散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101352817

感想・レビュー・書評

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  • 栗林中将が理想の上司像となりました。

    ・我々の子ども達が日本で1日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る1日には意味があるんです。
     (映画)
    ・余は常に諸子の先頭に在り

  • 2022年9月
    中身がわからない系の本で買って読んだ。普段だったら読まなかった。読んでみたら名著だった。
    食わず嫌いだったので、内容を全然勘違いしていた。
    残酷表現はほとんど出てこない。硫黄島の戦いが悲惨な戦場であったことはわかるが、それは客観的な状況の記載の積み重ねから伝わってくるものである。
    また司令官の人間味について書かれていたので、最初は「独裁者だって身内にだけ得をさせるある意味人間味溢れる人物だよ」と斜に構えていたが、栗林はそうでなかった。
    日本で暮らす人々を守るために非情なまでに合理的なのも、その矛盾におそらくずっと責任を感じていたというのも、そしてやり抜いたというのも、ずしんとくるものがある。
    感動はしない。感動ポルノ的な要素は一切ないからだ。素晴らしかった。

  • 娘たか子を案じる栗林中将の目がかぎりなく優しい。鬼神の如く活躍した中将から「散るぞ悲しき」の言葉が出るとは… 人間栗林忠道がよく描けている。

  • 本土攻撃をさせないため、国民、家族を守るため絶対に硫黄島を守り抜かねばという使命感と覚悟が、ただただ凄すぎる。

  • この本を書くにあたり、数多くの関係者への取材やインタビューをしてきたのが垣間見え、その労力は途方もないものだったと推測できます。そして、栗林中将の性格だけでなく、日常の生活や社会的背景、その人物の歴史まで捉えた緻密な内容は、梯さんのインスピレーションと何故、どうしての探究心から為せるものだったと思います。その結果として多面的に見た栗林忠道氏の人柄や家族、部下との関係が浮かび上がり、更に面白さが増し、引き込まれていきます。文章を読んで心が震えたのは初めてかもしれません。この第二次世界大戦時の大本営の考えた方と現在のオリピックの政治家の在り方とリンクしてしまうのは自分だけだろうか。過去の失敗から学んで欲しいと切に願う今日この頃です。

  • 太平洋戦争の歴史において硫黄島の戦いはその戦略的重要性から日米双方とも甚大な犠牲を伴う激烈な戦闘を繰り広げたことから、アメリカ側でもその名を知る者は多く、中でも日本側の総指揮官であった栗林忠道中将は圧倒的不利な状況にあって最も米軍を苦しめた勇将として日本国内以上にその知名度は高く、ある種の畏敬の念をもって多くの米国人の記憶に留められているそうである。

     2006年に公開されたクリントイーストウッド監督の映画「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」の二部作は硫黄島での戦いを米国側と日本側それぞれの視点で描いた作品であるが、彼が日本側の視点でも描こうとしたのは、栗林中将をはじめ多くの日本人兵士が戦場で書いた手紙や日記を読んで、彼らも自分たちと同じ人間だったと深く感じたからだという。

    「散るぞ悲しき」は栗林中将の残した手紙や関係者等の証言から、この硫黄島総指揮官の人間としての実像に迫るとともに、栗林が水際作戦.万歳攻撃という従来の日本軍の戦い方を転換し、過酷な環境の中であえて地下壕に籠もってゲリラ攻撃による持久戦に持ち込んだのは何故か、そして彼がこの戦いを通じて大本営に伝えたかったメッセージとは何だったのかが「散るぞ悲しき」という辞世の句に込められた想いから解き明かされる。

     大本営から言わば見捨てられ全軍の玉砕を覚悟せざるを得ない絶望的な状況の中にあって、2万に及ぶ兵を最期まで士気高く統率し得たのは、この総指揮官の知略と戦局を見通す大局観と、そして何よりも命を託するに足る人間力にあったのだと思う。真のリーダーの一つの典型であったと思う。もしこのような人が東條英機等に代わってその地位を得ていたらその後の歴史は変わったかも知れないと、思わず歴史の不条理を感じてしまう。

  • 栗林中将の人間性がよくわかる、一冊だった。

    1人1人の部下を大切にする姿勢、末端まで声をかける姿には感動を覚える
    徹底した論理展開
    作戦の失敗から学び、そもそもを問い直し、次の作戦を考える姿勢。ダブルループ学習をする姿勢

    この人が沖縄戦を指揮したらどうなっただろう
    この人が戦略全体を考えていたらどうなっただろう。

  • •これまで読んできた太平洋戦争についての本の中で、名もなき兵士の遺書など一人の人間としての当時を生きた先輩方の声は聞いたことがあった。けれど、この本の栗林中将のような多くの兵士を率いる指揮官の戦場での軍人としての姿だけでなく東京へ残していった愛すべき妻と子供たちへの想いを綴った手紙を読むことは初めてであり、硫黄島で散っていった2万人近くの日本人(多くが職業軍人ではない召集兵)諸先輩方いたことも32歳にして初めて知り衝撃を受けました。 
     戦後75年が経つ中で、今家族とともに衣食住困ることなく、毎日を過ごせることが当たり前のことではなくて、多くの日本人の諸先輩方の犠牲の上に成り立っていることを多くの今の日本人に知らせたい。

  • 交換本にて入手

  • 硫黄島からの手紙を映画で観た後に読んだ1冊。

    映画にも現れていた栗林中将の人柄の良さが、当時どれほど稀有なものだったのか。それでいて日本の本土を1日でも長く守るため、バンザイ突撃を美徳とせず死より苦しい生を部下達に徹底したその冷徹なまでの合理主義にゾクリとさせられた。

    希望のない戦況下で投げやりになることなく、どうしてここまで自分を律することが出来たのだろうか。多くの人が翻弄された国を挙げての洗脳の結果ではないだろう。彼が米国留学含め自分の足で歩き経験し出来た信念なのかと考える。

    祖父母の代がギリギリ戦争経験者である私には、もう当時の話を聞ける相手がいない。そして学生時代教科書で学んだ歴史だけで、なんとなく知った気になって生きてきた。それ故か戦争映画などを観てもある種SFのように感じてしまったりする。

    それではいけないと考えさせられた。こうして本を読み知識を深めることで、本当に戦争があったこと、当時の悲惨さを改めて事実として受け止め、知らなければならないと感じた。まだまだ私には知るべきことがたくさんあるし、それをまた下の代に伝えていかなければならないと思う。

    毎年8月は戦争について知識を深める月間にしたい。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1961(昭和36)年、熊本市生まれ。北海道大学文学部卒業後、編集者を経て文筆業に。2005年のデビュー作『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。同書は米、英、仏、伊など世界8か国で翻訳出版されている。著書に『昭和二十年夏、僕は兵士だった』、『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』(読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞受賞)、『原民喜 死と愛と孤独の肖像』、『この父ありて 娘たちの歳月』などがある。

「2023年 『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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