- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369174
感想・レビュー・書評
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「宮部みゆき」の連作短篇集『淋しい狩人』を読みました。
『本所深川ふしぎ草紙』、『鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで』に続き「宮部みゆき」作品です。
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本を愛する作家が贈る、本好きなあなたのための、本が主役の連作ミステリ。
東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。
店主の「イワさん」と孫の「稔」で切り盛りするごくありふれた古書店だ。
しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。
平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挾まれていた名刺。
父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。
本をきっかけに起こる謎を「イワさん」と「稔」が解いていく。
ブッキッシュな連作短編集。
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東京の下町にある古書店・田辺書店の雇われ店主「イワさん」こと「岩永幸吉」と、たった一人の不出来な孫で高校一年生の「稔」が、本を巡る事件を解決する素人探偵モノ六篇が収録されています。
■六月は名ばかりの月
■黙って逝った
■詫びない年月
■うそつき喇叭
■歪んだ鏡
■淋しい狩人
『六月は名ばかりの月』は、以前にストーカー?の男から逃れるため田辺書店に逃げてきたことのある「繭子」からの相談に乗り、「歯と爪に気を付けなさい」という言葉を残して4ヵ月前に失踪した姉の謎や、「繭子」の結婚式の引き出物に落書きされた「歯と爪」という言葉の謎を解くに物語、、、
「ビル・S・バリンジャー」という作家の著書『歯と爪』が謎解きのキーポイントになっていましたね。
不利な条件がきれいに揃った容疑者、、、
そりゃ、真犯人じゃないだろう… と予想はしていましたが、後味の悪い、嫌な事件でした。
『黙って逝った』は、一人暮らしをしていて亡くなった父親の書棚に残された三百冊もの『旗振りおじさんの日記』という自費出版の本を巡る謎を解く物語、、、
息子の「路也」は、さしたる能力も特徴もなく、だれにでもできるような仕事を続け、凡々たる人生を送った父親を蔑んでいたが、自分なりに、残された本の謎を解き、父親のことを見直し、同じような人生を歩んでいた自分の人生にも希望を見出す。
でも、真実は「路也」が想像したほどの事件性はなく、様々な偶然が生み出した結果だったんですよねぇ… まっ、それで本人の人生が好転するなら、父親の悪戯が功を奏したということですかね。
本人にとっては他愛もないできごとでも、他人にとっては極めて不都合なことってあるんですよねぇ… ブログは気をつけなきゃ。
『詫びない年月』は、荒物屋の「柿崎」さん家のご隠居の夢枕に現れるという母子の幽霊を巡る物語、、、
この呪縛を避けるため、「柿崎」家では古い家屋の改築を決意するが、その敷地内から第二次大戦中に掘られた防空壕の跡が発見され、その中から東京大空襲で亡くなったと思われる母子の遺骨が発見される。
四十七年前の三月十日の夜、いったい何があったのか… その秘密を、ずっと抱えて生きてきたご隠居の辛さが伝わってくるような作品でした。
サイドストーリーとして、安楽死、毒物、殺人に関わる本の話も平行して進展していきますが、メインのストーリーとは、あまり関係しませんでしたね。
『うそつき喇叭(らっぱ)』は、田辺書店で『うそつき喇叭』という絵本を万引きして捕まった少年の物語、、、
「イワさん」は少年から事情を聞こうとして、身体に無数の痣があることから、虐待の疑いがあると気付き、警察に通報する。
「イワさん」は警察から母親の対応状況を聞いたり、担任教師と話をした内容から、虐待をしている人物に気付き罠を仕掛ける… 子どもへの虐待は許せないですねぇ。
「イワさん」の機転と活躍で、早く真犯人が判明して良かったです。
『歪んだ鏡』は、平凡なOL「由紀子」が、電車で拾った文庫本『赤ひげ診療譚』に挾まれていた名刺に纏わる物語、、、
この名刺の人物「昭島司郎」とは、どんな人だったんだろう… と「由紀子」は想像(妄想?)し、会ってみたくなり、勇気を出して名刺に書かれた会社・高野工務店を訪ねる。
しかし、「昭島」は期待していたような人物ではなく、文庫本に名刺を挟んでいた理由も失望する内容で落胆する… その数日後、「由紀子」は新聞記事に「昭島」の名前を発見する。
男って「途中で毀れてしまう車」なんですかねぇ… 印象に残った言葉でした。
『淋しい狩人』は、12年前に失踪した探偵小説作家「安達和郎」の遺作で未完の作品『淋しい狩人』に沿った殺人事件が起こる物語、、、
「『淋しい狩人』は傑作です。
あれほどの作品ですから、できるだけセンセーショナルな紹介の仕方をすべきです。
それでこそ、僕も報われるというものです。
そこで、僕は『淋しい狩人』のプロットを、現実世界に移して活かすことを考えました。
あの傑作のなかで起こされた殺人事件が実際に起こり、最後にはその謎が解かれるのです。
ほかでもない、僕の手によって。」
「安達和郎」の娘「明子」には、事前に犯人からの犯行予告の手紙が届いていた。
そこに既に亡くなったと思われていた「安達和郎」が現れ、
「『淋しい狩人』は失敗作で、五つの殺人事件の整合性が図れず、完成させることができなかった作品。」
と発言したことで、事件の結末は思わぬ方向に、、、
実際に殺人事件を犯し、未完の作品を自分の手で完成させようとした愚かな犯人は自暴自棄となり… 「イワさん」と「稔」に危険が迫ります。
サイドストーリーとして『うそつき喇叭』以降に展開していた「稔」の恋物語にも一応の決着が… こうして、少年は大人への階段を一歩ずつ昇っていくんでしょうね。
読みやすい短篇集でしたが、、、
さらっ と読めてしまうだけに、一作品ずつの印象がちょっと薄い感じ… 面白い短篇集にありがちな傾向ですねぇ。
面白かった… という印象だけ残って、詳細が記憶に残らないもんだんですよね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮部みゆき短編集。代表的な長編と比べるとあっさりした感じ。各編の終わり方も中途半端な感じもうけた。表題の寂しい狩人は、連続殺人を演じる若者、模倣犯を彷彿とさせる。
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イワさんと孫息子の稔の関係が非常に良いが悩みは尽きない。
6編の短編だが小説本に纏わる事件や出来事が良く考えられています。
田辺書店に行ってみたくなります。
面白かったです。 -
東京下町、荒川土手にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれ古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。
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面白かった
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古書店を舞台とした連作短編集。
前半はいわゆすミステリーっぽいテイストだが、後半は人情劇みたいな雰囲気かな。
悪くないけど、ここが良かった、という所もさほどなく、他の宮部みゆき作品と比較して、ここが凄い、というほどでも無いのが正直な所。 -
東京の下町にある古本屋「田辺書店」の店主イワさんこと岩永幸吉とその孫の稔が、本をめぐって起こる事件を解決していく連作短編集。結構事件そのものは陰惨な内容のものもあるが宮部みゆきさんの小説のうまさで読後感は心あたたまる話になっている。さすがだなと感じる小説でした。
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「うそつき喇叭」の話がほんとに好き
文体が自分好みではなかった… -
昔ながらの古本屋さんに行きたくなる
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古本屋が舞台にミステリーということで読んだもの。
平成5(1993)年単行本刊ということはまだ紙の本盛んなりしころ。だからアルバイト3人使っても街の古本屋さんが成立していたということ、などと時代背景を考えなければいけない。30年前はすでに遠い過去かも。
作品自体は宮部みゆきの短編集らしいもの。最初の数編はちょっとあっさりしていてどうかなと思ったが、後半に行くにつれて面白さが増してくる。個人的には最後の2編、孫の稔があまり登場しなくなってからの方が面白かったと思う。