宇宙創成(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159750

感想・レビュー・書評

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  •  核融合、核分裂反応、が理解できました。

  •  1940年代,ビッグバンを支持するガモフ・アルファー・ハーマンは,初期の宇宙が陽子・中性子・電子からなる高密度のスープだったと考えた。これにより,現在の宇宙を構成する物質の大半を占める,水素とヘリウムが合成されることが説明できた。また,彼らは宇宙誕生からしばらくは,宇宙は高温プラズマ状態だったため不透明で,約30万年後にようやく原子が合成され光が進めるようになったと考えた。そして,そのときの光は今でも観測できるはずだと予測した。宇宙マイクロ波背景放射である。
     しかしその観測をしようとする者はおらず,宇宙背景放射は実証されないままだった。ガモフ・アルファー・ハーマンと同時期に,ホイル・ゴードン・ボンディは定常宇宙モデルを提案した。彼らは宇宙は確かに膨張するが,広がった空間に物質が生成され,宇宙は常に無限で定常状態であると主張した。定常宇宙モデルは一見不自然だが,こう考えると納得がいく。我々は既に天動説を否定し,自分が宇宙の中で特別な場所に住んでいるわけではないことを確かめた。同様に,我々は宇宙の中の特別な時代に生きているわけでもない。宇宙には,位置的にも時間的にも原点はなく,ただ無限である。
     ビッグバンモデルでも,定常宇宙モデルでも,赤方偏移は十分説明できる。宇宙論研究者たちの意見は分かれて論争が続いたが,決め手となる観測がなかった。重い元素がいかにして作られたか,という元素合成の問題も未解決だった。ちなみに「ビッグバン」とはホイルが敵陣営をけなすために使った言葉だ。
     まず元素合成の問題が解決される。重い元素は,星の中で核融合反応が進むことによって合成される。水素からヘリウムが作られ,ヘリウムからさらに重い元素が作られる。大きな星は最後に超新星爆発を起こし,重い元素をまき散らす。この過程を何世代も繰り返すことでウランまでの元素合成が説明できる。
     そして1960年代,ついに宇宙背景放射が観測される。電波望遠鏡の微小なノイズの原因を探っていたペンジアスとウィルソンが,何とまったく偶然に発見したのだ。望遠鏡をどこへ向けても入ってくるマイクロ波の雑音が,忘れ去られていた宇宙背景放射だということに彼らは気付いた。宇宙背景放射の観測により,ビッグバンモデルは定説となった。ルメートルは幸運にも自分の理論が観測によって確かめられるのを目にすることができた。
     その宇宙背景放射はほとんど一様に見えた。一方,現在の宇宙は均質でなく,銀河や銀河団があって粗密がある。この不均一な分布は何に起源するのかが次に問題となった。宇宙背景放射には微小なゆらぎがあって,それが種となって現在の宇宙の構造が生まれたのではないかと予測された。このことを確かめるために,COBE衛星が打ち上げられた。1990年代,COBE衛星は宇宙背景放射にわずか10万分の1のゆらぎが存在することを確かめた。このゆらぎが銀河形成の種になったのだ。ビッグバンモデルはいよいよ確からしさを高める。
     エピローグにおいて,背景放射よりも初期の宇宙の理論について補足がされている。中でもインフレーション理論は重要だ。背景放射のゆらぎがなぜ生じたのか,地球から見て宇宙の正反対がなぜ同じように見えるのか(地平線問題),なぜ宇宙の曲率は0なのか(平坦性問題)を一挙に説明してくれる。インフレーション理論といえば佐藤勝彦先生だが,欧米ではあまり知られていないらしい。グースの仕事とされていて,佐藤先生の名前は訳注に記されているのみである。少し残念。ともかく,この理論では,宇宙のごく初期(10E-35秒後まで)に途方もない膨張が起こったとされている。生まれたばかりの宇宙のごくごく小さな密度ゆらぎが,インフレーションによって引き延ばされた。宇宙の曲率は,インフレーションでほとんど0になり平坦になった。インフレーション前は近所だった宇宙の二地点が突如として遠くに引き離された。
     他にもダークマターやダークエネルギーの話,量子宇宙論についてもほんの少し触れている。宇宙の始まりについて,断片的にはいろいろと聞き及んでいたが,それについての歴史とドラマも含めて概観するのにうってつけの本だった。読んでない人は是非!

  • 20世紀から現在に至る科学史上最大の論争について、さらにまだまだ宇宙が未解決であることを示して終わる

  • 定常宇宙モデルとビックバンモデル。天文学者たちの立場を二分していた論争が結末を迎える。

    宇宙を調べる手がかりは事実上、星の発する光しかない中で、元素合成や電磁波など素人には到底考えつかないようなアプローチで宇宙の真相に迫る。

    聖職者でありながら天文学者、セレンディピティに恵まれた大発見など、科学者たちのドラマが満載。

  • 上巻から続けて読むと、くどくなる。学者同士の喧嘩について知りたいわけではない。

  • 「フェルマーの最終定理」の筆者による第3作目。各章ごとに「まとめ」が入っているのはとても分かりやすい。

    理論的な話はいまいちピンとこなかったけれど、前2作同様、研究者達の人間ドラマが面白かった。あと天文学者が極度の集中を必要とする重労働だということは驚きだった。

  • 上巻での基礎説明を終えて、いよいよビッグバンが今日における宇宙創成の最有力説であることの説明をする。
    途中、専門的な知識にならざるを得ない箇所があり、そこは少し退屈するが、様々な発見や人間関係のドラマが描写されており、楽しめる。

  • 2011/8/19 読了。

    サイモンシンの著書は、数学や物理といった化学の進歩や理論の解説だけでなく、それに関わった人たちの人間模様が描かれているため、読み物として大変優れているように思える。
    そのドラマティックな展開と数学的・物理学的な内容を組み合わせることで、多少困難な内容であっても読み進めることができ、記憶にも残りやすくなっている。理系で前提知識がある人はもちろん、文系などこの分野に興味はあるがどこから手を付けていいか分からない、という人にはお勧めである。

  • 宇宙論の歴史についてのノンフィクション物語。
    神話から最新のビックバン理論まで、宇宙論が辿った道筋をやかりやすく描いていて、面白い。
    また、科学理論がどう誕生し、どう選択されるのかがわかる。

  •  科学者も人間ドラマなんだなぁと思いつつ……こー。後半は、未来過ぎて付いていけてない感がある。結論が出ない。
     下巻を読んで「面白い!」と感じるのはロマンのある人で、「うわわわわどうなるんだろう」と思う人(私)は夢がないのかも。

     けれど、200年も経てば「あの時代ビッグバンなんて言ってたんだって」ってなるんだろうな。パラダイムシフトってすごいな、と思った。

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著者プロフィール

イラストレーター

「2021年 『世界じゅうの女の子のための日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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