- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101294025
作品紹介・あらすじ
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など-日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
感想・レビュー・書評
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十三話の短編からの思い出トランプ。最後の作品は「ダウト」。洒落ている。
何処にでもあるような、普通の家庭の中にある不穏な空気感。家族への疑惑、疑心、不安、不満。それらを飲み込みながら、家族としての在り所を探していくのでしょうか。
現在の価値観では、納得できない世代もあると思う家庭や夫婦の表現かもしれませんが、狡さとか背信をも受けとめて、愛情と諦めの混雑が実情だった時代です。男女それぞれの感情が響く素敵な作品です。 -
ウン十年ぶりの再読です。ちょうど私が学生の頃、直木賞をとった作品として話題になり手に取ったのでした。そして、ウン十年後の今、読み返してみるとどう感じるのか?試してみたくなったのです。13作品の短編集です。
当時の日本の一般的な家庭の風景。ごく普通に流れていく家族の生活。夫婦、親子を通した日常。一見何もおかしな所はないのだけれど、その中の個々人の心の中には様々な思い、記憶、経験。嬉しいこと悲しいこと、憎らしいこと。様々な思い、感情が表面には出てこないけれど内面に渦巻いている。そういった内面を掴み取り、暴き出して端正な言葉と文章で鋭く描写している。
私は向田さんの家族愛に基づいたキレキレの描写が好きなのだけれど、人間の心の闇に切り込んでくるところも流石だな!と思ってしまいます。
例えば今回再読していて、「獺祭」という言葉の意味を改めて認識しました。今の私には「美味しい日本酒」というイメージしか頭の中になかったのだけれど、「かわうそ」という作品の中で、妻である一人の女性のシタタカな一面を見せつけられた様な気がしました。「獺祭」という言葉を通じて、、、少し怖かった。
やはり、家族や人の心象が向田さん独自の多彩な輪郭で描かれている。場面展開の素早さも心地いい。途中で止められなくなります。
ウン十年前に読んだ時は「何だか不気味な作品集」というイメージを持っていたのだけれど、今回再読して過去とは異なる印象を持つことができました。
もちろん背景はウン十年前の昭和の情景です。しかし、人の心の有り様というのは変わらないものですね。
向田さんの作品は歳をとりません。 -
H30.8.24 読了。
・短編集。「かわうそ」「犬小屋」「花の名前」は、面白かった。 -
人の心の奥にあるわだかまりや、後ろめたさ。
他人には計り知れない、家庭の内情などが書かれていて、どきどき、ハラハラしながら読みました。
登場人物それぞれの人間臭さが、とてもいいです。
こんな中身の濃い短編集を読んだのは初めてです。 -
タイトルがなんだか可愛らしくて手に取りあらすじを読んで気に入った本であったが、想像していたものとは良い意味で違った。
全編読了後のくるしさ、苦さがすごい。
とにかく向田邦子さんのすごさがわかる。
特に向田さんの芸を感じられるのは
「かわうそ」 「大根の月」
どちらも終わり方が素晴らしい。
文学作品として美しすぎる。
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2019年4月14日、読み始め。
著者は、日航機事故で亡くなられた。
そのことは、事故直後の報道で知ったが、それまでは、著者のことは全く知らなかった。
で、著者の作品のいくつかを知ることになり、いずれは読んでみたいと思っていた。
が、時間ばかりが経ち、日航機事故から37年以上が過ぎてしまった今、ようやく作品に向き合うことになった。
63頁まで読んで、返却。 -
気づいてはいるけれど、見なかったことにしてやりすごしている日常の毒を、端正な筆致で描き出す小説。
ヒステリックにほら見なさいよ、あなたってこんなよね、と突きつけるのではなくて、人の哀しみとして隣にただ佇んでくれるような。
沁みます。 -
何でしょう?
日常の少し嫌な、モヤモヤすることの集合体のような短編集でした。読後感は正直あまり良くはない。
ともすれば、日常に埋もれて流れていってしまうささくれのような出来事をこんなに拾って詳らかにできることがすごいと思う。
普段の生活にどれだけ気を配って生きていた方なのだろうと感じました。 -
トランプのカードの如く、無駄の無い巧みな描写の13の短編が収められている一冊。
改めて、向田邦子さんの文章の巧みさ、構成力に魅せられる。
どの作品も、人生の最盛期を越えた人々の描写が多く、人の弱さや、狡さ、図太さが何気ないさらりとした文章の中に、実は生々しく、かなり辛辣に描かれている。天才である。
飛行機が苦手であった著者は皮肉にも1981年の台湾での航空機事故に遭い、惜しいことにお亡くなりになられる。 -
何気ない日常のなかで目にしたり耳にした物事をきっかけに、ふと過去の記憶を無意識に手繰り寄せていることがある。色んな大人の「そういうこと」を丁寧に丁寧に描いた13の短編集。私は随分多くのことを忘れてしまっている気がするけど、自分の容れ物のどこかに、これまで記憶してきた色んなものが、散り散りになって置かれてる。そしてそれは大概、暗くてどろどろして痛々しいものが大半で、思い出すとしんどいから都合よく袋で何重にも包んじゃってる感じなんだろうなあ。と気づかされてつらい。その上包み方も雑だから、たまに漏れ出ちゃってつらい。そして袋は年々劣化していく。
すごい良い感想ですね (꒪̥︣ό꒪̥︣)
この感想を読んでいると、とても深みを感じます。
感想を何回も読み返してしまいまし...
すごい良い感想ですね (꒪̥︣ό꒪̥︣)
この感想を読んでいると、とても深みを感じます。
感想を何回も読み返してしまいました。
1980年の作品なんですね。
背信をもうけとめるなんて、どんな感じだろうかと、物語の世界観に触れた気がしました。
いつか私も読んでみて、その時代に触れて見たいと思いました。
いつもいいねありがとうございます。
コメントもありがとうございます。
短編なので、感想が抽象的でしたね。でも...
いつもいいねありがとうございます。
コメントもありがとうございます。
短編なので、感想が抽象的でしたね。でも、しっくり読みました。
シリーズを書き終わる前に直木賞が決まった作品とのことです。
私も向田さんの作品をもう少し読みたくなりました。
いつも返信ありがとうございます。
怖い本リストの中で、この本を紹介している方がいました。
人間が一番怖いというコメント付きで...
いつも返信ありがとうございます。
怖い本リストの中で、この本を紹介している方がいました。
人間が一番怖いというコメント付きで…
人によって捉え方が違ったり、
同じ人でもその時の状態によって受け止め方が違ったり、
いろいろあって、面白いですね。
気温差が激しい8月になっていますが、
お身体気をつけてお過ごしください ◠ ◡ ◠