- Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102451038
感想・レビュー・書評
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後半が抜群によいと思う。幾つもの引出から幾つもの物語をが出てくるところがさすがという感じだ。
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自意識、自己の成立ち、世界と自分のつながり方、来し方行く末、などを、いつでもどこでも考えて考えて考えて、文章に結晶させたいというヒリヒリした思いを持つことのできる人が、詩人になれるのだ。父と息子の関係、家族と自分の関係、一生の間に巡り会いすれ違う人たち、その時の場所や体感の記憶、そういったものの積分が、今の自分だ。
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記憶の書。死と記憶。語り続ける事と生きる事—シェラザード、ピノッキオの寓話。
「彼はこれ以上先に進めない」
・・・かなり暗い。 -
書くこととは記憶すること、存在しない父をめぐる。語り続けることで生き続ける。
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ポール・オースターの自伝的小説
「見えない人間の肖像」「記憶の書」の二篇。
「見えない人間の肖像」はオースターの父親のことを主に記したもので、読みやすく内容としても面白い。
父はいわば恒久的な部外者、自分自身の旅行者になっていた(p16)
こうあるようにオースターの父親は積極的に人生を生きるというより一歩離れたところに佇むような、家族との関わり方も心の通い合わないようなものだったらしい。
こういうひと、いるなあと自分の周りにいるひとに重ねて読めたためオースターの気持ちも父親の気持ちにも添いやすかった。
「記憶の書」は、オースターに言わせればこちらこそ書きたいことで重要らしいのだが、読みにくい。
どこまでが事実でどこからが空想なのかなど曖昧でわかりにくい。
一度読むだけでは何を伝えたいのか正直言ってわからなかったことが残念だった。
翻訳ものでは読み返すと見えてくるものもよくあるので、また時間を置いて読んでみたいと思う。 -
2015/09/28 読了
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オースターが小説家として名を上げる前の作品。詩人として活動していた時代から小説家に転身するまでの移行期の作品だけあって小説としては観念的・抽象的すぎてよくわからなかった。オースターを読むならこのあとのニューヨーク3部作以降の作品から読むのが吉。
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今までオースターの本を5冊ほど読んでずっと感じていた、捉えどころが無くメランコリックで空虚な感じ。なぜオースターの作品はそうなのかが、よく分かるような自伝的作品。
「見えない人間の肖像」は読んでいて恐ろしかった。オースターの父の底なしの空虚が。息子オースターの内にも外にも満ち満ちている孤独が。彼らの、常に紗幕越しであるかのようなぎこちないふれあい。そこにほんの時おり、目が合ったように思える一瞬があったのだと思うと切ない。オースターが空虚な父を発見して理解していったように、いつか私も子供に見透かされるのだろう。
後半に収録された「記憶の書」は、あまりにも断片的で、集中力が途切れてしまい残念ながら読み通せなかった。 -
オースターの作品のベースは父と息子にあり。
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孤独が生み出すもの。
孤独でしか生み出せないもの。
閉ざされると同時に開かれるもの。
断片は断片ではない。
父の不在。
不在の存在。
歴史。
偶然。 -
『死は人間の肉体をその人間から奪い取る。生にあっては、人間とその肉体は同義である。死にあっては、人間があり、それとは別に肉体がある。「これはXの遺体だ」と我々は言う。あたかもその肉体、かつてはその人物そのものだった、Xを代表するものでもXに帰属するものでもなくXという人物それ自身だった肉体が、いまや突然何の重要性ももたなくなってしまったかのように。
ある男が部屋に入ってくる。私は男と握手をする。そのとき私は、彼の手と握手しているとは感じないし、彼の肉体と握手しているとも感じない。私は彼と握手をしているのだ。死がそれを変える。これはXの遺体だ。これはXだ、ではない。それはまったく別の構文である。それまでひとつのことについて語っていたのが、いまや我々はふたつのことについて語っている。そこで前提とされているのは、人間そのものは依然として存在しつづけているということだ。』
第一部の「見えない人間の肖像」は良かったが、第二部の「記憶の書」は難解で、かつ、興味も湧いて来なかった。 -
「見えない人間の肖像」
書くことによって近づこうとする父の肖像。父にまつわる数々の事実と、空しさ。
「記憶の書」
断片的で難しく、途中で読むの断念してしまった。時間置いてからまた読んでみよう。 -
なんとか読み終わった。時間がかかった。よくわからん。
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「見えない人間の肖像」
死後の父、生前の父。決して触れることのできない他人という存在。
その肖像は血の繋がりゆえにいくらも思い浮かぶだろう。
さっぱりと語り続ける口調、あえて何かの肖像をとらえようとする研究者の体で、疑問も反感もそのままに。仮定はいっさい使わない。
でもとてもやさしいと感じる。
真実であるがゆえ哀しいこと。美しくないこと。偶然から無視されること。
すべて、ぜんぶ。ああ、これが愛かと思ってしまった。
そのやさしい手の内にわたしは人間の愛の深さを思い知らされて、
ほんとうに救われました。ほんとうに。
「記憶の書」
連なる記憶からなる書。
すこし気が散った。
けれども部屋の描写はとても印象深い。
ひとつの部屋、空間。自分、境界線。
たまにふと思い出す。 -
変わり者で孤独な父親が持つ多面性。複雑で単純。変わり者ではなくても、普通の人などいない。一部が好き。
ちょうど祖母を亡くして葬儀を終えたばかりのときに読んだので、一部の父の遺品についての語りには共感するところがあった。 -
この二部構成はなかなかすごい。再読必至。
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<オースターの父と子の関係。そして様々な部屋に関する記憶と孤独の断片。その2つの中篇。>
ポール・オースター
2つの中篇収録。
前者は当たり前ですが、オースターも様々な葛藤を抱えて、詩人、小説家になったのだな・・・と感じさせる文章。
後者は・・・なんだかよくわからない・・・苦笑
でもひたすらクールな文体。
これ(特に2つめ)は再読しなければ。 -
著者が自らをモデルにして書いたという、
自伝風フィクションだそうだが、
印象として、ほとんど事実ではないかと思われる。
二部構成で、
第一部は、語り手が父の死を契機に、父について思いを巡らす。
第二部は、主人公(著者の分身のようなキャラクター)が
様々なテクストを引用して、父と子の関係を考察する、
という内容。
最も「距離」が近いはずの親子でありながら、
どうしても手が届かない、もどかしさがあるわけだけど、
その悶々とした気持ちが創作意欲を駆動しているのかもしれない。 -
オースターの家族を描いた自伝的作品。彼の作品には孤独を描いたものが非常に多い。なぜ、彼がそこまでして孤独というモチーフに拘るのか、その答えは彼の出自にあったのかもしれない。ただし、小説というよりは彼の思弁の叙述も多いため、物語が躍動する独特のオースター節はあまりないように感じた。