錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307022

感想・レビュー・書評

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  • 2度目の読了。

    " だって、あなたは過去にこだわるあまり、「今」ということをお忘れになっていらっしゃるような気がするのでございます。かつて父が言った言葉が、甦ってまいります。「人間は変わって行く。時々刻々と変わって行く不思議な生き物だ」。父のいうとおりです。「今」のあなたの生き方が、未来のあなたを再び大きく変えることになるに違いありません。過去なんて、もうどうしようもない、過ぎ去った事柄にしか過ぎません。でも厳然と過去は生きていて、今日の自分を作っている。けれども、過去と未来の間に「今」というものが介在していることを、私もあなたも、すっかり気がつかずにいたような気がしてなりません。"

    過去を綴り合い、「今」を見つめ合い、そしてそれぞれ別の未来があることに気づく、元夫婦の再生の物語。「過去」にとらわれるあまり、「今」の変化を受け入れられない、または、未来の可能性を捉えられないのは、ここ最近の私にも当てはまることかもしれません。私の時も、学部生で止まっているから...

    「今」を生きる。未来を創る。「みず」「みち」「みらい」... 時はとめどなく流れていくのだという言葉たちが、今の私の心深くにも、すっと染み入ってきました。
    (Aug. 7th 2020)

  • 私のなかでは最高の恋愛小説。
    書簡形式は、心を最も伝える手法だと思う。
    ラストに心震えた。


  • 手記を用いた手法は好みが分かれるが、著者の作品を語る上では欠かせない一作。

  • たまに無性に読みたくなる本。
    私の中では最も好きな小説のひとつです。

  • 高校生のときに、国語の先生に薦められて読みました。
    こんな美しい小説があるのかと思いました。
    男女の往復書簡によって、物語が綴られていきます。音楽のような、美しい織物のような小説です。

    目の前が見えなくなったとき、人生が苦しいと思ったとき、大切に読み返します。

  • 相手の過去、現在、未来を憂い、その背中を押してあげることも1つの愛の形だと思った。
    即時的で短文なコミュニケーション手段が普及した現代では、言葉を相手に届けることの意味やその言葉を深く考えることによって自分と向き合うことが少なくって来ていると思う。

  • 読み終わった後、何とも言えない寂しい気持ちになりました。過ぎてみれば、あの時のあの自分の行動や判断が人生の岐路だったりするんですよね。人生まだそんなに生きてないですが、今までしてきた自分の行動や判断を悔やむことはよくあります。だけども、そんな失敗や誤った判断があってこそ、今の自分があるし、成長できることもたくさんありますもんね。本当に人生って、そういうもの、、それを改めて感じた作品でした。

  • 文章が美しくさらさらと流れるように読み進められる作品だった。
    生きること、生きていくこと、人間の業というものそういった根源的なことを考えさせる内容だけど、主人公亜紀と別れた夫有馬のどちらにも寄り添えなかったため心に響いてこなかった。
    「愛し合っていたけど別れざるをえなかった二人」という設定だけど、有馬は心中事件をおこして離婚した後は身を持ち崩し、今もヒモのような生活をしながら借金をこしらえるなど、きわめて不誠実で、本当に亜紀を愛していたのかさえも疑問に思う。
    亜紀も自分が悲劇のヒロインのように、夫の勝沼が浮気をしている姿を見て「低俗で不潔」と切り捨てるが、有馬への思いを断ちきれないまま勝沼と結婚し、彼を愛する努力もしていない彼女も、不誠実という点では同じと思えて仕方がない。
    そして、何より嫌な気持ちにさせるのが、障害を持った息子清高にまつわる描写である。
    亜紀のあまりに身勝手で、自分かわいさの描写の数々に、彼女に対する嫌悪が次第に強まり、もう、最後がどのように明るい展望で終わろうとも、彼女の自己憐敏に溢れた書簡に寄り添うことはできなかった。
    この作品は色々な人から絶賛され、涙を流す人も多いらしいので、つくづく私は、恋愛体質じゃないんだろうな~と思ったりもしながら、再読することはないだろうと思う。

  • 好きな本。

    心に残る。

  • 若き頃に読んで 涙した本。
    蔵王という景色が 目に浮かぶほどの人間模様。
    心のひだにはいる言葉の積み重ねとやり取り。
    手紙って こんな風に書くのだと感心した一作。

    老境に入り 再度読んでみた。
    離婚をして 10年経った段階で、
    偶然会うことになり 手紙を書きたくなった。
    そして,離婚当時は 質問できなかったことを
    素直に聞くことで 物語は始まる。

    はじめは かたくなな態度を示していた わかれた夫も、
    少しづつ,溶け始め、
    現在の 令子との生活の充実感をかたる。

    読み終わった段階で、二人の思考方法がよく似ている。
    気遣いの言葉が 類似しているような気もする。
    別れても,好きな人 という 歌があったね。

    『生きていることと、死んでいることとは、
    もしかしたら同じことかもしれへん。』
    という 諦観が 底流に流れながら、
    けなげに 生きようとする 姿が 浮き彫りとなる。

    宮本輝の作品では やはり一番押しの作品ですね。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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