グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた (新潮文庫 つ 31-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101384610

作品紹介・あらすじ

徹底的に戦った。しかし、機能を失った組織で、これ以上もがくのは無駄だった。VAIO、スゴ録など大ヒットを生んだ天才は屈辱に塗れたまま、ソニーを去る。48歳・無職、ハローワークからの再スタート。変化を恐れぬ情熱は、グーグル日本法人社長の座を引き寄せる――ソニーでの22年間とグーグルでの3年間、彼はいかに挑み続けたのか。読む者を勇気づける、敗北と挑戦の胸熱クロニクル!

感想・レビュー・書評

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  • ここ1年ほど、ソニーのWalkmanを愛用している。ポータブルミュージックプレイヤーの私の遍歴は、東芝だったり、ケンウッドだったりで、もっともポピュラーと思われる林檎のマークはなぜか避けてきた。嫌いというわけではないのだけれどなんとなくである。まあハードロックやメタルを流した時にちゃんと重低音が効いていればなんでもいいのだが。

    それにしても最近のポータブルミュージックプレイヤーはすごいなあとしみじみ思う。液晶がもっさりしたものしかこれまで所有したことがなかったので、ビジュアル・操作性の良さにも今更驚いているのだけれど、WalkmanにはAndroidが入っていて、Wifiでネット接続もできるからアプリも入れられる。容量も大きいから家にあるCDがほとんど入ってしまう。スマートフォンはいまだ持ってないのだけれど「ほとんどスマフォみたいなものだのう(知らんけど)」と思ったりする。

    辻野さんはWalkmanのソニーとAndroidのグーグルの両方に所属した人である。そんな人の半生が綴られている。

    どちらかというと、ソニーでの話が多いし内容も濃い。実行力もバイタリティもある人だけれど、保守的な人から見たら空回りしているように見えることもひょっとするとあるのかもしれないなという印象を受けた。海外滞在中に突然奥さんに泣かれたとか、2ちゃんねるに悪口書かれたとか、たぶん普通の人だったらひっかからないところがなんとなく気になった。ねじれた本読みです。

    しかし辻野さんの先読み能力は素晴らしい。テレビにネットワーク機能を搭載する統合イメージは、形こそ微妙に違えど、いろんなところで実現されていっているように思う。

    グーグルの日本法人社長にまでなられたようだが、グーグルは合わなかったのかどうなのか3年ほどで辞められている。というよりもグーグルみたいな企業は長居するものでもないのだろうか。凄すぎるビジネスマンの感覚はなかなかわからない。

    昔のソニーが、ディズニーに訴えられた時に戦ったエピソードが面白かった。ここらへんの粘り強い戦いがあったからこそ、今のような録画したりレンタルが可能な映像・音楽文化になっているのだろうと思う。気楽に音楽を持ち歩けるってよく考えると凄いことだ。

    本の題名は正直なところあまりぴんとこない。

  • 辻野晃一郎『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮文庫、2013年)は、新卒でソニーに入社し22年間勤務したのち、グーグルの日本法人社長を勤めた著者のサラリーマン人生をエピソード風に回顧したものである。VAIO成功ののち、コクーンやスゴ録などの新規事業に取り組む著者は、経営戦略の迷走に翻弄されてしまう。統制が効かなくなった同社に見切りをつけ、グーグルに就職する。そこで著者は、かつてソニーに存在した自由闊達な精神を、グーグルの中で再発見する。

    グーグルの仕事の仕方について、目新しい話は出てこない。むしろソニー時代の奮闘のほうが参考になる。とはいえ肩肘張って読むようなものではなく、新幹線の移動中などに気楽に読める本だ。1つ憶えておこうとになった比喩に、クラウドでのストレージの話があった。「グーグルの場合は、イメージで言うと、預かったデータは最初にまずシュレッダーにかける。そして裁断されたピースのデータを世界中にあるデータセンターのサーバーにばら捲き、分散、多重化して保存する」(p.273)。安心な印象を与えるためにシュレッダーを持ち出す点がうまい。

  • ソニーに関する本はついつい買ってしまう。
    日経新聞に掲載の私の履歴書を読んでいるみたいだ。何となく自慢話に聞こえてしまうのは、私だけだろうか。
    読み終わって、タイトルの、「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」というのが、もう一つピンと来なかった。ソニーのいいところを見直している本かと思いきや、そうでもなかった。確かにグーグルは、今成長期に有り、ビジネスの最先端を行っており、それは素晴らしい企業なのだが、それを改めて強調してもあまり新鮮味がない。まさにタイトルにあるテーマを期待していたのだが、それはどこにも書いていない。
    著者がグーグルを去ることになった理由はもう一つ分からないのだが、結局自分が嫌っていたソニーの体質から完全に抜けきっていなかったということなのか。

  • SONYの凋落とGoogleの台頭。一見無関係に見える両者の共通点は、人々のライフスタイルを変えるというスピリッツ。それはSONYが失ってしまったもの。それはSONYから受け継ぎAppleやGoogleが紡いでいるもの。
    昨今の外資礼讃の流れに日本人としてさみしくなる。

  • ソニーを経て、グーグルに入社、独立という著者のキャリアを振り返っています。
    タイトルはグーグルが先頭にきていますが、7割くらいはソニー在籍時の話です。
    私は全盛期のソニーを知らない世代で、70〜80年代のソニーがいかに凄かったのかが本書を通してわかりました。
    グーグルのことに関しては、外部のジャーナリストが書いた本を読んだことがあったので、知っている話も多かったです。
    しかし、実際に現場にいた人の話はより細かいところまで書かれていて、初めて見えたことも多くありました。
    グローバル企業にあまりいいイメージがありませんが、著者が後書きで言っているように、今後は日本の企業も避けて通ることができない道でしょう。
    そんな中で、海外に準じるにではなく、日本らしさを活かした何かが重要という意見に強く共感しました。

  • 自分と同年代で同じ理系の出身者が、ソニーという企業で活躍しグーグルに移って羽ばたく、エピソードを連ねた半生記。
    留学経験もあり英語に強かったことが成功の大きな要因だが、それを成させたのは本人の強い意志。管理職になってから時折発せられる部下あてのメッセージがよい。ソニーの重役にもつまらない発言をする人がいることが分かって面白かった。自分たちの組織の文化をどうしようと考えていくのか、そこが大事。大企業幕藩体制とはいい名づけだ。

  • ソニーでVAIOデスクトップパソコン事業や、コクーン・スゴ録等のAV機器の事業責任者を任され、ソニースピリットを体現しつつも、組織から弾き出されるようにして辞職。その後、グーグル日本法人に移ってその責任者として3年間勤めた著者が、かつてのソニーの魅力・個性とその後の凋落を、グーグルの社風と対比させながら語ったビジネス体験記。

    これからの企業には「カジュアル」=「フランクで透明性が高く、フットワークが軽くてノリが良く、どんな意見でもきちんと聞いた上で、誰に対しても正々堂々と自分の意見を主張する」風土や組織であることが求められる、という指摘には頷ける。また、時代の変化に抗っていては自滅するだけであり、「自ら変化を起こす側に回るか、変化に身を投じる以外の選択肢はない」という著者の言葉も、その通りと思う。これらのこと、保守的で旧態依然とした役所や官僚化した大企業には望むべくもないが…。

  • 2016/06/22 No.13

  • なかなか良い

  • ソニーの凋落が悲しい。

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著者プロフィール

1957年、福岡県生まれ。1984年に慶應義塾大学大学院工学研究科を修了し、ソニーに入社。1988年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、ホームビデオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長兼CEOを務める。近著に『「出る杭」は伸ばせ! なぜ日本からグーグルは生まれないのか?』(文藝春秋)など。

「2018年 『日本再興のカギを握る「ソニーのDNA」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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