- Amazon.co.jp ・本 (529ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369280
感想・レビュー・書評
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面白かった!!
今まで分厚さに躊躇して読んでなかったけど、何故読んでなかったのかと後悔するほど面白かった。読む気になって本当に良かった。
単行本にして5巻もある本作だけどその文量が苦になることは全くなく、むしろ各巻で何度も驚かされ、涙させられた。
構成としては1部から3部に向けてミステリーからサスペンスへも変わっていくもので、その意味でも味の違ったハラハラドキドキがずっと続く。
内容的にはいわゆる”サイコパス”の話なのだけど、連載開始から20年以上経った今読んでも使い古された感じはなく、むしろ新しさを覚えるほど。
“犯人が誰か分からない”という意味ではミステリーだが謎解き要素は特になし。サスペンスとしては最高で、海外ドラマの刑事モノが好きな人にはオススメです!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最終巻となる五巻
事件面では犯人の狡猾さに戦慄でした。人を人と思っていない犯人の行動はもはや人間らしさというものはいっぺんも感じられません。
三巻の時点でこの犯人はサイコパスかと思っていたのですが、貴志祐介さんの『悪の経典』の蓮実とは似ているところもありながら全然違うな、と感じるところもありました。蓮実はあくまで自分の邪魔になるものをつぶすために殺人を厭わない、というあくまで殺人を楽しんでいるわけでなく、手段の一つとして使っている印象だったのですが、この犯人は楽しい、面白いという理由だけで、こんな殺人劇をやりとおしたわけですから。
だからこそ徐々に化けの皮が剥がれてくる犯人の姿を読んでいくのはどこか痛快な感じにもなりました。化け物だと思っていた犯人も、うぬぼれや自尊心にまみれた人間だと分かってどこかほっとした気持ちです。
全五巻もあったので登場人物たちの成長も感じることができました。右腕の第一発見者である真一はもちろんのこと、ルポライターの滋子も一巻から見るとだいぶ変わったように感じます。だからこそ犯人との対決の場面での彼女のかっこよさが光ります。
遺族である有馬義男の強さもすごかった……登場人物たちを正しい方向に導いていくれる非常に大きな存在で、彼の言動は登場人物たちだけでなく、読者である自分も何度も救ってくれたように感じます。それだけにラスト彼の慟哭は切ない……
メディアというものの功罪も作品全体を通して考えさせられました。いかに本物と疑わしい情報を見分けるか、という視点も必要に感じます。
タイトルである『模倣犯』の意味が分かった時の衝撃もかなりの物でした。普通の小説ならタイトルはあくまでその本を指す名詞どまりなのですが、この『模倣犯』はそれをはるかに凌駕しています。
読了してほっとした反面、さびしいという感情もあります。事件の興奮を味わっていたい、というのもあるのかもしれないですが、この登場人物たちと別れるのがさびしい、というのもあるのかな、という気がします。
劇場型犯罪を描いたサスペンスとしても群像劇としても一級品の名作でした!
第55回毎日出版文化賞特別賞
第52回芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)
2002年版このミステリーがすごい!1位 -
今更というか、やっとというか、とうとうというか、ついに読みました。夢中で必死にむさぼるように読みました。途中つらい展開にページを繰るのが怖くなっても、先を読みたいという気持ちの方が強く読み進みました。
読み終えた今、少しほうけてます。それくらい力強い物語でした。
前代未聞の劇場型殺人事件に対して、一つ一つの事柄、一人一人の心情が細かく丁寧に描写されています。
しかしそこには作者の感情は表面だって見えないんです。社会に対する憤怒をぶつけている訳じゃないんです。文章は冷静で淡々と綴られているんです。だからこそ却ってしみじみと心に染み入るんですね。外堀に小石をぽんぽんと放り込みながら核心に近付くような感じですね。だからこんなにも長い物語になったんでしょうけど。
第二章で早々と犯人側の行動をつぶさに読者に提示しています。所謂解決編の前に真犯人の姿も読者にさらけ出しています。
そうすることで警察側の視点、被害者の視点、その家族の視点、世間の視点に犯人側の視点をも加えて物語を俯瞰視できるようにしています。犯人は誰なのだろうという興味で読者を引っ張るのでなく、物語自身が持つ力そのもので読者を引き寄せページを繰らせています。
改めて宮部みゆきのストーリーテラーとしての、すごさと怖さを思い知らされましたよ。 -
「世の中には悪い人間がいっぱいいる。略。辛いことがあって、一人じゃどうすることもできなくて、迷って苦しんでるような人からも、何かしぼりとろうとしたり、騙そうとしたり、利用したりしようとする人間が、いっぱいいる」
「だけど、そうじゃない人だって、やっぱりいっぱいいるはずなんだ。だから、おまえはそう言う人を探せ。本当におまえを助けてくれる人を。略。」 -
読み終わってしまった…すごい小説だった…
怒涛のクライマックス、じっくり読もうと思うのに気が急いてとにかく夢中で読んだ。
「加害者たちも実は被害者だった」と言うのは避けたいんだけど、不幸な生い立ちや複雑な家庭環境で育ったという背景は無視してはいけない事柄なんだろうな。でも、犯罪が起こったときに一番に寄り添うべきは被害者とその家族であるべきだし、不幸な人生を歩んできたから犯罪を起こしていいという話にはならないことだけは当たり前で絶対だと思った。
犯罪の終わりっていつなんだろう。そんなものないんだろうな、きっと。「みんな一人一人の人間なんだ。」という義男の一喝が頭に残る。
人を傷めつけるのも、人を癒すのも、人。
どんな間柄でも寄り添ってくれる誰かがいればきっと乗り越えていけるんだろう。
悲しみとやるせなさでいっぱいだった物語の最後に、少しだけ希望が見えた。 -
「世間を舐めるんじゃねえよ。世の中を甘く見るんじゃねえ。あんたにはそれを教えてくれる大人がいなかったんだな。ガキのころに、しっかりとそれをたたき込んでくれる大人がいなかったんだな。だからこんなふうになっちまったんだ。この、人でなしの人殺しめ。私の言いたいことは、それだけだ」
2022/6/18読了(再読)
世間を舐めくさった連続誘拐殺人犯の話で、話の中身は重たいし新潮文庫5巻のストーリーは長いし、読むのに時間がかかった。
原作を読む前に、'02年の映画版を見た事がある('16年のTVドラマ版は見た事無い)のだが、故森田芳光監督には申し訳ないと思いつつも、あれだけ沢山の登場人物がそれぞれに複雑なドラマを抱えた物語を、2時間程度の映画の尺に押し込むのは、無理がありすぎたのではないでしょうか? -
映画は昔に見たけど、全く記憶になかった。
ただただ純粋にすごいと思った
設定やキャラクターだけじゃなく、どの順番で誰の話を持ってくるかなど・・気になって気になって、のめり込んでしまった!
記憶にないのでアレだけど、こんな深い話をどうやって映画にしたんだろう、無理じゃないのか?
どこを省略したんだろうって気になった。
強いて言えば網川側からの子供時代の話をもっと知りたかったかな