信長燃ゆ(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.73
  • (23)
  • (35)
  • (44)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 278
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (481ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101305165

作品紹介・あらすじ

「天下布武」-武力を背景に世を変革してゆく信長は、天正九年、安土を中心に磐石の体制を築いていた。だが、巨大になりすぎた信長の力に、好誼を結んできた前関白・近衛前久らの公家も反感を持ち始める。武家と朝廷の対立に巻き込まれながら信長に惹かれる東宮夫人・勧修寺晴子、信長に骨髄の恨みを忍く忍者・風の甚助ら、多彩な人物をまじえ史料に埋もれた陰謀を描く本格歴史小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • イシュタルの娘にも出てきた近衛信基も登場する本作。
    読んでみると、文章に勢いはあるのだけれど、途中で眠くなってしまった。たわけの清麻呂が語り部だけれど、
    どうもその存在がかすんでしまうし、信長と晴子の仲もなんかなあ・・と。イシュタルでは晴子も堂々たる天皇の母となっているし。

  • ふむ

  • 読んだ本 信長燃ゆ 阿部龍太郎 20230422

     日経新聞の「ふりさけ見れば」を読んでいて、面白かったので買ってみました。正直新聞小説だと、前後のつながりとか登場人物がよくわかんなくなってきてしまうんですが、それを含めても、遣唐使を通じて唐や日本の王朝を描いた物語は魅力的でした。史実の上にかぶせる物語が、いいんでしょうね。
     ちなみに、織田信長の周辺の人物を題材にした小説って、織田信忠や松永久秀なんかを主人公にしても、結局その人の目を通した信長って話になっちゃって、主人公の人物像が見えてこないことが多いなって感じてました。信長以外の資料って当たり前だけど少ないからなんでしょうね。
     この「信長燃ゆ」は、信長が主人公(なのかな?近衛前久のような気もしますが)なのに、とにかく織田信長周辺の人の人物像がはっきりしてるのがいいです。史実に載せる物語がしっかりしてるってことなんだと思います。それでいて、神になろうとした織田信長の最新の説も取り入れたりしていて。
     しかし、歴史小説、時代小説って、結末がわかってるのに、なんでこんなに面白いんですかね。意識しないと、ずっと歴史小説ばかり読んじゃうんですよね。

  • 織田信長は何故殺されてしまったのか。
    朝廷を否定し、天皇を否定し、自らが神になろうとした男。数限り無い人々を殺戮。
    織田信長に対し、反感をもち、近衛前久が動き始める。

  • 実に面白かった。
    信長の大きな構想=合理化を進めて日本を世界に伍していける国に=と、近衛前久の保守主義=あくまで天皇を中心に先例重視を=との対立は実に説得力があるし、だからこそやはり、信長は一代でしかあり得なかった(本能寺の変がなくとも、信長の路線は続かなかった)と納得がいく。簡潔な文章も魅力的。歴史小説なのに、とても現代的なものとして、非常に近いものとして感じられた。名品。

  • 下巻参照

  • 全体の評価は下巻読了後。

  • 2020年、20冊目です。

  • 時代を短く、鮮明なキャラ立てて描いています

  • 評価は下巻を読んでから

  • 織田信長は本能寺の変で亡くなりましたが、この本は、その時に仕えていた小姓で生き延びることができた唯一の小姓の立場で書かれた本です。

    二分冊の上巻では、武田氏(武田勝頼)が滅亡する直前までの出来事が書かれています。中心人物は、この本の筆者の考えである、本能寺の変の黒幕は、その当時の朝廷の中心人物・近衛前久なので、彼と交際の深い武将が登場してきます。

    その一人が織田信長の長男である、織田信忠で、この本を読むまでは、織田信忠とは、本能寺の変に巻き込まれて亡くなった不運な人、というイメージしかありませんでしたが、彼も偉大な父を持った二代目の苦悩を抱えていた様子が伝わってきました。二代目の苦悩をしてきた人に、武田家・豊臣家・今川家を滅亡・衰退させてしまった例がありますが、この本では織田信忠の気持ちがよく表現されていて、彼の認識を新たにしました。

    また、織田信長の小姓として、黒人がいたというのは知っていましたが、彼の経歴(アフリカの一国の王家の血筋を引く)も初めて知りました。筆者の研究成果を、小説の形でよめる楽しい本です。

    以下は気になったポイントです。

    ・信長公の墓所といえば、大徳寺の「そう見院」や移築された「本能寺」にあると信じている人が多いようだが、阿弥陀寺こそ真の墓所である(p11)

    ・朝廷の権威を乗り越えようとした者(日本国王を名乗った)は、足利義満公のみである(p72)

    ・覆面とは、単に顔を隠すためのものではない、人がこの世ならざる者に成り変わろうとする時に身にまとう(p77)

    ・吉田神社は、藤原氏の氏神である春日大社の神々を勧請したもので、近衛家とのつながりも深い(p119)

    ・四国統一を目指す長曾我部に対して、阿波・淡路の旧主である三好康長が信長の力を借りて対抗しようとしたので、秀吉を頼り、長曾我部は光秀を頼った(p220)

    ・ポルトガル人が要塞を、モザンビーク・ゴアに創った狙いは、金・奴隷・香辛料であった、ポルトガル人は東アフリカで奪い取った金と奴隷をインドの香辛料と交換して、アラビア・欧州で売りさばいて利益を得た(p248)

    ・武士は刀で人を斬るが、公家は策を用いて人を斬る、それゆえ油断なく周囲に目を光らせ、周到な根回しをしてから公に臨む(p269)

    ・信長包囲網は足利義昭と言われるが、29歳まで仏門にいた、にわか将軍には無理。19歳で関白就任以来、ありとあらゆる勢力との連係を図ってきた前久が勅命をちらつかせながら根回したからこそである(p277)

    ・信長は神道の欺瞞、あいまいさ、仏僧どもの堕落しきった生活ぶりを許しがたく思っていたので、キリスト教を保護することでそうした勢力に脅威を与えようとした(p330)

    ・征服された国の民は、氏神をおとしめられ、言葉と文化と歴史を奪われ、奴隷として服従することを強いられた。こうした渦中に、神武天皇にひきいられた朝廷軍が参入した(p427)

    ・言葉も種族もことなる者たちを、どうしたらひとつにまとめ上げることができるかを考えたあげく、天照大御神より豊葦原の瑞穂の国を治めよと命じられて天下ったという神話の創出、その神話と史実を結びつけるための、古事記・日本書紀を編纂した。各種族をまとめ上げるために、彼らが奉じる氏神を天照大御神を中心として序列、神々の体系づけを行った(p428)

    ・豊臣秀吉は関白、徳川家康は征夷大将軍となり、死後に朝廷が作り上げた神々の序列に従って、豊国大明神、東照大権現となった(p429)

    ・朝廷が衰微して令が諸国に達しなくなると、陰陽寮(賀茂氏)で作った暦も都の周辺でしか用いられなくなった、伊勢暦・尾張暦・三島暦などがあった(p467)

    2018年9月2日作成

  • 本能寺の変を朝廷の陰謀として描いた歴史小説。語り部は、近衛家の門流ながら信長に小姓として近侍していたたわけの清麿。変から三十五年後、徳川の治世が安定期に入った頃、さるやんごとなきお方からの依頼で執筆を始めたという設定。前編は、天正九年元日から天正十年一月二十九日、暦についての論争が行われた日まで。朝廷の上にたって国を治めようと、あの手この手で朝廷を圧迫する信長に対して、防戦一方の五摂家筆頭、太閤近衛前久。慣習には一切とらわれない、気持ちいい位の合理主義者信長が時おり見せる狂気。東宮夫人の勧修寺晴子と信長の色恋。とても面白い。

  • 信長の生涯

  • この作者の本は三冊目だけれど、初めておもしろかった。

    天下人に最も近く、いつも力強く、自分を信じて自信を持って歩み続けたように思える信長を、葛藤を乗り越えて逃げずに踏みとどまった寂しい人物として描きだしているのが印象的。
    真面目で、意外に心遣いを示したエピソードも残した信長が確かに、葛藤しないはずがない。考えればわかるはずなのに、つい見逃しがちなこと。人間は一面だけではない。父のやり方に疑問を感じる信忠が、自分も責任を負った時に、その重責に息苦しく感じているのを見抜いた父信長に慕う気持ちを感じた時に、気付かされた。

    そして、その信長と恋仲になる晴子。この時代に、子供を産み、閨閥を作ることだけを目的とされることに、信長と出会う事で疑問を感じだし、自分らしく生きる道を模索しだす。
    この気持ちもすごく共感できるし、本能寺の変の企てに気付き、信長を救おうと必至になるけなげさも共感できる。私も、晴子と一緒に、信長にときめきました。

    面白いと思ったのは、信長が、公家を集めて所蔵の茶の湯の道具を入札制にするのだけれど、それぞれの公家が勝手に気を使い合って、自分の官位にふさわしいものを要望する様子にがっかりしてしまうシーン。信長が当時、いかにいろいろなしがらみから心が自由であったか、そして公家がいかに縛られている生き物かが顕著に現われている。信長の失望を思うと、一人相撲をとっている様な気持ちがしたであろうし、同情を感じる。

  • 信長と近衛前久ら朝廷との確執を描く。本能寺の変に至るまでの謎は今も不明なことばかり。色々な説があるが、朝廷関与説が個人的には近いかな、と想像しているところ。作家や研究家のさまざまな説と読み比べるのが楽しみでもある。阿弥陀寺をいつか訪れたい。

  • 本能寺の変、その黒幕はいったい誰なのか。
    諸説あるなかでも、著者なりの仮説があり、
    それに則ったうえで、物語が構築されている。

    それにしても、近衛前久、とても格好よい。

  • 朝廷の陰謀を背景に信長の苦悩を描き出す。
    信長に苦悩という言葉は似合わない感じだが、革命者であるゆえその言葉の重みは違うのかもしれない。

  • 2015大河の原作(上)。本能寺の変の謎解きものではあるが、主要人物に近衛前久や勧修寺晴子といった朝廷側の人間が登場し、武家と朝廷の対立とそれぞれの思惑が見てとれて新鮮。

  • 本能寺の変近辺の朝廷との暗闘。
    真剣が故の自己正義、ビジョンの肥大化をする信長。次巻楽しみ。

  • 「神々に告ぐ」「関ヶ原連判状」との戦国三部作の第2作で、織田信長の本能寺の変について書いています。

    この本では、信長の小姓だった「たわけの清麿」が江戸時代になって本能寺の変の謀略について振り返る、という形で本能寺の変の1年前から本能寺の変までを描いています。

    本能寺の変は「朝廷陰謀説」を採用し、というか、もろに陰謀って感じで、ちょっと信長がかわいそうになりました。

    ↓ ブログにも書いています。
    http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_438d.html

全36件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

作家。1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』(新潮社)で単行本デビュー。『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『下天を謀る』(いずれも新潮社)、『信長燃ゆ』(日本経済新聞社)、『レオン氏郷』(PHP研究所)、『おんなの城』(文藝春秋)等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』(新潮社)で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』(日本経済新聞社)で直木賞を受賞。

「2023年 『司馬遼太郎『覇王の家』 2023年8月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安部龍太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×