罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102010211

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    カラマーゾフは読めなかったが罪と罰は読みやすかった。サンクトペテルブルクの広場や通りの名前が出てきて懐かしくなった。

    【あらすじ】
    第一部
    ラスコーリニコフは老婆アリョーナを訪れる。酒場でマルメラードフの話を聞く。翌朝母から手紙が届く。手紙には妹ドゥーニャが家庭教師をしていた先の家主スヴィドリガイロフのこと、ドゥーニャの結婚について書かれていた。外に出ると酔っ払った女と紳士の男がいた。妹の結婚には反対のラスコーリニコフ。飲食店でウォッカを飲むと、馬車の馬が叩き殺される嫌な夢を見る。
    センナヤ広場で老婆の妹リザヴェータが明日19時に外出することを知る。飲食店に行くと大学生と士官が話していた。愚かな老婆を殺し、お金を奪って未来ある若者のために使った方が良いと言う。ラスコーリニコフはそれを聞いて斧を持ち出し老婆を殺害。部屋に入ってきた妹も殺害。老婆を訪ねた客コッホと若い男に気づかれそうになるも上手く逃走した。

    第二部
    ラスコーリニコフは夜中2時に起きたが、また10時まで横になる。警察に家賃滞納の件で呼び出される。壁に隠した老婆の財布を外の石の下に隠す。友人ラズミーヒンのもとを訪れる。高熱でうなされて、家に帰ると何日も寝ていた。ラズミーヒンが手形の件で彼の代わりに色々やってくれたらしい。老婆殺害の事件でペンキ屋が疑われる。ラズミーヒンと医者ゾシーモフはラスコーリニコフの看病をする。妹の結婚相手ピョートルが訪ねてきた。ラスコーリニコフが外へ出ると女が橋から身投げしていた。マルメラードフが馬に轢かれて死亡。ラズミーヒンの引っ越し祝いに行く。家に帰ると母と妹がいた。

    第三部
    ラズミーヒンとゾシーモフは母と妹に、ラスコーリニコフは大丈夫だと言う。ドゥーニャとピョートルの結婚に反対するラスコーリニコフ。ピョートルからの手紙には8時に訪れると書いてあった。そこでラスコーリニコフと会わせるつもりのドゥーニャ。マルメラードフの娘ソーニャが訪れ、マルメラードフの葬式に出てほしいと言う。8時の食事にラズミーヒンも行く。ソーニャが家へ帰る途中、見知らぬ男がつけていた。老婆に預けた品の件でラスコーリニコフとラズミーヒンは予審判事ポルフィーリイのもとを訪れる。ポルフィーリイはラスコーリニコフの凡人と非凡人についての論文を読んだことを話す。そこには良心に従って血を許すということが書いてあった。ポルフィーリイはラスコーリニコフにカマをかける。
    ラスコーリニコフは約束の食事には行かず、家に帰ろうとすると町人がいて「おまえが人殺しだ」と言われる。その後スヴィドリガイロフが家に来た。

  • 罪を犯した人の心が蝕まれていく描写がすごい。今罪を犯した人々は皆このような心情でいるのだろうか?ここから救われるためには、やはり一人では難しい。

  • 今月の初め、古稀を目の前にしてドストエフスキーの傑作《 罪と罰 》を完読した。わたしにこのような意欲と集中力をいまだに授けていて下さる神に感謝したい。
    多くの人が知りながら、なかなか手のつけられない大部の小説で、文庫本にして1200頁程ある。《 罪と罰 》というとなにやら難解で哲学的な内容のとっつきにくい小説と思われているが、読み始めてみるとさにあらず何と流麗で読みやすいことかと驚かされる。今読んでもちっとも古くないし現代小説を読んでいるのと同じという感想を持たせる。

    物語の舞台は19世紀中ごろの古都サンクトペテルブルク。その夏の二週間程の間の出来事である。元大学生ラスコーリニコフは薄汚く天井の低い狭い屋根裏部屋に下宿していた。彼は頭脳明晰ではあるが鬱屈したニヒルな性格の持ち主である。貧窮していて質入れのため弊衣破帽のまま外出する。都とはいっても当時は悪臭漂う家々が連なりいかがわしい店もあった。彼がふと入った酒場で質入れして入手したなけなしの金で飲んでいると元官吏の男と出くわした。彼から後妻と三人の子供、それに家計を助けるため娼婦となっているソーニャの話を聞かされる。ここがその後の物語の展開にかかわる重要な場面となる。ラスコーリニコフはかねてから強欲で虫けら同然とみなす質屋の老婆を殺害することを企てていた。ちょうどいい計らい時が訪れたと断じ、彼は老婆とそして予期に反して居合せたその義妹を殺害してしまう。首尾よく逃げおうせたものの、それからは罪の意識といつか司直の手に落ちるのではないかと戦々恐々とする。いわば生き地獄の様な心理状態である。

    わたしは長々とストーリーを追うつもりはない。核心となる重要なポイントが掴めれば幸いであると思っている。

    ある夜更け、街角でくだんの元官吏、ソーニャの父が事故で死にそうになる場面に彼は偶然居合わせる。家に運ばれるが助からない。ラスコーリニコフは母が送金してくれた金を葬儀代にとすべて未亡人に与えてしまう。そういう優しい面も彼は持ち合わせているのだ。

    同じ頃、彼の母と妹が上京して投宿していた。ラスコーリニコフは殺人事件以来、精神病やみの様になっていた。それを彼の友人たちが懸命に支えた。それと妹と婚約していた卑劣な俗物弁護士の横柄さに婚約は解消された。

    またラスコーリニコフを老婆殺しと嫌疑をかける予審判事の三度にわたる追及は鬼気迫るものがある。その根拠としているのが彼が以前ものした論文でそれに予審判事はこだわる。ここがこの小説の核心部分となるのかもしれない。その論文の論旨は『一つの悪事は百の善行によって償われる』、つまり正義のためには凡人は殺しても構わないとした彼のある意味独創的ではあるが選民思想的な傲慢極まる論理に依拠する。

    これら何れの場面もいつ果てることもなく延々と叙述されるのである。これもこの小説の特徴の一つである。

    ここで一つ不満を述べさせてもらいたい。ソーニャがラスコーリニコフに所望されて聖書を読んで聞かせるところは感動的であるが、いわば彼にとって聖母マリアにも相当する彼女の描写がそれほど多くないことである。ラスコーリニコフが初めて罪を告白したのはソーニャへであり、彼に自首を促すなど重要な役目を果たしたのも彼女である。

    エピローグでシベリアに流刑されたラスコーリニコフについて行き身の回りの世話をするのは彼女である。互いに手を取り合って残る刑期を指折り数えて待つ彼らの姿は美しい

  • 重い。

  • ロシア文学最高傑作(らしい)を読む。

    ラスト数ページにて急にラスコーリニコフの思想がしっかりと分かりやすく語られる場面があり、そこでこの本の主題みたいなところを知る。非凡人が行うルールの無視、破壊というものが、どこまで認められるのか。過去の偉大な英雄の行動も、その時の法律に基づくと必ず有罪となるようなことであるという事実を考えると、ラスコーリニコフの思想も強ち暴論ではないのか?とも。

    ラスコーリニコフの一挙手一投足にどんな意味や意図があるのか考えているとあまりにも進まないので、とりあえずさくさく読んでいる。少し辛さはあったが、最後の方で面白さが出てきたので、下巻も読む?

  • 主人公ラスコーリニコフの中に渦巻いている感情とそれに付随する行動に一貫性がないところが良い。
    亭主を喪い路頭に迷うであろうマルメラードフ一家に葬式代として大金を握らせるシーンがあるが、そもそもこの母ですら非常に困窮している中なけなしのお金をなんとか送ってくれたものであり、しかも自分が老婆を殺した理由も困窮からくるものだったのに!美談にも捉えることができるこの行動だが、これは彼が弱い人を見捨てることができないという正義感によるものではないだろうし、非常に自惚れた行いだと思った。
    葬式代をあげてしまう突発的な行いそのものには善も悪もなく、その後ラスコーリニコフ自身がどういう人間として位置付けたいのか(「乗り越える」力を持った人間になりたい!)ということが付与されたと考えると、今までの行動も、あと付けあと付けの繰り返しだったからより一層のちぐはぐさがあったのかもしれないと納得する。
    「優しい」や「繊細」という言葉が、印象として近いカテゴリにあるけれど意味は違うように、施しの気持ちがあるからといってそれは慈しみや他者への愛情であるとは限らないのかもしれないと思った。
    また親友ラズミーヒンでさえ、善良で精神的に安定した好青年の印象があるが、時に人に強く当たったり、誰も彼もにどこかしら過剰な部分がある。彼ら登場キャラクターにはフィクション特有の、一つの理念に基づいた行動の一貫性がない。『罪と罰』は、よく苦悩し渦巻く人間の内面を、否定も肯定もせずただそこにあるように描いている。「人間」であることそのものを肯定し、完璧な「1」にしがみついている人の呪いを解いてくれるセラピー作品なのかもしれない。

  • どうして人を殺めてはいけないのか、これを読めばわかる。

  • 怖いー

  •  ロシア文学の最高傑作と言われる「罪と罰」。長編かつ難解なので読むのに時間がかかった。主人公の動機が不純だと感じたので感情移入は出来なかったが、「悪を罰するのに一部の選ばれた者は罪を犯してもよい(それがいずれ正義となる)」という考えは、ドストエフスキーが投げかけた一つのテーマでもあるのだろう。

     刑事との心理戦は正直長いと感じたし、罪に苛むまでの時間も悠長だと思ってしまった。とはいえ、ニヒリズム、社会主義思想、キリスト要素など沢山のテーマが散りばめられているのは流石だった。そしてヒューマニズムが失われることへの警鐘も。

     最終的に愛の力(と言うと安っぽく聞こえてしまうが)が垣間見えたのは少し気恥ずかしかった。そこで救われるんかい!というのが率直な気持ちだが、教養のためにも読んでみてよかった。

  • 登場人物の名前が長い上に、愛称、フルネーム、苗字だけなど関係性によって名前がワラワラ出てくるので、この人誰?ってなることも少なくない。内容自体は至ってシンプル。どんなにくだらない人間だと思っても殺人はいかんよ、殺人は。

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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