さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102181119

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  • 読んだ本 さようならバードランド ビル・クロウ 村上春樹訳 20230810

     ビル・クロウっていうジャズミュージシャンの、50~60年代のジャズ黄金期時代の回想録。
     ビル・クロウって知らなかったんだけど、スタン・ゲッツやズート・シムズ、ジェリー・マリガンなんかとやってたそうで、改めて確認すると、いろんなアルバムにクレジットされてました。ルーズで貧乏で、だけど演奏するのが大好きなジャズミュージシャンのエピソードが連なっていて、時代の空気を感じますね。と言っても、出てくるミュージシャンのほとんどが知らない名前だったんですけど、チャーリー・パーカーやセロニアス・モンク、アート・ファーマーなんかの名前が出てくるとオッって感じです。中でも、短い文章の中で、スコット・ラファロが事故死した後、ビル・エヴァンズが落ち込んでたというエピソードに、やっぱりそうだったんだとか、スタン・ゲッツのドラッグの話なんかに心が痛んだりしましたね。
     バードランドの司会者のビー・ウィー・マーケット(甲高い声でミュージシャンを紹介するのがアート・ブレイキーアット・ザ・バードランドで聞けます)がチップを要求するケチさ加減や平気で間違った名前を紹介する様は、なんとなく声のイメージと合ってて笑えました。
     クライマックスなんですかね。ベニー・グッドマンのやっぱりケチさ加減と狭量的なエピソード、バンドマンから総スカンを食らうの様に、ビッグネームだけに夢中で読んじゃいました。
     最後はズート・シムズの死ぬ時の話で終わるんですけど、ジャズっていう短い間のムーブメントの実情がユーモラスに描かれてます。
     ちなみに、6月にニューヨークに出張した時に、バードランドに行ってきたんです。だけど、この本に出てるバードランドとは経営とか関係ないらしいんですが、ミュージシャンの写真が飾られたりはするんですが、もう金のない人たちが音楽を聴けるって雰囲気じゃなかったです。ステーシー・ケントっていう、どうやら有名なシンガーが出演してたんですが、本に描かれてるようなビバップ感とは違いましたかね。でも、いい思い出にはなりました。
     巻末に、私的レコードガイドっていう村上春樹が本の内容にまつわるレコードを解説したのがついてるんですが、なんとなく本当はこっちが書きたかったんじゃないかって思っちゃいますね。 ジャズを聴き始めた時に、村上春樹のポート・レイト・イン・ジャズっていう、ジャズ・ミュージシャンのエッセイを一人ひとり読みながら、YouTubeで聞いたりして入門書みたいにしてたんですが、今回のはマニアック過ぎて聞いてみる気にはなりませんでした。
     でも、村上春樹のおもしろいのは、自分が面白くない、聞く価値がないってものは、そのまんま書いちゃうってところで、だったら紹介しなきゃいいと思うんですが、そういうことまで言いたいん人なんですよね。そもそも本文の方だって、ジャズファンに関係ない、面白くないエピソードをカットしましたって書いてあるし、なのにサイモン&ガーファンクルのエピソードは面白いから訳しましたって、あまりに自由過ぎるだろうって感じですね。
     村上春樹っていろんな意味で好きな作家です。

    #さよならバードランド #ビルクロウ #村上春樹 #バードランド #ベニーグッドマン #ジャズ

  • ジャズに精通してれば滅茶苦茶面白いんではなかろうか、この本。とにかく生き生きしとります。その面白さを堪能できないのがちょっと悲しいけれど、ジャズに引き続き手を出していこうと心新たに思った次第で。

  • スタン・ゲッツやジェリー・マリガンのバンドのベーシストして活躍したジャズ
    ・ベーシストのビル・クロウ氏によるジャズの回顧録。色んなジャズ・ジャイアンツの話が出てきて、楽しく読める1冊。

    当時の時代の生々しさ(ドラッグ中毒の酷さとか)という点では、帝王マイルスの『マイルス・デイヴィス自叙伝』に負ける点はあるけれど、もっと日常的な光景の描写がこちらは強い。

    幾つか印象的なシーンはあるけど1つだけ。急遽デューク・エリントンのバンドに彼が参加してコンサートが無事終わった後日。

    ============
    「これは、ミスタ・クロウ」と彼は滑らかな抑揚をつけて挨拶し、恭しくお辞儀をした。「ニューヨークでのコンサートであのような素晴らしい伴奏をつけていただいのに、お礼ひとつせずに誠に無礼をいたしておりました」
    「そのようなことは、どうかおかまいなく」と僕はお辞儀を返して言った。「私の方こそ、まことにもって光栄の至りです」
    彼は微笑みと頷きをもって僕の言葉を受け入れ、見るも優雅にダイニング・ルームへと進んでいった。
    ============
    (本書p297より引用)

    やはりエリントンは公爵だったのだということを感じさせられるエピソードである。

  • 2012/08/02

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    モダンジャズの黄金時代、ベース片手にニューヨークを渡り歩いた著者の自伝的交遊録。パーカー、エリントン、マイルズ、モンク等の「巨人」たちからサイモンとガーファンクルに到るまで、驚くべき記憶力とウィットにとんだ回想の中で、歯に衣着せぬ批評の眼がきらりと光る。訳者村上春樹が精魂傾けた巻末の「私的レコード・ガイド」は貴重な労作である。

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