- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102159750
感想・レビュー・書評
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ちょうどこれを読んでいる頃に、TVから録画しておいたウォルター・ルーウィン教授の物理を扱った、MIT白熱教室 特別講義を見終わった。
その最後は、
「この講義で君達は、白色矮星と中性子星のスライドを見た。だから最後にはブラックホールも見たいと思うのは当然のことだ。しかし、ブラックホールからは何も抜け出すことはできないから、写真で撮ることもできない。そこで今回は、白鳥座X-1のドナー星を見せるとしよう。でも、君たちは帰ったら家族や友達にこう言えるだろう。
ある写真を見せてもらった。その隣には、見えないけれど、ブラックホールがあった。
これが知識の素晴らしさだ。例え見えなくても、その存在を知ることができる。」
見ることができない発見された知識の歴史。
・読者は、空間のあらゆる部分が膨張し、銀河はその空間内で静止しているというなら、銀河それ自体も膨張しているのではないかと思われるかもしれない。理論上はそれもひとつの可能性なのだが、実際には、銀河の内部には強い重力が存在するため、銀河の膨張は微々たるものでしかない。
…ウッディ・アレンの映画『アニー・ホール』の冒頭近くにある回想シーンで、シンガー夫人は、なにやらふさぎ込んでいる息子のアルヴィーを精神科医に連れて行く。少年は医者に向かって、宇宙は膨張していると本で読んだが、膨れ上がって破裂したらすべてはおしまいだと話す。すると母親が口を挟んでこう言った。
「宇宙がなんだっていうの?あなたはブルックリンにいるのよ!ブルックリンは膨張してないの!」
シンガー夫人はまったく正しかったのだ。
・科学で耳にするもっとも胸躍る言葉、新発見の先触れとなるその言葉は、「ヘウレーカ(分ったぞ!)」ではなく「へんだぞ…」だ。―アイザック・アシモフ
・われわれが生きるために、十億、百億、それどころか千億の星が死んでいる。われわれの血の中のカルシウム、呼吸をするたびに肺に満ちる酸素―すべては地球が生まれるずっと前に死んだ星たちの炉で作られたものなのだ。―マーカス・チャウン
(星は核融合する際に様々な元素を作り、超新星爆発でそれを宇宙にばらまく。太陽は第三世代の星と推測されている。)
・アレグザンダー・フレミングがペニシリンを発見したのは、窓から飛び込んできた一片の青カビがシャーレに落ちて、培養していた細菌を殺したことに気がついたからだった。それまでにも大勢の細菌学者が、培養していた細菌を青カビに汚染されたことだろう。だが彼らはみな、何百万人もの命を救うことになる抗生物質を発見する代わりに、がっかりしながらシャーレの中身を捨てていたのだ。ウィンストン・チャーチルはかつてこう述べた。「人はときに真理に蹴躓いて転ぶが、ほとんどの者はただ立ち上がり、何もなかったようにさっさと歩き去る。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
CMB放射のゆらぎあたりが理解できなかった。ものすごく噛み砕いて書いてくれてるので申し訳ない気がした。
終盤で今だ解けぬ謎、として書かれていた暗黒物質がロマンチックすぎる。この謎はそう遠くない日に解明されるのかもしれない。今も叡智のリレーは続いてるのだなぁ。事実を知れば知るほど新たな謎を発見する、という人類の果てしない冒険は、まさに膨張し続ける宇宙と同じところに帰結するんじゃないかしらと思った。 -
12/17読了
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夜空に輝く星たちを美しいとは思いませんか?思わない?それなら君とは話をしない。那由多の彼方から届いた光、それは古代の人々に夢を抱かせ、近代の科学者には宇宙の起源への手掛かりとなった。天文学者達の地道な観測の歴史、それが現代の物理学理論と合流して100億年前の世界を明らかにする。翻訳者の「科学的方法の特徴は、人間は間違いを犯すということが、あらかじめ組み込まれている事だ」という言葉はビッグバン理論が誠実さの結晶である事を証明している。夜空に輝く星たちの、理由を解き明かそうとする事は美しいとは思いませんか?
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サイモン・シン、3冊目。ビック・バンモデルの検証過程を追いながら、科学的手法というものを感じることができる良書。あくまで、感じる…。原子物理学あたりは、どうしてもポカーンとしてしまった。でも、それにも耐えて読み進めることができたのは、科学や、科学的であることに対する、ワクワク感と興奮。♪ららら〜科学の子〜
科学者とは、正しい答えを与える者ではなく、正しい問いを発する者である。(クロード・レヴィ=ストロース/フランスの人類学者) -
これから、空を見上げる事がとてつもなく楽しくなる本。
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下巻も興味深し。ビックバンと定常宇宙の正当性争いを通して、まさに科学的方法とはなにか、を著者は説きたかったのだと思う。
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フェルマーの定理が証明されるに至る経過を非常にうまくストーリーに乗せた著作をよみ、サイモン・シンと科学本のファンになった。
それゆえに、この本を読むことになるのは必然ではあったが、フェルマーの定理ほどの感動はなかった。
やはりゴールが明確でないからか。 -
僕は根っからの文系人間なので、数学やら物理やらの世界は理解できない。でも理解できないこうした理系の世界を、わかりやすく説明しながら、その背景にある人物像や歴史に触れつつ物語を運んでいく著者のS・シンが大好きです。著者の処女作『フェルマーの最終定理』を読んで一気にファンになりました。
数学に興味が無くても「無限」、「虚数」やら「円周率」とかの深遠さを誰にでも理解できる処女作は素晴らしい作品でした。『フェルマー』はその定理の単純さも手伝って、数学の魅力に引き込まれる題材であるという点もありますが、その点を差し引いても必読の本だと思ってます。
次作の『暗号解読』が出版されたとき「はぁ、暗号?」って思いました。なぜ暗号が数学に関係しているのかが、わからなかったのです。でも、暗号というのものに興味があったので、読み始めたらこれがまた面白くて一気に読んでしまいました。「暗号って数学と関係があるんだ!」と滅茶苦茶感動してしまいました。そして、その暗号の技術がPC(ネット)にも大きく関係しているという物語の収束感もたまらない作品でした。『フェルマー』と『暗号』は甲乙つけがたい、どちらとも文句なしの★★★★★です。
というわけでS・シンの最新作が文庫本になった時、「宇宙か。こりゃまた面白そうだ」と思い発売日に購入し、早速読み始めました。ところが読んでるうちに「う~ん…」となって、1章を読んで止めてしまったのです。何か理解しずらく、その歴史もあまり興味を惹かなかったのです。
理系の本というのは、こういうリスクがあると思います。読者が理解できない数式、公式や定理を並べても全く面白くない。それらの公式・定理等がどういう意味合いをもっているのか、加えて、それら公式・定理等を分かりやすく説明しなければ、(少なくとも僕のような文系人間のような)読者は読み続けることが難しいと感じるというリスクです。
3年ほど本棚にあった、途中で読むのを止めたこの本を手に取り「せっかく買ったし、読むか」と気合を入れて読みなおしました。そうして読んでみると、上巻の終盤に出てくるアインシュタインの(特殊・一般)相対性理論の件にとても惹き込まれました。
それでも下巻の中頃からまた「う~ん…」となってしまい、興味を失っていきました。
いつもとおり、S・シンの筆致は冴えているとは思いますが、扱うテーマが深遠すぎて著者も扱いに困ったのではないかなと感じるのです。それでも有名・無名な人物が宇宙の秘密に迫ったというのは、よく理解できました。そして宇宙というのはあまりにもスケールが大き過ぎて、一般人には理解し難い世界だということもわかりました。
S・シンの次作は医療がテーマだと聞いています。数学がどうからむのかよくわかりませんが、ただこういう理系の事柄をテーマに書かせたら天下一品であることは間違いないと思います。ハヤカワ文庫から数学をテーマにした一連の文庫本が出版されていますが、世間の「理系を知りたい」という風潮をも反映しているのかもしれませんね。世の中が数学で出来ているのならば、少しでもその世界に触れてみたいという欲求は当然だし、そういう欲求を満たす本に数多く触れたいと思います。そしてその筆頭はこのS・シンであることは間違いないと思います。