恋の聖地: そこは、最後の恋に出会う場所。 (新潮文庫 し 21-5)
- 新潮社 (2013年5月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101332543
感想・レビュー・書評
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最後の恋に出会う場所というサブタイトルから、べた甘の話を想像していたけれど、切ない話が多く、最後に一筋の明かりがともるような感じのものが多かった。三浦しをんさんと窪美澄さん、大沼紀子さんの作品がよかった。
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恋の聖地にまつわる短編が、それぞれ女性作家の筆によって綴られる。
全体的に読後感は悪くなく、切なくも未来を期待させるものが多い。
切なくも。
それが今回のキーワードだ。
聖地というからには場所であるが、その場所に向かうのには必ず訳がついてまわる。
その理由は、多くが聖地が故郷というものだ。
都会でいろいろとあって疲れ、故郷にちょっと帰ってみた先で出会う、初恋の人の残していったものであったり、幼馴染みだったり、不思議体験の女神そっくりな人だったり、片想いされていた相手だったり、祖母の亡くなった夫であったりするのだ。
故郷と結びついていないのは、相手が思い入れのある場所に初遠出で連れていかれた場所と、恋人の面影を探して旅歩いてたまたま行った場所の二編くらいか。
故郷はすでに人間関係が出来上がっているから、ミラクルな出会いを並べ立てなくても自然と最後の恋に出会えさせやすかったのだろう。
自分の心が傷ついているとき、弱まっているときは、現状を打破したいと思う気持ちも強い。
その前向きな気持ちがあるからこそ、今まで見向きもしなかった場所、遠ざかっていた場所に帰ることで、改めてその場所のよさを認識でき、今まで見向きもしなかった人物や心に封じてきた人のよさをも再認識することができたのだろう。
傷ついているのはなにも主人公だけではない。
出会う相手にもなにか一筋縄ではいかない事情を背景に持っている。
だからこそ、弱っている主人公に共感して支えの手を差しのべることができたのだろう。
一冊通して強烈に目に焼き付いているのは、千早茜の「しらかんば」の山の白樺林と朝の冷たく湿った白い靄の風景である。
登場人物もお相手が大層強烈だ。
それから三浦しをんの「聖域の火」は、クライマックスがファンタジーでできていて、どうせ三喜と将来的に仲良くなるのだろうと思っていたら、どうもそうではないらしい。
要のシーンでは、それまでが現実的な描写だっただけに、ファンタジーのような再会は若干違和感を感じるものでもあった。
要は三喜の正体が気になっているのだが、明確な答えを知れる日はなさそうである。
総合して読みやすく、短いながらもそれぞれらしさを発揮した力作揃いといえるだろう。 -
日本各地にある、恋人の聖地を舞台にした、七人の作家さんによる恋愛アンソロジー。
千早茜さん目当てで買ったのですが、三浦しをんさんの『聖域の火』が一番好みでした。
勿論、それぞれ面白いんですけれども。
・・・実は、私があまり好きではない某作家さんの話は、面白い事は面白いんだけれど、やはり、例によって、どこがどうとうまく言えないんだけれども、微妙にいらっとしました・・・。 -
タイトルはイマドキな行間ばっかりのレンアイ小説を連想させますが、全然違う。土地の情景描写も素晴らしく、脳内スクリーンに鮮明に映る。恋の聖地を舞台にしつつ、描かれるのは恋の周辺。でも周辺と思わせておいて実は本質なのかも。三浦しをんさんのがやっぱりよかったな。宮島また行きたいぞ。
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全てが甘いラブストーリーではないし、結ばれるわけでもないけれど、恋の予感や、明るい未来が見える作品が集められていた。
亡き人への恋心が1番好きだった -
2020.6.4~6.12
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うんと前に読み切れず返したものを、再度借りてみました。
著名な女性作家たちが、日本全国の100か所以上に選定されている「恋人の聖地プロジェクト」の地を舞台に自由に描いた作品集です。
どの短編も甘い恋愛ではなく、過去に傷を負った女性たちが少しずつ前進していくような心に沁みる恋物語でした。
特にしをんさんの『聖域の火』(広島県宮島)は切なくて泣けてしまった。
過去の失った恋を引きずって時間を浪費するのは勿体ない。でもその無駄にも思える時間にだってきっと意味はある。
次のターンではきっと幸せになれる。 -
女性作家7名による短編集。キーワードは恋の聖地。どれも正統派の恋愛小説というわけではない、不思議な心の触れ合い、恋の予感のようなものという感じ。原田マハ「幸福駅」は北海道・幸福に来た男性への家族の思い。三浦しをん「西域の火」は広島・宮島弥山。適齢期を過ぎた年齢の独身女性は著者たちを思わせる。どれもが、寂しさをどこか抱えつつも、男性の優しさに触れるような物語り集。千早茜「しらかんば」は長野・八千穂高原で出会ったトッポイ女の子に少しずつ惹かれていく主人公が印象的だったし、瀧羽麻子「トキちゃん」は阿蘇山を祖母と旅行し、祖母の若い日の恋を知る孫の男の子が興味深い。しかし、副題とはいずれも違う内容だったが…。その前触れか?
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「恋の聖地」をキーワードに7人の作家さんが紡ぐ
さまざまな恋の形
ほんの行きずりのような想いだったり
ふんわりした予感だったり
亡くなった人へのココロだったり
それぞれの世界観に惹かれます
ベタベタな恋愛ものじゃないところがいいかも。