本格小説(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338149

感想・レビュー・書評

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  • とにかく素晴らしい小説で読んで良かったと思えた。オススメ。

  • 内容を忘れた頃に読み返しますが、いつも物語の展開に引き込まれます。
    ところどころ写真が挿絵のように入って、ドキュメンタリー風なのがちょっと風変わりです。文章も淡々と登場人物たちの波瀾万丈な人生を綴っていくのです。
    歴史小説好きの連れ合いもかなり面白かったと言っておりました。

  • よかった

  • すごいタイトルだと思って、気になっていた本。
    ・本編が始まるまでに200P以上も不要ではないか
    ・中途半端な実写の写真を挿れる必要はないのではないか
    ・私小説でも本格小説でもないのではないか
    とか思いながらも面白かった。

  • 『本格小説』は、嵐が丘のオマージュというからにはやっぱり語り手が女中さんだったというか、そのひとが主人公のような小説であった。

     タイトルが日本近代文学『本格小説』とちょっと仰々しいけど、おもしろく読める。戦後から昭和の時代、平成に入ったところを背景に、突き抜けた人物達が織り成すドラマはわたしたちがたどった時代を振り返らせてくれ懐かしく、また歴史風俗の変遷を思う。

     この小説では戦後もすぐ、集団就職の時代にお手伝いさんと呼び名が変わったにもかかわらず女中になってしまったひとと、零落しつつもそのことに執着した家族と、貧しさから這い上がらなければならなかった青年のとの三つ巴のドラマがすさまじい。

     その女中さんで思い出すことがある。

     わたしが結婚してからだから、姑50代なかばわたし20代のころのこと。姑がよく「おちぶれた」が口癖にしていたが、もうひとつわたしはふに落ちなかった。

     義母は父親がある県の名家の医者、広い敷地に大きなお屋敷、人手がたくさんのお嬢様、女学校を卒業してからも専門学校へいったそうな、つまり今の女子大卒と同じ。その後、行儀見習いとして行った先は華族のお屋敷。結婚しても女中さんが居た子育てだったという話をたくさん聞かされた。

     ところが夫が39歳で早死にしてしまい、そのころ戦争も始まって実家に疎開するのだが、女中さんにもひまをだして、苦労の連続になってしまったのが気の毒だったのだった。

     それから十数年、戦後の日本を皆と同じように大変な生き方をしただろうに、何かにつけて「おちぶれた」というのが、わたしにはわからない。「何をご大層な」とむしろ反感さえ持った。だって仕方がないじゃない、日本中が民主主義だの平等主義だのになってしまったのだから。

     わたしなどは何もないのが普通、女中さんが(お手伝いさんが)居たら居心地悪いものと思うけども、母に聞けばやはり居たという。母が結婚してわたしが生まれた時、妹が生まれた時実家から来てもらったという。

     わたしの「おちぶれた」という言葉への違和感は、何もなかった時代の子として幸いにしてその怨念のようなものを、味わわなくて済んだということだと思うとありがたい。

     良かった時代に執着したり、上昇志向に執着したりそれが活力になればいいのかもしれないが、時代とのずれがあると摩擦がおこるものだ。

     しかしわたしがよる年波でいまはお手伝いさんが欲しいよ~。というのも本音(笑)

  • 心震える恋愛小説か怪談話を読みたいと、10年の積ん読を経て人を食ったようなタイトルの恋愛大河小説を読んで心震わす。後にNYの大富豪になった満洲引き揚げ者の貧しい少年東太郎と裕福な隣家の娘よう子の幼い恋心から始まる幸福と悲劇、そして一族の栄枯盛衰が昭和の軽井沢を舞台に何十年にも渡り繰り広げられる。一人ひとりの行動の積み重ねが人の心に影響を与え、その結果がまた人それぞれに違う意味を持つ。それぞれが自分の居場所を探す話であり誰が幸せで誰が不幸せだったのかさえつかみきれぬまま恋愛の大河に呑み込まれる。今の日本はある人には良くなりある人には悪くなった。40年前の軽井沢ってこうだったよね、などと思いながら。

  • 上下巻とかなりのボリュームを頑張って読み進めると、最後の最後に大どんでん返しがあり読後感は面白かった…が、正直年配の女性が延々話してることをそのまま記述してあるような小説のため、やや読むのに骨が折れた。

  • 下巻に入って面白くなった。時代に翻弄される、というのはこういう感じなのか。
    最後、冬絵の「愛されないというのはとても不幸なことだと思う。」という一言がすごく響いて痛かった。

  • この作者の第一作が『続・明暗』であるうえこの題名
    手をつけるのにかなりの読書意欲を必要としたので買って2年も寝かせたが
    意外にとても読みやすかった
    題材からの連想でサマセット・モーム「平明な文体と巧妙な筋書き」みたいな感じかしらん
    物語の面白さで読み始めたら止まらない内容

    題名の「本格小説」は作中の作者から説明あるように「小説のような話」を指して
    小説である以上は作者の知ることの中で書かれているから(広義の)「私小説」であり
    では「私小説」でない「小説のような話」はどうなるか
    みたいな感じらしい
    なるほど
    そういうわけで『嵐が丘』を戦後日本へ置き換えたような筋書きを
    作中の作者を複数の話し手と聞き手の中に織り交ぜ
    山場がいくつもある多重ミステリのような仕掛け
    内容分類てきには「昭和日本のお金持ちと使用人」な「時代」を生きたひとたちの記録
    みたいな感じか
    「ミステリ」の舞台が現代日本か19世紀イギリスかでの分類のように
    この作品には意味のない分け方だけれども

    そもそも『嵐が丘』自体読んだのがわりと昔な上に
    まず「がらかめ」の絵が載って
    さらにクリスティのミステリでないのとか
    『秘密の花園』とかダイアナ・ウィン・ジョーンズとか
    極めつけに「あんざろ」で上書きされてよくわからないことになっていて
    そういうエンタメな味わいと比較してしまうわけだが
    さすがに最初の作品に『続・明暗』持ってきて評価されている作者だけに
    どんな方向からのつっつきに綿密な構成で答えて
    『虚無への供物』みたいな積み上げっぷり

    そういうわけでどこで満足して本置いたらよいかわからない
    細部まで抜かりなく豪勢な作品だが
    そういうどこまでも閉じてない感じが
    「私小説」でないふうなところなのか

    「小説のような話」には「私」たる主人公がなく
    といって(社会(人間関係)が主人公の)群像劇というわけでもなく
    時代のふんいきというのも『嵐が丘』と対比するまでもなく舞台だてなのだし
    結局「小説のような話」というのは
    「巧妙な筋立てによるお話の面白さというもの」というところへ
    行き着くものなのかもしれない

  • 2005-11-00

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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