- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101367217
感想・レビュー・書評
-
久々に一気読み。談志一門は師匠を筆頭に能筆揃い。昨今では談春の「赤めだか」がベストセラーになった。ちなみに談春と本書の作者の志らくは兄弟弟子の関係にあたる。談春が兄弟子でありながら、真打へは志らくが先に昇進してしまう。談春と志らく、ライバルであり一番の理解者である。本書を読むと「赤めだか」の意趣返しで書かれた本であることが分かる。どちらかでもいい。是非読み比べて欲しい。年齢も落語にかける情熱も変わらない弟子同士でありながら、師匠・談志の描かれ方はこうも違うものか。赤めだかは「私(=談春)と談志」というよりは、若手弟子たちの「落語家青春物語」の印象が強い。方や「雨ん中の、らくだ」は、談志が追求し続けた落語の真髄の考察を開陳し、自身の落語観へと拡げていく。志らくは現在48歳。入門して10年で真打昇進を果たすも、決して順風満帆に進んだものではない。落語の面白さを知り、金原亭馬生に憧れ、落語を覚え、挫折し、天狗になり、苦悩し、時には落語を甞め、落語に飽き、しかし落語のスゴさに驚愕する有為転変の落語人生のあますことなく語っている。「門下の弟子の中ではセンスは一番」と談志が認めた志らくは、談志のセンスに近づくために落語以外のものでも必死に喰らいついていく。映画に昭和歌謡に人物に。師匠と同じ風景を見るために、その貪欲さには刮目するばかりだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
落語家立川志らく(たてかわしらく)による書。
単行本が出されたのは、立川談志(1936年1月2日 - 2011年11月21日)がご存命のとき。
談志亡き今に読んでも、(いや、今だからこそか)かなり心に迫ってくる、志らくによる談志へのラブレターだ。
18章のタイトルはすべて落語の噺(はなし)で、それぞれに立川志らくの解説やその噺に対する思い入れが描かれている。
同じく立川談志の弟子、立川談春も『赤めだか』を執筆されている。
この「雨ン中の、らくだ」は、もともとの企画では「談志音源全集」だったものが、企画変更したもの。
談春の『赤めだか』が談志落語の「イリュージョン」「帰属論」について書かれていない・・・『ならばそこを私(志らく)が』ということで書こうと思い立ったとのこと。『談志から何を教わったか、そしてそれをどう受け止めたかを書いてみようと』した『志らくの談志論』ということだ。
内容は、志らくの落語に対する考え方や解説のみならず、志らくの落語家人生と談志のそばで歩んだ奇跡が描かれている。
描き方が美味い!
非常に読みやすく、落語ファンのみならず楽しめると思う。
時に笑い、時に感嘆、時に涙・・・
まえがきには、名人宣言をした談春の『赤めだか』と、狂人宣言をした著者志らくのこの本を比較して『泣かせませんよ』なんて書かれていたのだが、けっこうグッとくるものがあった。
タイトルの『雨ン中の、らくだ』はあまりにも深い・・・。
※ちなみに、文庫本17頁にある題字(単行本には表紙にある)は立川談志によるもの。
----------------
【目次】
第一章 松曳き
第二章 粗忽長屋
第三章 鉄拐
第四章 二人旅
第五章 らくだ
第六章 お化け長屋
第七章 居残り佐平次
第八章 短命
第九章 黄金餅
第十章 富久
第十一章 堀の内
第十二章 三軒茶屋
第十三章 やかん
第十四章 天災
第十五章 よかちょろ
第十六章 源平盛衰記
第十七章 金玉医者
第十八章 芝浜
---------------- -
2日で読了。語り口が軽妙で読みやすい。談春の赤メダカは以前に読んだが、こちらはより落語オリエンテッド。
落語とは人間の業の肯定、不合理なイリュージョンの噴出、与太者の悲哀、それゆえ他の芸術にはない魅力があるというのは首肯した。 -
志らく師匠が綴った、家元のフレーズがたまりませんな。