きのね(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101293103

感想・レビュー・書評

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  • ・あらすじ
    十一代目 市川団十郎の話。メイドの子。
    ・かんそう
    読んでよかった。裏側を覗けた。伝統芸能っていいね。

  • 蔵とは正反対の性質をもった主人公の話。そんなに我慢しなくても・・・と思うほどだ。
    歌舞伎の世界を垣間見ることができるところもよく、今の海老蔵がこのおじいさんに似ているのでは・・・と今の歌舞伎の世界を見るのもおもしろい。

  • お友達に借り手読み始めました。すぐに引き込まれました。実在の人がモデルというのも、興味深い。歌舞伎界の人の生活を垣間見ることができるのも、おもしろい。

  •  これくらいの時代の女性の言葉ってすきです。歌舞伎は一度も見たことが無く、まだ未知の世界。あまり興味もなかった世界だけれど、これを読んでちょっと足をつっこんでみようかしら…と迷い中です。

  • *大正~昭和初期、戦時中の生活風景ーしかも冒頭、主人公光乃の学生時代までは、貧しさで一家離散する家族の、そして光乃が女中として働きだしてからは、松本幸四郎家や市川団十郎家をモデルとした歌舞伎役者の家のーがよく描かれていて、「自分の知らない人生を知る」という読書の楽しみの一側面については、まず申し分なく満たされる。

    *十一世団十郎(当代海老蔵のおじいさん)がモデルということで画像検索してみたら、今の海老蔵にそっくり。かっこいい。頭のなかでは海老蔵主演で映像化しながら読むので、活字なのに目の保養ができます。イケメン(が登場すると面白い)の法則クリア。

    *しかも貧しい田舎出の特別美人でもない女中光乃が、雲の上の存在であるとわかっていながら、主であるそのイケメンに恋い焦がれ、そしていずれは結ばれる(まだ上巻しか読んでないし史実も詳しくは知らないけど、少なくとも子をなす、それが十二世団十郎)、そういう物語である。恋愛小説として考えても、王道。

    *そして、歌舞伎役者のこととにかく知りたいファン(かつ初心者)にとっては、今をときめく海老蔵さんのルーツ=市川宗家の近現代史を楽しく学べる、最高の参考図書であります(「教科書」は中川右介の本)。

    下巻早く買わなきゃ。

  • 内容は稀代の歌舞伎役者を陰でずっと支え続けた一人の女性のお話。

    主人公の光乃は家業が傾いたため、叔母の家に身を寄せ、やがて歌舞伎役者の家に女中として働くこととなる。
    その時光乃は18歳。
    その歌舞伎役者の家には3人の男の子がいて、光乃は長男の雪雄に心惹かれるようになる。

    やがて雪雄には特定の女性が出来、その女性との間に子供が出来る。
    さらに雪雄は別の女性と結婚。
    雪雄つきの女中となった光乃は新婚夫婦の家庭で激しい嫉妬に日々苦しむ。
    そしてその嫉妬心がほんのボタンのかけ違いで不仲となった夫婦の間を決定的にとりかえしのつかないものにし、雪雄は離婚する。
    やがて戦争が始まり、雪雄と二人で暮らす光乃。
    その内二人は主従の関係を越えた仲になる。

    この雪雄という人、ワガママで内弁慶で神経質、気に食わないことがあるとすぐに暴力を振るうんですが、性根は誠実で真面目、それも不器用で一人では何も出来ないので憎めない。
    こういう男をほっとけない光乃の気持ちも理解できます。

    それにしても憧れの人と添い遂げたとはいえ、最初はその状況を有難がっても段々と人間ってその幸運を当たり前と思うようになり少しずつ傲慢になっていくもの。
    それがこの光乃にはないのがすごい!
    決して自分は前に出ようとせず、謙虚に控えめに。
    昔の耐える日本女性という感じです。

    このタイトルの「柝の音」は舞台の始まる合図の柝の音のことです。
    まだ光乃が雪雄にとってはただの女中、名前すらろくすっぽ覚えられてない時、ふと雪雄に
    「どんな芝居が好きか」
    と聞かれます。
    その時に光乃が「何よりも好きなのは、きのねでございます」
    と答えるんですが、それに雪雄が大笑いして
    「きのねとはいわないの。柝はたくと読むらしいが、芝居では柝を打つ、とか柝を入れる、柝が鳴る、とかいうね。強いて言いたかった柝のおと、ならいいよ」
    と言いそれから光乃を「きのね」と呼ぶようになったところからつけられてます。

    舞台の始まりを告げる「柝の音」の緊張感、清清しく強い音は主人公の光乃さんそのものだったのじゃないかと思います。

  • 以前にも読んだこの「きのね」当時は歌舞伎の事も全く知らず、ましてやこれが11代目團十郎をモデルとした作品と言う事も知らなかった。
    今回は歌舞伎や團十郎のことも少し知って来たので、もう一度読み直したくなりました。
    以前の時も十分面白く読めたけれど、歌舞伎の事を知るとより面白さが増しました。

  • 十一代市川団十郎と妻光乃の、壮絶で不器用な真っ直ぐな生き方。戦前戦中戦後の日本の生活文化、歌舞伎の世界の厳しさ賑やかさが、行間から立ち上り、強いエネルギーに眩みながらの読了。十一代が病に冒されていく様子が十二代の最期と重なり、涙した。

  • 現在の11代目市川海老蔵のおじいさん11代目市川団十郎とそのめかけのお話。梨園の裏側がよくわかります。

  • 宮尾登美子の作品は初めて読んだ。女流作家らしく丁寧に心情を汲み取っていてさすがと思わせる。
    11代目市川団十郎の妻をモデルにした作品。梨園の世界は大変だとは聞くけれど、果たして今でもこれほどまでに尽くす女性がいるだろうか。光乃が雪雄にささげた半生の描写もさることながら、歌舞伎の魅力も余すことなく描いている。今さらながら成田屋の芝居を見てみたい。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮尾登美子の作品

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