幽霊たち (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451014

感想・レビュー・書評

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  • 2021年9月
    こんな小説が存在したんだということに衝撃を受けた。日常ありえそうな風景でありながらなんとも不思議な世界観で、なのにストーリーとして面白く読めてしまったことにまた衝撃を受けた。
    訳者のあとがきで「エレガントな前衛」と書いてあって、なるほどと思った。

  • 翻訳ものってほんとにこれまでの人生で片手で足りるほどしか読んだことないんですけどその中でもなんやこの美しい訳は!?と衝撃を受けた柴田さん……(ネバーホーム)
    この本を手に取ったのは別の理由なのだけど柴田さんだから安心感が読む前からすごかった、開いてもやっぱり言葉が美しくてめちゃめちゃよかった。

    ほんでこれ、この本、探偵ものでありながら事件はなく謎を解くミステリーでもない不思議な本。
    人は他者を介して世界を見るみたいな……概念みたいな感じの内容……かな……
    わたしは大体のことを額面通り受け取ってしまうので(頭がかたい)ラストでエッ!?大丈夫!?て心配になってしまったからそのまま終わっちゃってビックリした…笑
    ブクログみたいに色んな方の感想読むと解像度が上がるからいいですね

  • ソローの文章に頭を抱えるブルーにわかるよ!と肩を抱いてあげたい。

  • モンドリアンの絵画を想起した。
    一見単純な色彩と面構成によるあれだ。
    矩形の一つ一つに人格があるようで、黒い線は街のようで。

    「私は何者か」というテーマは『ガラスの街』と一貫しているようだが、同じテーマを裏側から書いたようなとでもいえばいいだろうか。

    自分を観察するものがいて初めて自分を認識する。
    そのような感覚はSNSなどによって慰めを得ようとする今の私たちにこそ思い当たる感覚ではないだろうか。

  • 面白っ…わかんねえ

  • わたしがあなたを追跡し監視するとき、わたしはあなたのことを考えているようで、わたしのことを考えている。表面を絵の具で塗り分けるみたいに名前という記号で他者と区別されているに過ぎないわたしは、本当の、あるいは真実の自分を定義することができない。あなたの中にいるわたし、わたしの中にいるあなたの姿はおぼろげで幽霊みたいに漂っている。通じ合う内的世界の闇は果てのない孤独。けれども、あなたとの繋がりを断絶すれば失われるのはわたしのほうだ。わたしが実体をもって存在するためにはいつもあなたに見られていなければならない。

  • 「ニューヨーク3部作」の2作目。

    序盤は推理小説のような雰囲気を漂わせるけど、読み進めるうちに自分という存在、他者との関係性などを考えさせらるような内容。それでいてエンタメ作品として楽しめるのもすごい。解説にも書かれていたと思うけど。

    もやもや考えながら読み進めるのは楽しい。読むたびにいろいろ発見することができそう。

  • ポール・オースターも、柴田元幸も好きで文庫本で購入した。前半は少し退屈したが、後半に一気に盛り上がり、そしてすとんと終わり、よかった。
    主人公が思いだすことに関しての考察がいい。映画や本や景色など。
    買ってよかった。

  • 観察する者、される者の人生が奇妙に重なり合う何も起こらない探偵小説であり、ミステリー小説。
    無彩色の世界であやふやに生きる、他者を持ってしか自分のあるべき「形」を認識出来ない儚い幽霊たちのお話。

    不可思議な文体ととりとめもない世界にするする迷い込むような、小説という形でしかなし得ない体験を読み手にもたらす本。
    すごく刺激的で読み進める手が止まらなくなるのですが、自分の言葉で説明するのがとても難しい。
    物語の枠の外へと旅立った「ブルー」は果たして幽霊では無くなったのか、彼らの織りなす物語を見つめていた語り手もまた実体を持たない「幽霊」だったのか、はたまた、読み手である私たちこそが「幽霊」なのか。

  • ブルー、ホワイトは登場人物の名前で、この色名以外に、表情や身体的特徴などの情報はほとんど明かされない。

    色が登場人物と言えば、幼いころに読んだ絵本『あおくんときいろちゃん』を思い出す。
    『あおくんときいろちゃん』は、登場人物が色そのもので、
    青くんと黄色ちゃんが抱き合っているうちに1つの緑になってしまったり、また青と黄色に分かれたりと自由に存在そのものを変えていく。

    『幽霊たち』のブルーやブラックはあくまでも名前が色なだけで人間なのだけれど、
    『あおくんときいろちゃん』のように今にも他の人物と溶け合って消えてしまうような不確かな存在に感じられる。
    そしてこの『幽霊たち』というタイトルや結末を見ると、私の感じた“存在の不確かさ”はそれほど見当違いでもないのかなと思う。

    探偵の仕事は、事件を追いかけ真相を暴いたところで終わる。しかしブルーが監視するブラックの周りには、そもそも事件が起きていない。
    だからブルーはひたすら自室で作業をしているブラックを向かいのビルから眺めるだけの日々を送り続ける。

    もはや自分の人生なのかブラックの人生を送っているのかも曖昧なブルーと、人と触れ合わず世間にとってはいてもいなくても同じブラック。
    やっぱりこの2人は、他人との境界が曖昧な、別の色である互いの存在がいて初めて存在を確立できる“色”で、存在の不確かな“幽霊”なのだと思える。

    100pほどの短い文章なのにドラマチックで、苦みのある、エスプレッソのような小説だと思った。

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