本格小説(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338149

感想・レビュー・書評

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  • 水村版「嵐が丘」の下巻。

    本編のストーリーに関して言えば、正直なところ私は白けた目で見てしまっていてどうにも入り込めなかった。
    見た目も性根も大して美しくない(失礼な言いぐさだけど本当にそういう設定なので仕方ない)女性に対して、とてつもなくレベルの高い男2人(しかも、片やどこまでも優しい生粋のお坊ちゃま、かたや己の実力だけで成り上がったワイルドな青年…だなんて、今どき少女マンガにも登場しなさそうな完璧度合)が共に心を寄せて、しかもその3人の不思議な不倫関係は一層の仲の良さで保たれる…とか…一部の女性の理想かもしれないけれど、私には現実感が無くてイマイチ乗り切れなかった。

    ただ、最後の最後に舞台を現代に戻した時、このストーリーに一つとてつもない隠し事があったことが明らかにされる。
    そのことに関しては私は全く思い至らなかったので、ここは作者の鮮やかな手口にまんまと騙されてしまった。
    読み終わってから考えてみると、「本格小説の始まる前の長い長い話」は、「今から始まる話には一切の隠し事もウラも存在しませんよ」という暗示をかける効果があったということか。

  • 上巻に記載

  • 軽井沢のお屋敷や家の描写が美しい

  • 下巻も前半は典雅な展開が続くが、よう子と太郎の恋愛が隠せなくなってきてから、話も激しく動くようになる。また、語り部である女中のフミ子が、次第に存在感を増し、それが「信頼できない語り手」となる様は、本家の嵐が丘と比べても見劣りしないレベルだ。

    総じて見ればよくできた小説だが、改めて「嵐が丘」という150年以上前に書かれた小説の凄みを感じさせるものでもあった。

  • 息もつかせない展開、本当に面白かった。面白い小説って本当の実話だと思っちゃうよね。

  • すでにだいぶ前によんでブックオフ行き。
    オリンパスが騒がれているので、この本のことを思い出した。
    太郎ちゃん、大変なことになってますよ(笑)

  • ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちになった伝説の男の数十年にも及ぶ悲恋の物語。
    愛するということに切なくてやりきれない気持ちになります。

    読後も余韻の残る物語でした。所々に差し挟まれた写真が想像力を一層広げてくれます。

  • 軽井沢などを舞台とした作品です。

  • 戦後からバブル崩壊後の日本を背景に、よう子と車夫の甥の甥の孤児、東太郎の関係を中心にした、日本版『嵐が丘』。大人になり再会した太郎とよう子とその夫の雅之の不思議な関係が読んでいて不可解に思えたのは語り手の女中、土屋富美子自身が理解に苦しむのと、その関係を嫉妬していたからなのか。日本の多くの小説家が西洋の小説にある話を自分の言葉で書いてみたいという欲望と19世紀西洋小説を小説の規範とする「本格小説」を日本語で書くという事に挑戦した小説。ヒースクリフは訳のせいもあって全然魅力的ではなかったが東太郎は格好いい。携帯の電源を切って一気読みして下さい。

  • まさに日本の「嵐が丘」3つのストーリーが複雑に展開し、1つにまとまる。複雑だがそれを感じさせない。それぞれの登場人物の深い思いが読者に伝わる。1世代前の日本語の美しさを思い出させてくれた。

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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