つめたいよるに (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339139

感想・レビュー・書評

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  •  ぽんと物語だけを差し出して、あとは読者にまかせる。そのあっさりとした書き方が、なんとも言えない味わいを出していると思いました。短い文章の中に漂うせつなさがとても優しく、温かい小説でした。短編小説が21編、収録されています。

    • kuroayameさん
      短編小説が21編とのことで、とても読みやすい本という雰囲気がレビューから伝わってきました♪。
      いつも素敵な本のご紹介をいただきありがとうご...
      短編小説が21編とのことで、とても読みやすい本という雰囲気がレビューから伝わってきました♪。
      いつも素敵な本のご紹介をいただきありがとうございます♥。
      2012/12/20
  • 2012/11/30読了

    教授オススメの短編「デューク」を収録。
    21の短編があり、ひとつひとつがスッキリと読めるショートショート。
    心に響くものも、流れるようにおわる物語もある。
    書けるだけ感想をば。

    ・デューク
    涙と、甘い愛のやわらかな物語。
    あの教授をうならせただけあります。素敵な、ジェームス・ディーン
    ・夏の少し前
    不思議な感覚になった。人生はきっとこういうものなのかな
    ・僕はジャングルに住みたい
    小学生男子ってきっとこんなの
    ・桃子
    恋は、人を、狂わせる。
    ・草之丞の話
    お気に入りその1。
    注目すべきは、母の彼に対する愛情。
    ・鬼ばばあ
    幼いときは、こういうことが大きく感じるのよね
    ・夜の子どもたち
    お気に入りその2。やんちゃな大人好きだ
    オチが秀逸。
    ・いつか、ずっと昔
    輪廻転生。もしかしたら私も、いつかずっと昔には…。
    いつでも愛してくれる誰かが側にいてほしい。
    ・スイート・ラバーズ
    お気に入りその3
    死は全て悲しみに繋がるのではない。
    チャーミングなおじいさん、そしておばあさん
    ・朱塗りの三段重
    今の世の中ってこうなんでしょうね、愛が変なの。
    ・ラプンツェルたち
    だって女ってワガママよ
    ・子どもたちの晩餐
    幼心に分かるあの気持ち、毒って甘いの
    ・晴れた空の下で
    春の穏やかな日々と、隣にいるのはいつも愛する妻。
    ・さくらんぼパイ
    何せ大人は自分の都合で動く生き物だから
    ・藤島さんの来る日
    ネコよ、主を大事に
    ・緑色のギンガムクロス
    なんだかなー
    ・南が原団地A号棟
    先生の評価が知りたい。
    ・ねぎを刻む
    痛いくらいに気持ちが分かる
    ・コスモスの咲く庭
    おとんよ強くあれ
    ・冬の日、防衛庁にて
    強い人にはかなわない
    ・とくべつな早朝
    お気に入りその4、最後に相応しい一篇。
    この二人が可愛すぎる!!!!!

  • 一番好きだったのは、『ネギを刻む』
    だけどどれも優しくて暖かい物語ばかりだった
    描写が懐かしくてわかりやすいものばかりで、スラスラと読めた。少しふわりとしているから人によってはいろんな想像ができるんじゃないかな、私は作者の描きたかったことを全て理解できてるかなと思ったり。多くの言葉ではなく少ない言葉を使ってあんな素敵なお話書けるのはすごいな、と思った。私は多くの言葉を使いがちになるから少ない言葉で表現してみるのも学んでみたい
    他の本も読んでみたい

  • 江國香織さんの短編集。
    現代童話というべきか、とても不思議なお話が続く短編集。
    お話は、自由自在に形を変えていくので非現実的である。
    それでいて、細かいディテールは現実的なのが凄いところである。
    個人的には「草之丞の話」と「夜の子どもたち」が良かった。
    文庫本の川本三郎さんの解説も良かった。

  • 不朽の名作。
    「デューク」に始まり、草の丞の話など、この作者を好きになった素敵な小説短編集。

  • 「デューク」を現代文の授業で読んでからちょうど1年振りぐらいに読んだけどやっぱりめちゃくちゃ良い。読んでいると勝手にbacknumberの「クリスマスソング」が頭の中で流れます。
    他は「夜の子どもたち」「藤島さんの来る日」「南ケ原団地A号棟」「とくべつな早朝」が特にお気に入り。文章がとっても好みだったから、他の作品も読みたいなー

  • 小学生のときに母から借り、5回以上は読んだ本。
    なので内容は、ほとんど覚えている。

    …わけなんだが、子どものときに思ってたことと今とではやっぱり感じることが違う。

    年齢が移ろう度に様々な気持ちを引き出してくれる。
    だから読書は楽しい。だから読書はやめられない。

    以下、わたしの好きな短編集たち。

    『デューク』
    言わずと知れた名作。江國さんといったらこの作品。
    国語の教科書にも載ってたなぁ。
    “マジックアワー“という言葉をこの作品で初めて知った。

    『ラプンツェルたち』
    女子学生のワチャワチャ感が堪らない。
    自由奔放、点でバラバラな彼女たちだが不思議と仲の良さが伝わってくる。


    『子供たちの晩餐』
    子どもって時々とっても狡猾になるよね。
    ”スリルと罪悪感““胸の中で、梅ジャムとシュークリームがまざりあう”
    そんな表現されたら、嫌でもこちらもワクワクしちゃうじゃんか。

    『晴れた空の下で』
    若かれし頃を思い出し張り切っちゃうお父さんがかわいい。
    ここぞという時に「あーあ…」となっちゃうところもかわいい。かわいい通り越して愛おしい。

    『ねぎを刻む』
    孤独に苛まれ、ぐちゃぐちゃになりながらも自力で抜け出し立ち直る力をもっている女性ってタフだよね。


    『とくべつな早朝』
    “ピュア”という言葉がぴったりなんじゃないか。思わず微笑んでしまう。

  • 江國香織さんの短編は小粒でも魅惑的で美味しい高級チョコレート菓子を口にしたときのような満足感が味わえますね。不思議で、だけどどこか懐かしくて、切なくて、嬉しくて、寂しくて、暖かくて…ほんとうに一つ一つの物語が人生の悲喜こもごものいろんな瞬間を、命の儚さと尊さを味あわせてくれてとてもよかったです。うまい!と思わずうなってしまいました。「デューク」「子供たちの晩餐」「南ケ原団地A号棟」が特に大好き。クリスマスシーズンの今だからか1番最後の「とくべつな早朝」もとてもよかったです。図書館で借りて読んだのですが、手元に置きたい一冊になりました。

  • 作品に表情があるなら、
    泣きそうに眉の下がった笑い顔のように感じた。
    淡く澄んだ短編集。

    どの話も10分足らずで読めるけど
    優しさと切なさに溢れていて、
    短いからこそ儚くて、すごい好き。

    デューク、鬼ばばあ、晴れた空の下で、
    藤島さんの来る日、とくべつな早朝あたりが
    特別好き。
    どれもよくてあまり絞れません。
    あえてひとつ選ぶなら、悩んで悩んで
    晴れた空の下で、かなあ。

    最初「わしら」で始まる一文が、
    最後主語だけ変わって繰り返されるのが
    切なすぎる。
    おじいさんは
    いうなればボケてしまっているんだけど、
    おばあさんとの幻想のひとときはあたたかい。
    この対比が悲しさを増すんだけど、
    たとえ幻想でも、あたたかなひとときに
    救いを見てもいいだろうか。
    彼らが時にこんな幸せを過ごしていることを、
    喜んでもいいだろうか。

    ひとみしりだからか、
    短編って登場人物を好きになりきれず、
    いつも好きになりそうな予感くらいで
    物語が終わってしまうので
    あまり得意ではなかったんだけど、
    この本はすごく良かった。

    なんでだろう、きっと描かれる感情が
    読者にとっても身に覚えがあるから、
    冗長な説明が要らないのかもしれない。
    そのうえこんなにもきれいな言葉で
    上品に語られるから、自分の過去の似た気持ちまで
    綺麗で尊いものに昇華されるようなかんじが
    するのかもしれない。

    解説の、
    “好きなものをたくさん持っている人ほど、
    悲しみもふえる”という言葉が刺さった。
    この作品の泣き笑いみたいな印象は
    きっとそこからきているんだろう。

    失う悲しみが必ず来るとしても、
    誰かを、何かを好きになる
    ひたむきさ、したたかさがある。
    ドタバタしたり声高に叫んだりしないけど
    幸せと悲しみの大波を享受する姿は
    生きている、と感じる。

  • 21この短いお話が収録されています。

    特に私がすきだったのは、『デューク』、『草之丞の話』、『ねぎを刻む』の3つです。

    『デューク』では、21歳の主人公が愛犬デュークを亡くし、悲しみに暮れているシーンから始まります。そんな中で主人公はその日ハンサムな男の子と出会い、1日お互いの好きな場所を訪れては楽しみます。「今までずっと、僕はたのしかったよ」と、さらっと始まりあっさり引いていくラストが素敵です。

    『草之丞の話』草之丞とは主人公の父親なのですが、なんと侍の幽霊らしいのです。やっぱりこわいか、とぼそっと言い、ひっそり笑ったり、クリスマスに(主人公にとっての)おふくろとワルツを踊ります。「おふくろ」は幽霊である彼を普通に受け入れて、天真爛漫で、とっても純粋なのが読んでいて伝わります。読んでいてこの夫婦はかわいいなあって思いました。お話中の独特な雰囲気がすきです。

    『ねぎを刻む』このお話は5ページしかないのですが、そのうちの3ページをまるまるここに載せたいほどすきです。以下、本文より。

    誰にも、天地神明にかけて誰にも、他人の孤独は救えない。

    たとえば、私が恭二をもっと滅茶苦茶に、心底、もう死にそうに愛していれば問題はないのだ。(中略)恭二はいい奴なのに、どうして滅茶苦茶に愛せないんだろう。どうして今すぐ会って一緒にごはんを食べたくならないんだろう。どうして、二人の方が孤独が濃くなったりするんだろう。
    たとえば、私がもっと父や母を愛していればいいのだ。(中略)うんざりする。へきえきする。冗談じゃない。一人のほうが、まだましだ。

    あしたになったらすっきりした顔で、何ごともなかったみたいに会社に行ってみせる。大きく深呼吸をして、私は泣きやんでからごはんを食べる。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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