ローマ人の物語 (3) 勝者の混迷

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096122

感想・レビュー・書評

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  • この巻のもっとも印象的な人は、ルキウス・コルネリウス・スッラ。他人に何を言われようが気にせず、物事をやり遂げるところがすがすがしい。ただし、反対派を殺戮、財産の没収・競売に至る容赦のなさもある。「スッラの言動は、常に「ドス」が効いている」とあるがさもあらん。普通の人は他の人からよく思われたい。敵に容赦しないという態度を貫くことは並大抵ではできはしない。「私財を貯めこむことに、生涯無関心であった」ともあり。今の政治家と正反対!お金の使い方を現代人は学ぶべきでは。
     また、高貴な生まれと裕福な環境人恵まれ、銀の匙をくわえて生まれてきたというグラックスの2人の兄弟。高貴でも裕福でもない人たちの権利を守ろうと命を落とす。人のために使命感を持って、命を賭して活動できる人はどれだけいるのだろうか。古代ローマの公共精神には正直感動する。日本の武士道精神に通じるところもあるのだろうか?

  • グラックス兄弟が農地改革しようとして殺される、
    マリウスとスッラが虐殺合戦、
    スッラ派のポンペイウスがスッラ体制を破壊する。。

    どうしても、カエサルが出て来るまでの過渡期的な記述になってしまっていてちょっとかわいそう。
    スッラは人を食った人物として面白く描かれている。
    幸運な人って、でも結局、素晴らしい人生じゃないか。
    マリウスの虐殺は狂気的ですが、スッラは虐殺すら冷静な対処のようで、器の大きさが桁違い。確かにこんなふうにものが見られたら幸運だろう。

  • カルタゴが滅亡し、新たな人物が次々と登場する第三巻。

    ここで最初に登場するグラックス兄弟は、印象的である。

    紀元前のこの時代に、果敢に改革を試みる若者たち。

    いつの時代にも、勇敢で正義感あふれる者はいるであろうが、この時代に、というのが驚かされる。

    すでに元老院を中心とする共和制が成り立っているローマであるが、市民の格差問題があらわになり農地改革を実行しようとするわけであるが、大きな権力を相手にするとき、なかなかうまくいかなものであることは、いつの時代も同じ。

    結果的に二人とも志半ばでの死を迎えるわけであるが、これが呼び水になり、ローマが大きく動き出すことになるということは、歴史上大きな意味のあることであったのであろう。

    そして登場するスッラ。

    一見、冷徹で独裁主義者の感じのある彼であるが、逆に共和制ローマへの信念の強い者であった。

    自分の信念を貫き通すがために、多くの犠牲もあった。

    読み進める中では、スッラという人物はやはり、ローマを自分の独裁下に置こうとするものではないかと思わせた。

    しかし、自分が目指す、元老院中心の共和制ローマを実現するための法を制定するや、独裁官を辞職し、政治の場からも身を引いた彼の行動が物語るように、ローマを独裁制から切り離し、共和制を実現するために努力した人物といえるのかもしれない。

    賛否両論分かれるであろうが・・・

    このスッラという人物は、グラックス兄弟以上に、私の心に残る歴史上の人物となった。 

    冷酷で醒めた政治家の食卓は、哄笑で包まれるのが常だった

    この一行がとても印象的である。 彼はただの冷徹な人間ではなく、共和制ローマを実現したかっただけなのだろう。

    その後ポンペイウスによって、地中海、オリエント地方をローマが制圧するわけであるが、戦術に長けた武将の感のあるポンペイウスにも魅力は感じるが、個人的にはいま一つ、心に残るものがない人物である。 

    いよいよローマの勢力も大きくなり、政治も大きく動いてきているが、次巻も楽しみである。

  • ハンニバルを倒し、帝国カルタゴを滅亡させ、一気に地中海の覇者となったローマ人。しかし大国への道のりの速さゆえに、ローマは内部から病み始める。権力が集中しすぎた元老院に対して改革を迫る若き護民官グラックスは同国人に殺され、続く改革者たちも、内なる敵に向き合わねばならない―ローマ人はいかにしてこの“混迷の世紀”を脱脚するか。

  • 中学生で斜め読みした時はさっぱり面白くなく挫折したが、意識して政治のヒントを掴むために読んでいるからか、1~3巻の中で、いちばんおもしろかった。

    どのような問題に突き当たり、誰がどのように考えて、どのように解決したのか?

    どんな人が世の為に奮闘してきたのか?

  • 国家の経済が発展したからと言って、国民が豊かになるとは限らない。

    富の分配は大事な施策だが、「富める者から奪って貧しき者に配る」という発想は、あまり好きじゃない。少なくとも今の時代には合わないんだろうな。

    農牧業に代わる新たな産業を興すという発想はなかったのかな。

  • 組織とは不思議なもので、外部の脅威がなくなると、内部から崩壊していく。そして、未来は、外部でもなく、内部でもないカオスの縁にいて、新しいビジョンを持つ者が切り拓く。次巻が楽しみ。

  • ・ハンニバル戦後、高度経済成長期に入ったローマ
    ・体(経済)は成長したのに、内臓(制度)がそれについていけない状態
    ・中間層の増加による問題など、高度経済成長後の日本を連想とさせる

  • ローマ人完読プロジェクト第3段にて挫けそうになる。ハンニバルとカエサルの間の混沌の物語故か、かなり中だるみぎみ。なんとか最後まで辿り着く。

  • 前2巻までのローマは敵の侵略を防ぐこともあれば、領土を手に入れるための侵略をしたりと、アグレッシブな若い国だった。が、ポエニ戦役を経て、当時の最強国となってしまったローマはもはや征服する土地が限られ、外敵よりも内部の調整に四苦八苦する。

    そんな時代に登場したグラックス兄弟、マリウス、スッラ、ポンペイウスらローマの指導者たちは内戦の片づけと政治体制の修正と、やや地味な仕事に明け暮れる。

    どうにも盛り上がりどころのない、爽快感のない国になってしまったローマ。そんな中、個人で頑張っていたのが小国ポントスのミトリダテス王。大国ローマに何度も敗れては立ち上がる姿に「漢」を感じた。

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