- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102159750
感想・レビュー・書評
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下巻は,ビックバン理論が紆余曲折を経ながら定説になっていく様子を描いている.
フレッド•ホイルが星が重い元素をつくるるつぼの役割を果たすのを明らかにしてくエピソードがいちばん印象に残った.特に,綿密な計算の後,7.65MeVの炭素12の励起状態の存在を予測し,それがファウラーによって実際に発見される場面は科学者のすごみを感じさせる.
その後,理論の検証が人工衛星などの国家的プロジェクトが中心になってくると,ひとりの科学者の個人プレーより多くの科学者のチームワークが大切になってくる.それが科学の進歩にわるいわけでももちろんないが,話し手のテンションがいささか下がってしまうのは仕方ないのかもしれない.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『暗号解読』はあまり惹かれるテーマでなかったので、とばして先にこちらを読了。期待通りで、一気に読んだ。
天動説の時代から、大勢の人によって理論と観測が積み上げられる様子を描くのはさすが。昔から変わらない、科学の精神に触れる心持ちがする。
付録の「科学とは何か?」の中では、レヴィ=ストロースのものがいちばん好きかな。
ひとつだけ。章末の、試験前のまとめノートのようなページは、あまり必要ないのでは...と、思った。 -
考えること、疑問に思うことを止めてはいけないなと思う本。
今ある常識が常識じゃないことだってある。
今はで当たり前のビッグバンも、長い間、本当に多くの人たちの試行錯誤や努力、忍耐力による結果なんだ。
宇宙のことを考えると自分の悩みなんて小さく思えるけど、化学反応によって地球ができて、こんなに悩む人間ができたこともまた不思議。 -
第四章 宇宙論の一匹狼たちのまとめ
①ルメートルはハッブルの膨張宇宙の観測を、
自分のビッグバン・モデル(宇宙創造の瞬間があり、宇宙は進化している)が
正しいことを示す証拠と考えた。
②アインシュタインは意見を変え、ビッグバン・モデルを支持した。
↓
しかし科学者の大多数は、宇宙は永遠で静的だとする従来のモデルを信じ続けた。
↓
彼らがビッグバン・モデルを批判したのは、
宇宙のほうが、宇宙に含まれる星よりも若くなってしまうからだった。
ビッグバン宇宙 VS 永遠で静的な宇宙
ビッグバン理論の立証責任は、ビッグバン支持者の肩にかかった。
証拠を挙げられなければ、永遠で静的な宇宙が優位に留まるだろう。
↓
原子物理学は重要な検証の場となった。
今日の宇宙には軽い元素(たとえば水素やヘリウム)のほうが
重い元素(鉄や金)より多いことを、
ビッグバン・モデルは説明できるのか?
③ラザフォードは原子構造を導き出した。
中心の原子核に陽子+と中性子が含まれ、
その周りを電子-が軌道運動している。
↓
核融合:二つの小さな原子核が融合してより大きな原子核ができ、
エネルギーが放出される。
これが太陽が輝く理由だ!
④1940年代、ガモフ、アルファー、ハーマンは、
初期宇宙を陽子、中性子、電子からなる高密度のスープだったと考えた。
ビッグバン直後の高温の中で、核融合により
どんどん大きな原子が作れるのではないかと三人は期待した。
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成功:ビッグバンは、今日の宇宙が90パーセントは水素、
9パーセントはヘリウムでできている理由を説明することができた。
失敗:ビッグバンでは、ヘリウムより重い元素を作ることはできなかった。
⑤またガモフ、アルファー、ハーマンは、
宇宙創造の瞬間から約三十万年後に光が自由に進めるようになり、
その時の光のこだまはいまも検出できるはずだと予測した。
その光のこだま(いわゆる『宇宙マイクロ波背景放射』)が見つかれば、
ビッグバンんが実際に起こったことが証明されるだろう。
しかし宇宙マイクロ波背景照射を探そうとする者はいなかった。
⑥1940年代、ホイル、ゴールド、ボンディは定常宇宙モデルを提案した。
このモデルによれば宇宙は膨張するが、
銀河間に広がっていく空間に新しい物質が生成され、
やがて新しい銀河が形成される。
↓
彼らは、宇宙は進化するが何も変わらず、永遠の昔から存在したと論じた。
この見方はハッブルの赤方偏移の観測と矛盾せず、
従来の永遠で静的な宇宙モデルにとって代わった。
宇宙論の論争は、この二つのモデルが中心となった。
ビッグバン宇宙 VS 定常宇宙
どちらのモデルが正しいかについて、宇宙論研究者の意見は分かれた。
第五章 パラダイム・シフトのまとめ
①1950年
宇宙論の世界は定常宇宙モデルとビッグバン・モデルに分類されていた。
どちらのモデルも、宇宙を正しく記述していると主張するためには、
答えるべき問題や解消すべき矛盾がいくつも残されていた。
例:もしビッグバン・モデルが正しいなら、
・なぜ宇宙が星よりも若くなってしまうのか?
・重い元素はいかにして形成されたのか?
・CMB放射は存在するのか?
・銀河はいかにして形成されたのか?
②まずバーデが、次にサンディッジが
銀河までの距離を修正し、
ビッグバン・モデルは星や銀河の年齢と
矛盾しない古い宇宙を予測することが示された。
③ホイルは重い元素の形成を説明する仕事に着手し、
重い元素は年とった星の中心部で形成されることを示した。
元素合成の問題は解決された。
・重い元素は死につつある星の中で形成される。
・軽い元素はビッグバンの直後に形成された。
④1960年代の天文学者は、電波天文学により
新しい銀河(若い銀河とクエーサー)を発見したが、
それらは一般に宇宙の遠いところに存在した。
↓
銀河の分布が均一ではないという事実は、
宇宙はどこでもほぼ同じだと主張する定常宇宙モデルに反するものだった。
↓
この観測はビッグバン・モデルと完全に合致した。
⑤1960年代は
ペンジアスとウィルソンは、
1948年にアルファー、ガモフ、ハーマンによって予測されていた
CMB放射を偶然に発見した。
これはビッグバンに有利な証拠となった。
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セレンディピティーに恵まれた二人の発見は
1978年ノーベル賞を受賞した。
↓
宇宙論研究者の大半はビッグバン陣営に乗り換えた。
⑥1992年
COBE衛星は、宇宙のさまざまな方角からくる
CMB放射に微小なゆらぎを発見した。
その揺らぎは初期宇宙に微小な密度のゆらぎがあったことを示唆し、
それは銀河の形成の種となったはずだった。
永遠宇宙からビッグバン宇宙へのパラダイム・シフトは完了した。
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ビッグバン・モデルは正しいことが証明された。
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これですべて終わったのか? -
科学者ってゆーと、論理的で、感情的でなく、なかなか冷たい人間ってイメージがある。
全然違うわ。驚くほどハートフル!
子供の喧嘩かって思えるエピソードも何個かあった。まあその子供っぽさが科学者には必要なのかもしれないけれど。
ビッグバンとは誰かひとりの成果によるものではない。そこには多くの人々が、意図した人も意図せぬ人も、その理論の確立と実証に寄与していたのだ。
「フェルマーの最終定理」でも感じたけど、こーゆう知識のバトンって素敵。
ちょっとずつ、宇宙のあらましが明らかになっていってるんだなぁ。
俺が生きている間、どのぐらい宇宙についての理解が捗るんだろうか。 -
訳者による解説と内容がかぶってしまうが、「ビックバン説vs定常宇宙説」の結末までが主題として記述されていて、最新の宇宙物理学を期待していた自分としては若干不満が残った。エピローグではそのあたりも少し触れていたので確定した説は無いにしてもそのあたりをもう少し厚く取り上げて欲しかった。
文体や構成についてはさすがの一言。表現や図解も適切で非常にわかりやすい。科学者達の人間性がわかるエピソードが多数でその点はとても面白かった。
あと最後のオチで笑ってしまいました。 -
サイモン・シンの三部作を読破完了.理系なら読んでおきたいシリーズ.どれも面白かったけどこの宇宙創成のドラマは凄かった.どんな科学者も自分の支持する学説を貶められては簡単には対応できないのは当たり前のことのようだ.コペルニクスやガリレオの天動説・地動説の論争からビックバンモデルに関する紆余曲折まで,科学者が何を考え,どう行動してきたかを教えられたと思う.
次は「代替医療のトリック」を読みたいけど文庫化待ちかな -
そろそろ青木薫さんが訳している他の本に手を出そうかと思っています。
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人間が宇宙を理解しようと観測し理論を立て知恵を絞ってきた、紀元前から現代に至る壮大な過程をまとめています。
2000年前のギリシア人はすでに地球が丸い事を知っていて、地球の直径も知っていた。
そして直径が分かると芋づる式に地球と月、太陽の距離も分かってしまう。
地球の直径は一本の棒と中学生レベルの三角関数を知っていれば良く、これを紀元前に考えた人がいたことを初めて知った。
下巻では、ビックバンから続く星の活動と元素記号の周期に深い関係があった事。文字通り生き物は星の屑で出来ているという話がそこに繋がるのか!という驚きと刺激に満ちた本だった。