- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101341354
感想・レビュー・書評
-
(上下巻合わせてのレビューです。)
大好きな作家である服部さんの歴史小説モノ。
時代はちょうど平家台頭~滅亡、鎌倉幕府設立くらいまで。
この時代は、どうしても平家vs源氏に目がいってしまうのですが、
(そうではなく)中国(宗)からの貿易ルートに注目し、
そのルートを押えた者が権力を持つことができるという
今までにない部分(=経済)に注目して書かれた歴史小説です。
いわゆる流通経路を押えた平氏の発展が非常に興味深かったです。
(古文の苦手な)自分には、
やや読みにくい(理解しにくい)表現がたくさんあったり、
登場人物がたくさん出てくるので巻末の家系図と本文を
行ったり来たりしながらも、何とか2冊とも読破です。
(もしかすると単純に歴史小説を読み慣れていないだけかも!?)
こういう歴史モノも今年は少しずつ
チャレンジしていこうと思っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2012.09.14読了)(2012.07.24購入)
【9月のテーマ・[平清盛を読む]その②】
忠盛から清盛へ、保元の乱、平治の乱、清盛の天下、源平合戦、鎌倉幕府、北条政権、と歴史は進んでゆくのですが、作者にとっては、歴史の主流にはさほど関心がないようです。
物流の要をだれが握っているのか、福岡から京都への物の流れで、だれが多くの財をわがものとすることができたのか、というところに主眼があるようです。
清盛については、わがまま放題勝手放題、平氏の繁栄さえ考えていないかのような書きぶりです。こんな平清盛は読みたくなかった、という気持ちです。
最後の第五章は、源頼朝後の、西園寺公経について書かれています。鎌倉幕府は、西日本の物流に興味を示さなかったので、西園寺公経がその要を握ったという事のようです。
堺屋太一さんに書かせたら、もっとわかりやすく面白く書いてくれたテーマかもしれません。残念です。
●源為義(74頁)
奥州十二年の合戦に携わり、陸奥守に任じられた源頼義を曾祖父に、源義家を祖父に持つことから、陸奥守の座を望んだが、許されていない。
●保元の乱後(94頁)
合戦で八面六臂、奮戦したにも関わらず、源義朝が得た任官は右馬権頭にすぎない。
源義朝は、報いの薄さに不満を募らせていると聞いている。
しかし、清盛はそうは思っていない。
敵の要である上皇や左府を見逃し、数日にわたって落ち延びさせたのは、北を固めていた源氏の輩の失点である。清盛の側に落ちていたなら、上皇は丁重に保護し奉り、頼長は討つところであった。
●誤植(185頁4行目)
自分も(御)白河法皇の御為にその首尾を・・・
⇒自分も(後)白河法皇の御為にその首尾を・・・
(新潮社の出版物で誤植を見つけたのは、初めてです。小さい出版社のものでは割とありますが。)
●『太平御覧』(270頁)
『太平御覧』は天地の博物、森羅万象を類別し、典故事縁を雑多に並べたもの、系統だてて学ぶものではあるまい。ことに応じて参照するのがよろしかろう……
●平一門の分裂(304頁)
平一門の中でただ一人、頼盛だけが右衛門督の職を解かれた。その上、池殿周囲には宗盛の兵が詰めている。すわ一門分裂の合戦かと、人が見るのも無理はない。
「奴ばらが、八条院の莫大な所領を頼りに、わしに背くと申すものがあってのう」
●財の占有(310頁)
中宮は娘(徳子)。皇太子は孫(安徳)。関白は婿殿。
いかに申し開きをしようとも、巷の目には、血縁をよいことに、平一門のみが財を占有しているようにしか映らないであろう。
●建造こそが懐を富ませる(376頁)
頼盛は気づいた。入道大相国は、信西入道の手跡をなぞろうとしているのであった。
思い返せば、保元の乱で、信西入道は白河の院御所に火をかけている。焼き討ちという方針に周囲は驚いたが、信西入道は動じなかった。再び院御所を建て奉ることが、受領の繁栄に繋がると見抜いていた。
●頼朝の扱い(402頁)
国をほぼ平定した頼朝を畏まらせ、〝頼朝は久しく遠国に住し、未だ公務の仔細を知りませぬ。たとえ仔細を知るといえども、まったくその任(原文では〝仁〟ですが、誤植ではないでしょうか)にあらず〟との言質をとったのは、やはり法皇、および女院のお力を背景にした丹後局の手ぎわである。
☆関連図書(既読)
「清盛」三田誠広著、集英社、2000.12.20
「海国記(上)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
「平清盛-「武家の世」を切り開いた政治家-」上杉和彦著、山川出版社、2011.05.20
「平清盛 1」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2011.11.25
「平清盛 2」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.03.30
「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
(2012年9月17日・記) -
下巻に入り清盛、平家滅亡後の時代に。
源平の争いよりも朝廷と摂関家、朝廷と平家の、西日本の所領や宋から上がる財産や権力をめぐる争いが主眼になる。
栄華を極め、知らず独善的になっているのに自分では気づかない清盛。
後白河法皇から疎まれて衝撃を受けている様子は平家物語に慣れた見方からすると新鮮。
平氏の目から見るとこんな感じだったのかなと思った。
交易でもたらされる利益をどう分けるかの争いと言う視点は目新しく、面白かった。