- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101278117
感想・レビュー・書評
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(01)
木村政彦という主人公から離れることはないが,近代柔道史とも言える内容で,木村が活躍した20世紀前半の柔道が日本のスポーツ(*02)の中で大きな一角を占めていたことからすると,格闘技史を超えて,日本スポーツ史の重要な部分を含む内容になっている.
また,戦後日本におけるプロスポーツの初動がどのようであったか,その動きの中でプロ柔道やプロレスリングはどのように起こったかなどにも,本書の射程(*03)は及んでいる.
(02)
柔道がメジャーなスポーツであったことなど,今からでは考えられないが,近代における武道の位置づけ,また武道がつなげた戦後社会の人脈なども興味深い.
20世紀後半のスポーツは安全に競技されるものであり,木村や師の牛島らが戦前に行なっていた鍛錬は,現代の様々なトレーニングを考える上でも何事かを示している.
柔道(柔術)がアメリカ大陸やヨーロッパへの展開することによって,かつてあった寝技につなげる最強の柔道が海外に保存され,現代の格闘技に復興されていることは,武道や武術も文化であり技術であることを告げている.
(03)
本書の方法として,文献調査もさることながら,関係者へのインタビューに多くを負って構成されていることにも注目すべきであろう.
つまり,この格闘技に関わる記録は,書かれたものとしてはあまり残らずにいたこと,過去の美化も含む自伝的な記述としては残されていたこと,講道館正史よりも新聞報道などが記録として価値があったこと,これらから洩れた過去が木村という強い個性とともに関係者の記憶の中にまだ遺されていたことなどはまだ歴史的な記述の及んでいない分野があることへの示唆にもなっている. -
木村政彦、現代に、これほどの猛者がもう出現するであろうか?時代と師匠牛島辰熊により作られたものだか、悲しいながらも、その戦争という時代に大きく左右されてしまう。本書は単に木村一個人だけでなく、柔道史をも学べ、そこには未だ知られていない人物をも深く取り上げていて興味深い。
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第43回大宅壮一ノンフィクション賞、第11回新潮ドキュメント賞をダブルで受賞した作品である。『ゴング格闘技』誌上連載時(2008年1月号~2011年7月号)から話題騒然となった。ハードカバーは上下二段700ページの大冊である。単なる評伝に終わってなく、戦前戦後を取り巻く日本格闘技史ともいうべき重厚な内容だ。にもかかわらず演歌のような湿った感情が行間に立ち込めているのは、著者が七帝柔道の経験者であるためか。実際、増田は泣きながら連載を執筆し、「これ以上書けない」と編集者に弱音を漏らした。
http://sessendo.blogspot.jp/2016/10/blog-post_13.html -
本当に強い男の作り方が書いてある。本当にすごい。一番強い人で間違いないと思う。
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冒頭からの引き込まれ方がすごかった。絶対的ヒーローの力道山が崩れていく。木村政彦も他の人物も単に持ち上げるのではなく、人間らしい部分とともに忠実に書かれているので信頼性も高い。