すいかの匂い (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 704
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339160

感想・レビュー・書評

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  • 端的に理路整然と組み立てられた無駄のない文章に
    滲む、影のような淡い恐ろしさに、夢中になって
    ページを繰った。

    なにが怖いと聞かれても分からないけれど、
    さも当然のように狂っている気がする。
    怖い、嫌だ、好きという単純な感情に
    自然に身を委ねて生きている人、
    夏の気怠い暑さと海の砂が足にまとわりつく不快感、毛穴から噴き出して止まらない汗の感じが
    とても明確に響いてくる。

    読みやすく、直感で好きな作家さんだと思った。

  • ちょっと不思議でちょっと不気味。

  • 夏に読むのがおすすめ。
    短編集だから、何度でも読み返すことが出来る。
    夏のカゲロウのように眩く、尊い、物語。
    主人公はほとんど幼い年齢の少年少女。
    また、そこがいい。
    もう二度と体験出来ないようなされども、どこか体験したことがあるような、じぶんのなかにひめている大切な思い出。そんなような気がした。
    是非この本を読んだあと、真夏の蝉の鳴き声を聞きながら余韻に浸りたい。

  • ふわふわ不思議なお話がつまっていました。

  • 少女の頃の思い出を書いているのだが、クリア過ぎて読むとダメージ食らう。
    思い出したくない思い出、あの頃の隠したい感情が蘇ってくる感覚がある。大人になってこんな話かけるってすごすぎる。
    嘘をつくとか、残酷なことを考えるとか、そういう思い出をみずみずしく書いてる本。男性にもこういう思い出ってあるのかな。

  • 江國さんは何作か読んで、全然好きではないと思ってたけど これは良かった。面白かった。
    題材も自分の好みだった。

  • 夏と小学生女児な十一編。一話一話が滑らかな喉越し。繋がった双子兄弟に出会う白昼夢、涼しげさに惹かれる和菓子、お葬式に見える蟻の行列、新幹線で出会ったお姉さんの誘いに付いて行けなかったり、おいしい薄さのカルピス等。然り気無いいじめのリアルさ。特別には残らないけれど、柔らかくて無防備な確かさが心地好い。

  • 短編集。味覚、嗅覚、聴覚、視覚、触覚、どの季節よりも夏が一番五感に記憶を刻み付けやすいのかもしれない。とはいえ夏の感じかたにデジャブしても、起きる出来事は限りなくフィクションなので…真夏の夜の夢というか悪夢というか白昼夢というか…
    「すいかの匂い」が印象的(というか腐女子にとっては)。シャム双生児と家出少女。女の子なぞ触ったこともないだろうの少年の清らかさと、思春期特有の戸惑いと、しかしそれが身体を共有しているがゆえの不健全な空気にのまれそうでした。不完全な身体でも、より不完全なみのる君のほうが達観していてひろし君を振り回すの図。

  • ノスタルジックな、「あの夏」。
    アイスのへらをじゅっと噛んだり、日差しで温まったビニールプールに頬をつけたり。少女たちの目線と自分の体験がまざって、読書の記憶なのか、いつかの夏の記憶なのか分からなくなってしまう。そんな、夏が近づくと読みたくなる一冊。

  • まだ夏の名残があるうちに、10年以上前に読んだのを再読。
    小学生時代、少女の夏物語×11

    あとがき(川上弘美さんによる)にも似たようなことが書かれているのだけど、江國さんの書く子ども時代の物語って、不思議と「自分にもこういう記憶がある」と思わせるような…ノスタルジックというのか、自分の思い出のような気がして泣き出したくなるような感覚がある。
    旅先でのひと夏だけの出逢いとか、道沿いにある花の蜜を吸いながら歩くとか、紙せっけんを集めてたとか。
    残酷であったり、少し胸が痛くなるような切ない余韻が残るお話が多くて、きっと自分も小学生のとき、子どもだからこその残酷さがある経験をしたんだろうと思ったりした。

    夏休み、宿題に疲れてひんやりした畳の上で昼寝したこととか、友だちと自転車で走り回った夕方アイスを食べながら怖いくらいの夕陽を見たこととか、虫捕りしたり水遊びしたり、そんな夏の記憶が不意に蘇ってくる、そういう小説。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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