- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102451069
感想・レビュー・書評
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良い具合に気の滅入る物語だった。
ナッシュもジャックも愛したくなる部分があって、可愛らしくて、読んでてとても好きになっていくのに、どうしてその好きになった人らの破滅を見なければならんのか。
判断は悪い結果に繋がって、偶然は期待を打ち砕く、なんともしんどいお話だった。
ラストの、ナッシュの憎しみとマークス一家の鈍さにぞっとした。
たぶん、無意識のうちにマークスになっている人は案外多いんじゃないかと思う。相手の憎しみに気付かないで、親身になって接する。そこに確かに優しさはあって、だけどあったところで何の意味もなさないのだ。
ポッツィをやったのはだれなのか、フラワーとストーンはどうしたのか、ラストは投げっぱなしでなにもわからなくて、だけど私は、最後にアクセルを踏んだナッシュをとても愛しく思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ポール・オースターにしては、分かりやすく、意味が取りやすい。
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乾いた砂の匂いのする、ざらざらとした感触の、投げやりな主人公の皮肉なジョークの飛び交う、どこか地に足がつかないような不安定な、アメリカの小説、しかも訳が良いやつ、ないかな〜と思っていたまさにその時に、そう心から求めてやまなかった小説と出会えて、幸せでした……。まさに小石が坂道を転がり落ちてゆくようだった。どうしようもないやつらを見ているのに、ずっとどうしようもなく切なかった。読み終わった後は呆然としてしまった。
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読書会の課題図書。
とても面白かった。
文体やトーンも心地いい。
壁を作っていく場面が特に好きだ。
体験してみてもいいとすら思った。
ラストはとても自然に思えた。
ナッシュはもっと早く死んでもおかしくない生き方をしていたし、
ここまで死ななかったのが逆に不思議なぐらいだった。
ナッシュは深層的な破滅型であって、逆にポッツィのほうが慎重派だろう。
ポッツィには好感を持つ。
「今でもそのときのアイスキャンディーをずっと持っているような気がする」
というセリフがとても印象に残っている。
うまく説明はできないが、そう言われれば僕も何かを持っているような気がする。
「ささいな偶然の連続によって人生は成り立っている」ということは周知の事実であろうが、
それを改めて認識させられる。 -
大金を手にした男が家族や職を手放して車で放浪、偶然出会ったポーカーが得意な青年とともに一世一代の賭けに挑む前半、借金返済のために石の壁を作る作業に従事する後半。
「偶然」によって何となく展開していくストーリーだが書き方がうまいので不自然さがない。ポーカーのシーンはハラハラするし、結末が目に見えていても期待してしまう。で、読んでいると主人公と同じように気落ちする。
そしてラストの投げっぱなし具合。話を広げるだけ広げといて衝動的に全てを切断してしまう主人公。突発的自殺とでも言うのだろうか。果たして主人公は事故で死んでしまったのか、友人は本当に奴らに殺されたのか……。おそらく主人公にとってはどっちでもいいのだろう。アクセルを踏む行為自体が新しい場所へ行くということなのだから。
何だか自分自身の行く末を見ているような小説だった。 -
最後が生々しい
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壁を作ることで、自暴自棄からの心の再生。
かと思えば、ラストのフェイク。
めまいがする。 -
なんかしばらく頭から離れない寂寥感…
終わり方がとても切ない。