日本の川を旅する: カヌー単独行 (新潮文庫 の 5-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101410012

感想・レビュー・書評

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  • 昭和63年に就職し、自分で給料を稼げるようになって四駆を手に入れた。自然と趣味はアウトドアに傾き、その延長でカヌーを絡めた川・湖・海遊びにはまる中、著者の本に出会った。昭和50年代後半はバブルがはじける直前。河川に下水が流れ込む描写が多くある。また、ダムが、ヒトの心も含めて、生態系に及ぼす影響も、水の上からつぶさにリポートされている。カバーも無く、新潮文庫ではお馴染みのスピンも擦り切れて短くなっている。それだけ、この本はキャンプでよく読んだ思い出深い本だ。解説も椎名誠氏であることも良かった。

  • 旅をしながら本を売る放浪書房さんで出会った1冊。
    放浪書房で出会わなかったら、絶対出会えなかった気がするので、手に取り買ってよかったー!

    一見すると冒険の記録のよう。冒険の記録だけなら、興味もてなかったかもしれない。

    日本の風土、日本人の暮らしを、流域を旅しながら眺めていく。
    ちょうど、宮本常一の本を読んでおり、民族学としても読める本。

    前に、お付き合いしていた、鮎漁師の彼が言っていたことを思い出した。
    日本の川が、流域の工場、生活排水で汚れていること、ダム建設によって、川の水量が減ってしまって、汚染が進むこと。
    川に流れ込む山林の荒廃、川そのものを三面護岸でコンクリートで覆ってしまっていること。全ての要素が絡んで日本の川はめちゃくちゃ。
    漁師の嘆きを聞いてて、悲しい気持ちになった。

    川は危険なところ、川は汚いものを流してくれるところ。
    日本人の生活から川が遠いものになってしまったように思うけど、本来川と共に生きてきた・・。
    川を旅する著者の言葉には、共感できるものがあった。
    都市生活を営む多くの日本人には、そんなことさえ知らないんだろうなぁと思った。(自分も含め)

    川で地域を旅する本、おすすめ。

    この本が書かれたのが1985年。なんと長良川河口堰ができる前で、河口堰ができて、川環境は破壊されてしまう・・と著者は嘆いていました。
    河口堰が出来る前の長良川はほんとに素晴らしい川だったんだなと思った。本の発刊から30年、当時から失われた環境もたくさんあるんだろうと思う。

  • 川の冒険家の野田さんのお名前は前から知っていたが、本を読んだのは初めて。
    1980年代なのでかなり昔の話ではあるが、カヌーで川を下りながら河原で寝泊まりする自由な旅はとても興味をひくものである。
    四万十川はもしかして変わらないかもしれないが、他の川は1980年代と比べると、もう流れも色も水量も随分変わっているのではないか。
    うちの近くには荒川が流れているが、カヌーでもとても入ろうとは思えない色をしている。
    同じ都内の川でも、たまに電車で見る多摩川はとても澄んでいるように見えるが、カヌーで下ると最悪らしい。
    でももしかしたら、当時よりきれいになったのかな?

  • 全てはここから始まった。日本の川をカヌーで下り、川面から上を見上げてたルポタージュです。40年近く前に下った川の状況は今とは全く違っていると思います。中に出てくる写真のなんと牧歌的な事。とはいえ日本が最も浮かれ騒いでいた時期なので汚い川の汚さは今より格段に上だったと思います。この後の砕けたアウトローな感じのエッセイに比べたら堅めの文章ですがユーモアはすでに充分です。名作。

  • 相当良い。体験の質(人生の送り方)も文章のうまさも、とても魅力的。会って話がしてみたいと思った。

    これだけ日本の川をみてきた(漕いできた)人に東京の川はひどいひどいと言われると、ああ東京なんかで何をやっているんだろうという気持ちになる。日本じゅうの川を訪ねないと!と思わずにはいられない。そして川とのかかわり、川沿いの人々とのかかわりを愉しもう。関係性が、世界を、街を、人生を、豊かにするのだ。

    ともあれ、多くの宿題を頂いた気分のする本だ。

  • 20130612
    いい本だ!と心底思った。

    便利さと引き換えに、失ったものがたくさんある。

    「日本の川を行くのは哀しい。それは失われたものへの挽歌を聴く旅だ。」

  • 川とか自然とか、環境とかカヌーとか
    全く考えたことも無いころに手に取ってみた本。
    こんな生き方をしている人がいるんだ、とか
    作者の考え方にも、ずいぶんと感心させられた本。
    出会えてよかった。

  • 著者はむかし、ラーメンのCMに愛犬といっしょに出ていたので、ご記憶の方もいるだろう。この本はおもしろい。なんといってもカヌーという独特の視線の高さから見た川岸風景の描写が絶妙で未体験の私でも読むとカヌーを操っているかのごとき快楽を味わえた。カヌーというからには、さぞ、清流だろう、と思われるかもしれないが、この本に出てくる川は代表的な日本の川であり、護岸工事で固められた哀れな姿の川が多い。中でも東京の多摩川は最悪だ。カップルが腐臭 のする泡だらけの川の中で笑顔でボートをこぐシーンなどが紹介されているが、おぞましい光景である。最近の日本人の川や自然に対する無神経さを心底情けなく思った。

  • 〜いざ原野の光の中へ〜

    テントの外で夜通し鳥が鳴いた。
    屈斜路湖畔の第一夜。
    北海道の夏は午前三時には東の空が明るくなる。
    焚き火を起こし、熱いコーヒーを啜った。一面の濃霧。
    七月だが朝夕はセーターにジャンパーを着込むほど寒い。
    八時頃、霧が晴れて、青空がのぞいた。
    ‐中略‐
    確かに川旅は「男の世界」である。
    自分の腕を信頼して毎日何度か危険を冒し少々シンドクて、
    孤独で、いつも野の風と光の中で生き、
    絶えず少年のように胸をときめかせ、海賊のように自由で−

    ‐釧路川編より‐

    1980年代の日本の14の川。
    その川を折りたたみカヌーにキャンプ用具を積んで下る、
    川旅単独行のルポ。
    四万十川編もあります。

    今でも長い旅に出る時は、必ず持ってゆく一冊。

  • 独りでいながらも、心豊かに生きるカヌーイストのエッセイ。骨太の生き方に一度は触れてみて欲しい。

著者プロフィール

熊本県生まれ。早稲田大学文学部英文学科卒業。在学中、ボート部で活躍。卒業後ヨーロッパを放浪。帰国後、高校の英語教師、旅行雑誌の記者を経て、エッセイストに。傍ら、カヌーによる川旅に打ち込む。これまでに日本の一、二級河川約200を漕破。さらに北米、ニュージーランド、ヨーロッパにまで活動範囲を広げている。長良川河口堰問題や川辺川ダム建設反対運動、吉野川可動堰問題などにかかわり、講演などを行う。

「2008年 『イギリスを泳ぎまくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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