草の竪琴 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095041

感想・レビュー・書評

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  • 「ティファニーで朝食を」「冷血」が有名なカポーティ。読んでいる間絶えず、森や、土や、川の匂いがしていたような気がする。文章も美しい!この前に読んだ作品も素敵でしたが、この作品でカポーティをがっつり好きになった。

  • ともすると、綺麗って悲しいこと。
    それでも、ドリーみたいな年のとりかたができるって素敵だし、恵まれてること。
    「夢を見れない男なんて、汗をかかない男といっしょ。毒を溜め込んでいるものですよ。」
    「ねぇ、コリン。あなたにはあたしの年になるまでに分かっていてもらいたいの。世界ってつまらないところ、嫌なところなのよ。」

    けど、空想の世界よりもリアルのほうがよっぽど豊かなはず!!

  •  木の上に住む人々は、どこかしら社会への順応を意識的にしろ無意識にしろ拒んでいる。ドリーが、自分のピンク色の部屋に妹を決して入れないように、何とか安全地帯をこしらえるが、コリンが過去の自分を「閉じたえん、つまり環の羅列であって、決して螺旋形のように次から次へと連なっていくことはな」いと言っているように、そこからは何かアクションを起こさない限り出ることができない。
     コリン自身、最後に跳躍を果たしたように、木の上での生活は、その安全地帯からでなければならないことを生活者に明示した。彼らにとっても読み手(彼らの目線を通してから、ではあるが)にとっても、保安官など木から引きずり降ろそうとする側の人間は、悪魔のように映る。しかし、これは手を替え品を替え、我々現代人だって同じようなことをしている。異端者は「困った人」になっちゃうし、木から下ろす行動自体が悪だとも思わない。
     同じような葛藤を抱えた人々と分かち合い、愛することができた時点で、木はその役割を果たすことができたのだろうと思う。
     ただ、引き摺り下ろす側の必死な姿には、どこかに羨望の気持ちが潜んではいないだろうか。現に、木の上の生活はとても魅力的に描かれており、正直うらやましい。木の上にまではのぼらなくとも、こうして時間を趣味に使う空間くらいは、何とか確保し続けていきたいと強く感じた。
     最後に。タイトルから察しが付くように、詩的な文章が多い。p46あたり読んだら、もう部屋に蛾が出ても怖くなくなると思う。見る目をしっかり養っていれば、世界はいくらでも美しくなるんだと実感させてくれる小説だった。

  • カポーティの小説の中に出てくる登場人物に、わたしはいつも共感する。だけど、その登場人物が創り出す人との壁、というか薄い膜みたいなものに、奇妙さを抱く人は多いらしい。(解説によると)
    奇妙さじゃなくて、寂しさかな。

    じゃあなんだ、わたしは社会不適合者!?と思ったり思わなかったり。

  • ノスタルジーやイノセントを主題とした作品を書く場合、多くは独りよがりの美化されたものにしかならない。
    けれど、カポーティーの美化は他とは違う。
    それは決してきれいではなかったものまできれいに書いてしまうのではなく、あの頃自分が本当にきれいだと思ったものだけを正確に書いているのだ。
    だから、彼の小説はどこまでも透明で幼く、美しい。

  • "スカイ・クロラの引用図書を読み尽くそうシリーズ" 第五弾です。
    こちらはシリーズとして一応最終巻にあたる「クレイドゥ・ザ・スカイ」の引用文。

    冒頭からかなり印象的。海外小説の醍醐味というか、見たことのない風景へのトリップ感が楽しめます。
    内容は、「ティファニー」でも書いたけれど、かなり懐古的。過去の中に閉じ込められてしまいそうな危うさを感じながらも、美しい情景、無垢な老女ドリーの姿に引き込まれてしまう。文体も詩的で心地よい。

    ただ…物語としては最高に美しいのだけれど、ここに浸っていては前に進めない。実際、著者カポーティは晩年、アルコール漬け、薬漬けになっていたそうです。
    私が目指すのはそういう姿じゃない。過去は美しいけれど、現前する世界の美しさもしっかり汲み取って、愛していたい。
    そんなことを感じさせる小説でした。

  • 正直途中で、「は?で?」って思うことがあって
    解説読んだらどうも私小説だったみたいで。
    イッヒロマンじゃなくて日本語的な私小説ね。
    作者が主人公で実体験を語るようなものに近い小説だった。
    のでなんだか納得。
    本人には重要な事柄でも、傍から見たらそうでもないことってあって
    それを小説として仕立てられても
    作者に共感できない以上無理っていう
    それだけの話なんでしょう。きっと。
    小説の良し悪しではなくて。
    合う合わないの話。


    一方的に知られていて、
    「大きくなったね」
    って言われても
    こっちは覚えてなくて
    知らないオジサンオバサンの家で寝起きを共にする
    そういう心細さなら共感できる。
    けどそこで私はオジサンに恋心を頂いたりはできなかったから
    その時点で多分ひいちゃうんだろうな、と。

    だからイマイチ感情移入できないままに
    彼女が死んでしまったので、「はぁ」って思ったんだと思う。
    私小説が嫌いなわけではないんですけどね。けして。

  • 詩を読んでいるかのような軽やかさ。
    優しい一冊です。

    カポーティの書く文は一行一行がとても美しい。

  •  カポーティが幼い頃、経験したであろう、田舎での静かであって温かな風景ではじまります。
     少年が大人へと変わっていく、急速な心の変化をゆっくりと、でも確かに書かれている作品です。

  • 2009/
    2009/

    自伝的な材料を基にした中編。過去を過去としてあとにするセンチメンタリズムがすがすがしく、デビュー作のような閉塞感のない作品である。

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