人生論 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060179

感想・レビュー・書評

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  •  大変ディープな内容を扱ってはいるが、よく読むと納得できる部分が多く、さらに同じ内容を折に触れて反復している。深い作品だけにしっかりメモをとりながら読めば良かったと、読み終わってからしばらく経つ今になって後悔。

     人間の生命は幸福への志向である。しかし、人間は理性という天性の特質ゆえに、動物的個我の追求によっては真の幸福を達成できない。なぜなら、不可避な死を認識してしまう以上、生きている間のいかなる個人の快楽も結局は無に帰す虚しいものであるという事実から逃れることができないからだ。根源的には満たされえない個人の快楽を追求する人々は、不可避な死から必死に目を背け、それに常に怯えながら生きていくしかない。
     この個我としての人生に対する絶望から立ち上がり、真に幸せに生きるために必要なものこそが、全人類に対する愛である。自己ではなく他者の幸せを追求することに人生の意義を見出すならば、自分の死は全く恐れるべきものではなくなる。自分の死は、他の全人類の終焉を意味するものではないし。むしろ然るべき時に自分が死ぬことは人類全体の繁栄にとって必要不可欠なものであるのだ。
     人生における、個人に起因しない理不尽な苦しみすらも、自らの生命を人類全体という視点から捉え、全人類との因果の鎖の中で見れば、自分の味わう苦しみは全人類が負っている罪(原罪?)に起因するものである。自分はそれを味わっているに過ぎないし、自分が味わうことによって他社の苦しみは軽減される。すなわち、理不尽な苦しみの耐えがたさも、人類への愛に追って軽減される。むしろ、これらの苦しみの、個人に限定された因果関係からは説明しがたい理不尽さは、生命を一個我として捉えるべきではないということを示している。

     以上、本作品の要旨を私なりに整理した。しばしば論理が明確に示されないまま自明であるかのように断定に至る部分も少なからずあり、完璧に理解しきるには難しい、だが、偉大な思想家トルストイの人生についてのスタンスを学べたことに意義はあると思う。個我の快楽を否定し全人類への愛によって生きるという人生はいくら理性的ではあるとはいえ実際なかなか実行できないものではあると思うが。
     自分のために内容を整理した感が強いのでとても長くなってしまってごめんなさい。
     

  • ダメだー。途中で挫折。相当気合入れて読まんと無理だなー。しばし積読へ。
    たちまち、目的と手段を履き違えるな、ってことは分かりました。

  • 生命や愛、死についてのトルストイの考察。

    人生において、動物的個我に執着するのではなく、それを理性的意識に従属させることで、生命や死の本来の姿が見えてくる、というのが、一番の主張でしょう。

    生命は苦しみの連続であるが、苦しみこそが快楽を引き起こし、生命をさえ動かす、という考え方に非常に魅力を感じました。死についての考察にはいささか違和感がありますが。

  • トルストイがパスカル、カント、キリストなどたくさんの
    先人の教えを受けて究極の博愛を示す。
    正直、今、自分のものとして、実行することはできない。
    ただ、その理想への道筋を追うことで、得るものは多いと思う。
    まとめると『人類が 理性と愛で 幸を生み』といったところでしょうか?

  • むずかしい!!!ので、なかなか進まない。
    人間の幸福について語っているのだが、確かにそうだ!とうなずける文言がいたる所で出てきます。

  •  「人間は、何のために生きなければいけないのか?」
    おそらく今、哲学と呼ばれる学問が生まれてから、いや人が言語を使うようになってからずっと考え続けられていたであろう、命題に対して、トルストイが答える。

     「自らに対する愛を捨てよ。そして本能が望むものではなく理性的な意識をもって、他の存在をいつくしみ、それらの幸福を追求せよ」

     自己満足で終わっている、自分の利益を考えて、活動している以上、幸福は得られない。

     苦しい人生を送る事になるのかもしれない。裕福には過ごせないかもしれない。でも、真に幸福であるとは何なのか?人から存在を認めてもらうことではないのか。たとえどんな事があろうと、人に信頼されること。それだけでも十分生きる意義ではないか?そしてそれに応える意味でも、ノーブレス・オブリージュ、すなわちその信頼に応える価値を提供すれば良いのではないか。。ちょっと考えがまとまらない。。

  • 感銘を受けた。
    聞くと、父は高校生の時にハマったそう。
    私が高校生のころは太宰治にハマっていて、トルストイは読まなかった。
    父が高校生でこの思想にハマってたんだと思うと感慨深い。

  • 2023.11.28読了


  • 非常に難解な文章だった。人生論とあるが、幸福論としたほうが相応しいような気がする。

     人間は動物的自我によって自分個人の為の生き方に疾走ろうとし、それこそが幸福であり生活の凡てだと思い込む。しかし、あらゆる人間が自分個人の為に生きると考えると、その為には他人を排除しようとする者が出てくる。とすると、自分個人の幸福とは容易に手に入るものではない。ましてや病気、衰え、死などが刻々と近づいているわけである。それを避けることはできないし、そうなると自分個人の幸福はまやかしのようなものであることに気づき、人生の矛盾にぶち当たる。
     したがってほんとうの幸福の為には自らの動物的自我を理性的意識に従わせる必要がある。そこから発生するのが愛である。愛とは自分個人の幸福よりも他者への善、自己犠牲を伴う行為である。真の愛の為には死をも恐れなくなるのだ。

     拙い要約としてはこういう内容であった。おしまい。
     
     

  • トルストイだもの、覚悟はしてたが、予想以上に難解だった。解説にあるとおり、表題は『人生論』より、『生命について』の方が相応しい。一文一文、噛みしめるように読み進め、なんとか最後まで読了。

    「人間の生命は幸福への志向である。人間の志向するものは与えられている。死となりえない生命と、悪となりえない幸福がそれである。(p247)」

    結びのフレーズは、読了した者だけが味わえる高揚感がある。

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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