるのはチャラ男みたいでキモチワルイデスネ。
     そして何よりも、神の言ったことは絶対パターンが多すぎる。みんな回避しようとしているんだけど、結局実行されちゃってる。これが運命なんですかね……。
     設定とか人間関係図がごちゃごちゃしていて難しいなと思うところもあったけど、ギリシャ神話って意外に俗っぽいて思えたので、良かったのか知らん。

  • パンドーラー(古希: Πανδώρα, Pandōrā)は、
    ギリシア神話に登場する女性で、神々によって作られ人類の災いとして地上に送り込まれた。
    人類最初の女性とされる、
    パン(Παν)は「全てのもの」であり、
    パンドーラーは「全ての贈り物」を意味する。

  • 平易な文章であり、作者独自の切り口でギリシア神話を紹介するエッセイ本。ギリシア神話に興味がなくとも、楽しめる一冊である。しかし男性目線でそうなってしまうのか、女性が蹂躙されている説話の取り上げ方か気になる。バッカスとアリアドネなんて、これではただただアリアドネが気の毒で、神話として残す理由が全く分からない。中野京子先生とは180度違う取り上げ方なので、しかも中野先生の方が運命的な恋という形だったので、気持ち悪さが増してしまった。少々気になるところもあるが、とても読みやすくてGOOD。

  • とても読みやすく面白かった。知識として知っておいた方がいい物語をこの一冊で学べる。

  • ギリシア神話に詳しくないので、わからない部分もありましたが、それなりに楽しめました。
    著者の身近な話からギリシア神話に繋げていく語り口がおもしろかったです。

  • 洋画を結構見るのですが、ギリシア神話の素養がないと分からないことも多く、少しでも知識がつけばと手にとってみました。

    エッセイ的な感じもあり、とても読みやすくて面白かったです!
    これを入門書として是非他の本も読んでみたい。

    早速、(今更)見てたSATCの台詞にギリシア神話由来のものが出てきて、それが分かったのが嬉しかった!

  • 著者の「知っていますか」シリーズの一つ。ギリシャの神は人間に近く、怪物が登場するところなぞ、日本の神話に似てるところもある。神の名は、ローマ系の読みとギリシャ系の読みがあり、聞いたことのある名前もあるが、覚えづらい。著者が言うように若いうちに齧っておいた方が良いみたい。2021.1.2

  • 5年前にギリシア神話を読まずにエーゲ海に浮かぶ島々を訪ったことが悔やまれる。でも当時ではなく、今だからこそこんなに興味を持って読めるのかもしれない。ギリシア神話ってなんとなくむずかしそうと思っていたけれど、武勇伝と一目惚れの話ばかりだし、なにより阿刀田さんの文章は読者を飽きさせない。神と王と王妃がたくさん登場するのと、浮気癖のあるゼウスのせいで親族が多いので、相関図を描いたらすごいことになった(笑)

    p42
    女は自分を恋している男に対して、その愛を受け入れるつもりはさらさらないくせに、それでもなおなにほどかの媚態を示すものだ。そこに女の本質的なコケットリイがある。残酷さがある。

    p56
    神がーこの世を作った創造主がーどうあろうと、人間は人間の判断に従ってこの世を引き受けて行こう、という強い姿勢がうかがわれる。その判断は、はかない錯誤にしかすぎないかもしれないが、人間はそれを頼りに人間として生き抜くよりほかにないではないか。少なくとも二十世紀はそういう考え方の支配的な時代である。われわれの世紀ではすでに"神は死んだ"のである。

    p101
    アヌイの中のアンチゴーヌはクレオンに対してーひいてはこの人間社会そのものに対して、「ノン」と言い続けるために存在する。
    この「ノン」は、否定の理由をたやすく説明できるしろものではない。
    あえて説明するならばー人間の社会が続いて行くためには、クレオンが説くような良識ある秩序が必要なのは本当だろう。アヌイの描くクレオンは、古い神話やソフォクレスのドラマに見られるような"悪い"統治者ではない。浮世の常識に従えば、充分に納得の行く為政者だ。しかし人間社会が本源的に矛盾を含んだものであるならば、どこかでつねに「ノン」と叫び続ける者がいなくてはならない。それがアンチゴーヌの役割であった。
    かたくなに「ノン」と叫び続ける理由がなんなのか、アンチゴーヌ自身さえわからない。もとより古典的な兄弟愛や死者への敬いからではない。彼女はただ「ノン」と叫ぶことを役割としてこの世に現われ、その役割を全うして死んで行く。
    それがアヌイの戯曲の変らぬテーマであり、実存主義文学の特質であった。人間存在に対する、理由の説明できない疑問符を投げかけること、それがアヌイのモチーフだった

    p107
    (前略)一つの哲学を具体的に表現するために、それぞれの人物がそれぞれの役割を委ねられただけのことだ。

    p116
    カミュの哲学を簡単に要約するのはむつかしいが、あえてそれをおこなうならば、カミュは従来の神話では無償の労苦と考えられていたシシュポスの行為を肯定的なものとして捉え、"人間のおこないはどれもこれも突きつめて考えればシシュポスの行為同様に無償のものではないか。その無償性に向って無償と知りつつ努力を続けることが人間の尊厳さを保つことだ"
    と、解明したわけである。
    平たく言えば、この世界は矛盾だらけに作られている。そうである以上、人間のやることなんか、どれが善でどれが悪かわからない、どの道シシュポスが岩を山へ運ぶのと同様に意味のないことだ。ただ、その努力そのものの中には人間の価値がある、と、まあ、こう言いきっても当たらずとも遠くはあるまい。

    p132
    十九世紀の哲学者ニーチェが人間に芸術的意欲を起こさせる原動力として、ディオニュソス的なものとアポロン的なものがあると言ったのは、こうした伝説を拠りどころにしたものであった。すなわちディオニュソス的なものとは、陶酔の世界に属し、激情的に、衝動的に芸術作品を創造するタイプであり、また、アポロン的なものとは、調和を重んじ、知的に芸術世界を構築するタイプである。芸術家の伝記などを読むとき、それぞれがどちらのタイプとして出発したか、その結果として創造されたものがどう異なっているか、作品を理解するための一つの手がかりとなっているのは本当である。

    p148
    壺の中のものは、あらかた飛び散り、その底にたった一つのものが残っただけだった。パンドラの壺から飛び散ったものは、病気、悪意、戦争、嫉妬、災害、暴力など、ありとあらゆる"悪"であった。
    かろうじて壺の底に取りとめたのは"希望"であった。
    それまでの地上には、なにひとつとして邪悪なものはなかった。人間たちはいとも穏やかに、幸福に暮らしていたのだった。だが、いったん壺の中から諸悪の根源が飛び散ってしまったら、もうこれを取り押さえることはできない。さながら処女地に広がる伝染病のようにさまざまな悪は地上に広がり、人間たちは不幸に身を晒さなければいけなくなった。
    ただ一つ、かろうじて"希望"だけが残った。数々の不幸に苛まれながらも、私たちが希望だけを拠りどころとして生きていけるのは、このためなのだ、とギリシア神話は教えている。

    p202
    東北に旅して磐梯高原の五色沼にほど近い民泊に泊まったことがあった。
    夜半にふと目醒め、障子のすきまから夜空を覗くと、射すほどに鋭い星の光が見えた。
    わたしは立ち上がって窓を開いた。
    満天に降る星たちの輝き。夜の静寂の中で何かを囁くように光の眼を凝らしている。私は夜空にこれほど数多くの星が宿っていることを久しく忘れていた。

    p221
    もともと発生の異なる物語が融合されて出来たものだから首尾一貫しないところがあるのは当然のこと。しかもいろいろな変形がある。どこからどこまでが"本当のギリシア神話"なのか断定しにくいところもある。と言うより、紀元前八世紀の詩人ヘシオドスが書いた"神統記"、ホメロスの"イリアス物語""オデュッセイア物語"、さらに古代ギリシアの三大悲劇作家アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスの戯曲などを中心に、その他多くの古い文献を資料として"多分古い時代にはこんなふうに語られていただろう"と推定して作り上げた物語群、それがいわゆる"ギリシア神話"と呼ばれるものの実体だ。決定版とも言うべき一書が存在しているわけではない。
    複雑多岐にわたっているギリシア神話ではあるが、大まかに分けてみると、次の五つの物語群にくくることができるだろう。
    1オリンポスの神々の伝説
    2アルゴー丸遠征隊の伝説
    イオルコスの王子イアソンが黒海の果てまで金の羊毛皮を探しに行く冒険譚であり、狂恋の女メディアの悲劇がこれに続く。
    3英雄ヘラクレスの伝説
    ゼウスの子にしてギリシア神話中第一の勇者ヘラクレスの十二の冒険譚が軸となっているもの
    4テーバイの伝説
    あの名高いオイディプスが生まれ、統治し、のちに追われた国がテーバイであった。
    5トロイア戦争の伝説


    p228
    「私はこのとき必要にせまられて、外国語習得法を一つ見つけたが、この方法を用いると、どんな外国語でもひじょうにらくに覚えられる。このかんたんな方法というのは、なによりもまずこうである。声を出して多読すること、短文を訳すこと、一日に一時間は勉強すること、興味あることについていつも作文を書くこと、その作文を先生の指導をうけて訂正し暗記すること、まえの日に直されたものを覚えて次の授業に暗誦すること」

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著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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