ちんぷんかん しゃばけシリーズ 6 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461267

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5
    やっぱり…ホッとしますね〜。若だんな。
    江戸通町一帯が火事に見舞われる。長崎屋も被害に。

    ・鬼と小鬼
    若だんなが冥土行き?
    が、タイトルにある小鬼こと鳴家も着いてきた。
    鳴家を元の世に戻すため若だんなが戦います!

    ・ちんぷんかん
    ここでは目線は広徳寺の僧・秋英。
    成長する秋英が見れます。

    ・男ぶり
    若だんなの母・おたえの若き日の恋物語。
    父・藤兵衛との馴れ初めも❤︎

    ・今昔
    若だんなの兄・松之助に縁談が。
    縁談の決着版です。

    ・はるがいくよ
    離れの庭先に植えられた桜の木。
    寂しい若だんなの心と合わさり、不思議な出来事が。
    感動の物語り。

  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」6作目(2007年6月単行本、2009年12月文庫本)。短編5作の短編集。
    ①一太郎が三途の川を渡る寸前で現世に戻る<鬼と小鬼>、
    ②寛朝の弟子の秋英が妖を見ることができることを自覚する<ちんぷんかん>
    ③おたえが藤兵衛と夫婦になるまでの話の<男ぶり>
    ④一太郎が陰陽師が操る式神の謎を解く<今昔>
    ⑤桜の木の精が一太郎に恋をし短い一生を終える<はるがいくよ>
    最後の<はるがいくよ>には胸が詰まる。そして人の一生の長さ短さを考えさせられる一編でもあった。

    ①<鬼と小鬼>
    「長崎屋」の近くの店から出火し、通町の家々が大火事になる。一太郎は煙を吸い意識不明の重体で気がつけば三途の川の手前に来ていた。一太郎は以前に来たことを思い出す。その時は一度死んだのに祖母おぎんが荼枳尼天から手に入れた薬「返魂香」で生まれ変わったのだ。今回はどうも完全には死んでいないようだ。
    一太郎もほとんど死んだ状態だったが、賽の河原には小石を積んでいる何人もの子供達が三途の川の川を渡るのを待っていた。己の影の濃い薄いで違いがあり、濃い者は現世に戻れることもあるらしい。そんな中で鬼に向かって文句を言っている威勢のいい12〜3歳の男の子がいた。乃勢屋冬吉と名乗り、影が濃かった。一太郎は冬吉を連れて現世と繋がる闇の中へ入って行く。鬼に追いかけられるが一太郎が持っていた仁吉特製の苦い匂いの薬が鬼達を寄せ付けず、無事生還するのだ。
    源信の家では仁吉が、死にかけている一太郎にとんでもなく苦い薬を飲ませていた。仁吉の薬で一太郎は死なずに済んだのであった。火事で長崎屋は焼け落ちたが皆んな無事であった。
    一太郎は己のことより付いて来てしまった鳴家達を現世に戻してあげるために一生懸命だった。また賽の河原で一太郎を鬼に売り渡そうとした子供にも逆に地獄に堕ちないように気遣いする優しさにほっこりする。

    ②<ちんぷんかん>
    広徳寺の寛朝は13年前に9歳だった武士の子供の秋英を弟子にしていた。秋英は自分では気付いていないが妖を見ることが出来た。
    寛朝は22歳になった秋英に初めて一人で相談に乗らせた。相談の相手は阿波六右衛門という話算指南の浪人だった。相談の内容は娘のおかのが好いた男との縁談をまとめてほしいという。その男とはどうも松之助らしい。和算の教本の中に出てくる男に似ていて、どちらが先かどうも不明みたいだがその男にのめり込んでいるという。秋英は断ると六右衛門に教本に頭を押さえつけられ、本の中に突き落とされてしまった。六右衛門は人ではなく妖だと気づくが遅かった。もう駄目かと思った時、寺に来ていた一太郎に助けられる。
    秋英が妖と初めて関わり、己が寛朝と同じように妖を見ることが出来る人間だと自覚することになる。
    一太郎は松之助の縁談話に寂しさを覚え、色んな変化に不安で心を乱していた。しかし寛朝の「諸事何とかなっていくものだ」と言う言葉に一太郎はうなずき、また一回り大きくなっていく姿に何故か嬉しくなってくる。

    ③<男ぶり>
    おたえが若かった14歳の頃の縁談の話や藤兵衛と夫婦になった経緯を一太郎に話す。
    江戸でも有数の大店「長崎屋」の一人娘で江戸小町と言われ、瓦版にその麗しさが書かれるほどだったおたえには縁談話は有り余るほどあった。その中で老舗煙管屋「岩見屋」の次男坊、辰二郎に夢中になっていたが、父親の伊三郎は気に入ってはいなかった。
    そんな折、辰二郎は叔父「水口屋」長兵衛からある事件の解決を頼まれる。おたえは何とか辰二郎の力になって男を上げさせようとするが、事件の解決は長兵衛のスキャンダルを暴くことになり、怖気付く辰二郎の人間の小ささを露見させ、おたえの恋は終わる。
    傷ついたおたえを一生懸命元気付けようと藤兵衛(この時は藤吉)は歯に浮くような言葉を毎日毎日投げかける。そしてついにおたえは手代だった藤吉を婿にしたいと伊三郎に言うのだった。不思議にも伊三郎は反対しなかった。
    興味深かったのは、おたえには仁吉や佐助に代わる守狐がいておたえを常に守り助けていた。今回の辰二郎絡みの事件でもおたえを助け、今も中庭の稲荷の祠にいて荼枳尼天の庭に行き来しながらおたえを守っている。
    そして屏風のぞきもおたえが小さい頃から側に居ておたえの理解者だったこと。どうも長崎屋にいる妖の中で守狐を除けば屏風のぞきが一番の古株らしい。

    ④<今昔>
    昔式神を操り隆盛を誇った京の陰陽師、今はもう式神を操れる陰陽師はいなかったが、江戸に現れた陰陽師、七太夫が式神を操り一太郎を襲った。式神が通町で人を襲った話は江戸の大火事の後に頻繁にあった。何のために襲うのか、一太郎は考えていた。
    七太夫は米屋「玉乃屋」に占い師として雇われていた。玉乃屋にはおくらとお咲というか娘姉妹がいて、姉のおくらが病弱な自分の縁談話に悩んでいた。父親は娘のために縁談話を進めてしまう。その相手の一人が松之助だったが、松之助は妹のお咲を好いていた。そしておくらも襲われる。
    一太郎はおくらが式神に襲われたことと通町の式神の事件の関連を推理し、七太夫を追求する。
    久し振りに貧乏神の金次が登場し、事件解決に貢献する。最終的には七太夫に取り憑いて、式神を操る力も削ぐなんて、一太郎には妖と神まで味方がいて敵なしというところか。
    松之助の縁談の件はどうなるのか、気がかりを残してこの話は終わってしまった。

    ⑤<はるがいくよ>
    火事でも生き残った桜の木が、建て替えられた長崎屋の仮宅の中庭に植え替えられていた。ある日、中庭が見える離れの寝間に赤子の入った籠が置かれていた。誰が連れて来たのか誰も知らない。そして赤子は見ている内に成長していった。どうも人ではなく妖のようだ。
    仁吉は桜の木の花びらだと言う。この桜の花の精はたちまち歩き回る子供になり、一太郎は小紅と名付ける。桜は7日もすれば満開となり、10日も経てば散る。咲き始めてから半月の寿命だ。小紅も半月で消えることになる。もう美しい娘になっていた。
    時間がもう無い。一太郎は何とかならないかと奔走する。植木職人に相談しても、寛朝に相談してもだめだった。
    すると仁吉が一太郎に進言する。小紅を連れて荼枳尼天様の庭に行ったらどうかと。神に庭に行けば散らずに済む、一太郎も病が治り元気に暮らせる。そう神の庭に行くということは死なずに暮らせるがこの世には戻れない。
    正に仁吉の一太郎に対する思いも一太郎が小紅に抱いた思いと同じなのだ。3000年以上生きる妖にとって50年余りの生の人に対する思いは一緒なのだ。しかし人は人の生涯を全うし、桜の花は桜の花の生涯を全うする。これは仕方がないことなのだと仁吉は一太郎に説いているのだ。
    一太郎は小紅に荼枳尼天様の庭に一緒に行きたいかと問うと小紅は首を横に振る。一太郎は己もいつか仁吉と佐助を置いて死んでしまうことを認識する。
    人の生涯の儚さを考えさせられる物語だった。
    そして松之助が分家してお咲きを嫁に取る縁談が決まる。一太郎にとって嬉しい反面、また寂しさが一つ増えるのだ。
    これから寂しさを克服して成長していく一太郎をずっと見ていきたい。

  • 五つの話からなる短編集。
    長崎屋が大火事に巻き込まれるところから物語は始まる。煙を吸った若だんなは意識を失ってしまい……三途の川の畔で目を覚ます。なぜか鳴家たちが付いてきていて、若だんなは妖たちを長崎屋へ帰そうと決意する。若だんなたちは無事、長崎屋へ戻ることができるのか……?!

    大火の後、焼け落ちた町の復興と共に物語は進む。個人的に『はるがいくよ』が心に残った。桜の花びらの一生を短いと感じた若だんなが、自分の一生もまた、妖たちにしてみれば短いのだと、気づいたところで物語は終わる。

    「去って行かねばならない者は、悲しくて哀れかもしれないけれど……残される者もまた、辛い思いを持てあますことになるんだね」

  • 最後の小紅のお話はとてもぐっときました。
    6作目ともなると読者の私もキャラクターへの愛情は深くなっていて、このお話を読んだ後は若だんなと一緒に涙ぐんでしまいました。

    人間と妖の時間の長さを桜の花と合わせて表現しているのがとても素敵でより儚さを感じました。

  • シリーズ6作目はまた短編集。5作品が収録されている。話のベースとしては、火事が発生し復興していく町や人の様子が描かれていること。また兄・松之助の婚姻話が進められていること。収録されている話は、ついに若旦那が三途の川に行く話、寛朝の弟子・秋英の話、若旦那の両親の馴れ初め話、陰陽師と対峙する話、桜の花弁の妖と出会う話。新しいキャラクターが増えて江戸の町はますます賑々しい。
    人間と妖の時間の感覚は違えど、生きる今は等しく尊い。死は未来への礎となる。出会いと別れにほっこり。

  • シリーズ6作目

  • 今回は出会いと別れがテーマになった小編が中心の巻でした。
    寝込んでばかりの若旦那も、いろんな経験をしてだんだんと成長している感じがします。

  • はるがいくよ
    切ないお話でした。誰でもいつか、大切な人を見送るんですね。自分も見送られる時が来るのが世の常。見送るばかりでは辛いです。
    人ではないとは言え、きっと。

  • 安定の面白さ。今回も、妖が関わる、若旦那が巻き込まれる様々なトラブルとその解決のストーリー。これまでのシリーズに流れる、「滑稽なんだけどホロリとする」仕掛けが満載で裏切らない。テッパンの小説。

  • 20200829-0831 はるがいくよ、の話は切ない。しゃばけシリーズ第6弾。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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