救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103309215

感想・レビュー・書評

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  • 「海堂尊」で検索をした時に出てきた本。
    彼が編纂者として名乗ることで、この本を手にした人も多いかもしれない。
    それが彼の功績でしょう。

    私もまさにその通りで、タイトルと作者名から「速水先生だ!」「ジェネラルがこの非常事態に黙って自分の職場だけに留まるはずがない!」と、
    現実と物語を混同し、速水先生の物語を読むつもりで借りた。

    中身は被災地で活躍した医師9名のインタビューをまとめたものだ。

    当時のお医者さんたちの奮闘が生々しく伝わってきて、涙なくしては読めない。

    特に歯医者さんの検視は初めて知り、大変気持ちが熱くなった。

    本当に多くの人々があの大震災に向かいあい、支えあったのだなと改めて思う。

    後書きに案の定、海堂先生のAi話題がある。これまで物語の中でこれほど画期的なAiが様々な障壁により導入されないくだりを読んできたが、あれはフィクションではなくノンフィクションであることが記されていた。

    なんでそんなにイイモノが未曾有の災害でも使われないのか?本当に利権や欲だけの問題なのか?とても不思議だ。

  • メモ
    P98 我慢強いとか、辛いことがあってもあまり心を表に出さないことをある程度美徳としているようなところが日本人には昔はありました。東北地方は特にその傾向が強く、今もお年寄りには、黙って我慢しながら我慢しきれなくなったら自殺するというようなところが残っています。我慢強い分、それが破綻した時には、極端に反応してしまう。

    - - - - -

    P128 医療を維持する人たちって、ほとんどがお金儲けをしようなんて思っていない。

    - - - - -

    P151 山形県の歯科医の方々は訓練を繰り返してきたのだと思う。警察医としての意識が高い。何も説明しなくても、速やかに行動をとってくれた。

    てんてこ舞いしている中、服装、天気など自分で調べられることまで聞いてくるのはだいたい首都圏に住む方たち。

    関西圏の先生方は、決してそんなことは言わない。阪神淡路大震災を経験しているだけに、目に見えない心遣いを感じた。

    - - - - -

    P173 災害時には被災地における医療を統制る事が大事。問題なのは、医者自身が統制されるのを嫌うこと。自分の意思で動いてしまう。これをまとめる機能が、医療の世界にはない。

    - - - - -

    P178 阪神大震災では外相が多かったのに対し、今回避難所などでは内科的疾患がほとんどだった。災害はそれぞれ被害の形態が異なる。すべてひとつの「災害マニュアル」という形で対応できるのかを再考する必要があるのではないか。

    - - - - -

    P237 精神科医が心のケアを始めるという。「何かニーズはありませんか?」と聞かれ「自分も被災者なのに支援や救助活動にまわらなければならない人たちをフォローしてほしい」と話した。すぐにでも始めてほしかった。5月半ばには100人以上の対象者全員が終了した。

    P238 「柳に枝折れなし」風が吹けばなびけばいいし、大事なことは幹からもげないこと。

    やはり被災者は被災者どうしのなかで癒される

    - - - - -

    P248 震災から4カ月。被災地復興は次のステップに入っている。これからは、長くうんざりする不毛の戦いのフェーズに入る。ちょっとした言質をとがめ、誰かを悪者にしたり、功績を独り占めしようとする連中が跋扈(ばっこ)したりもするだろう。

    戦いをさらに熾烈なものにするのが、被災しなかった人々の無関心と鈍感さなのだ。

    - - - - -

    P249 現地の行政人は「総務省の対応は早い、厚生労働省がサイアク」だという。「それよりもさらにひどいのは財務省だ」と公言する。そうした声は社会に届かない。メディアが官僚批判を報道しないからだ。【批判のない世界は腐ってしまう】

    - - - - -

    P250 被災地の状況は刻一刻と変わり、要望もまた時々刻々と変化する。スピードは愛である。

    - - - - -

    P252 人は天災で殺される。だが、生き残った人の心を殺すのは、他の人たちの鈍感さである。その鈍感さは、現状維持、という安寧を好む。

  • 3.11の時の記憶が呼び起されるので、まだ傷が癒えていない方にはオススメしません。
    あの時、どんなことがあったかこんなにも覚えているものなんですね。
    医療に携わる様々な立場の医師9人のお話です。

    1番最初の、南三陸町の菅野武先生のお話が涙なしには読めませんでした。
    医師である前にこの人たちも一人の人間で、逃げ出したい気持ちだってあるのに、
    あんな状況で一人でも救おうとしてる姿に心打たれました。

    中には、ただの自慢話を書いてる人もいました。
    自分がどれだけ頑張ったかってことばかり。
    その章は読まなくていいと思います(笑)

    • ay_anotherさん
      >nyancomaruさん
      コメントありがとうございます。
      "読まなくてもいい章"は、読み始めてすぐ「ゲ」ってなって
      あまりきちんと読んで...
      >nyancomaruさん
      コメントありがとうございます。
      "読まなくてもいい章"は、読み始めてすぐ「ゲ」ってなって
      あまりきちんと読んでいないので、もしかしたら良いコトも書かれていたのかもしれないけど、
      ちょっと私には自慢話にしか思えませんでした。
      もちろん、その方も頑張ったことには変わりないのですが…。
      2013/02/06
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私には自慢話にしか思えませんでした。」
      確かに、そう言う部分がありましたね。
      自慢話は、他の医療関係者への鼓舞だと受け止めて読みました。。...
      「私には自慢話にしか思えませんでした。」
      確かに、そう言う部分がありましたね。
      自慢話は、他の医療関係者への鼓舞だと受け止めて読みました。。。
      2013/03/19
    • ay_anotherさん
      >nyancomaruさん
      なるほど(笑)
      >nyancomaruさん
      なるほど(笑)
      2013/03/20
  • ところどころ、あまりにも主観的過ぎると思いながら、思わずそうならざるを得ないほど深い悲しみや絶望やそういったものをひしひしと感じた

  • 東日本大震災で自らも被災者でありながら医師として活動した医師たち、応援に駆け付けた医師たち、それぞれの聞き語り。
    診察する患者とつらい体験を共有することで自らも癒されたという医師。
    検視・身元確認のためにデンタルチャートを黙々と作成する歯科医師。
    これらの記録、読んでよかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      使命感にスイッチが入る時。人間はとっても気高くなるんだと実感しました。。。
      使命感にスイッチが入る時。人間はとっても気高くなるんだと実感しました。。。
      2012/08/04
  • 東日本大震災で大奮闘した医師たちの物語

  • 東日本大震災後、被災地で、自ら被災しながら懸命に救命活動に従事された先生方へのインタビューで構成される書。心を打ちます。

  • 使命感ではないというが、医者救命活動や緊急時の指導力に感動を覚えた。

  • 僕は医者という職業にはあまりよくない偏見を持っています。しかしこの本を読むと、「持っていました」に改めねばならないかと感じました。ごめんなさい。その場で、やれることをやるということだと言ってしまえばそれまでですが、そんなに簡単に言えない。
    監修の海堂尊さんが、自分の家の「瓦礫」を、人は決して「瓦礫」と呼ばない、と語っていました。その呼び方が出来るか出来ないかの立場に、天が線を引いてしまった。そして医療人は、その線を乗り越えられるのだと。
    そして海堂尊はいつものようにAi導入(がうまく行かなかったこと)を語って幕を閉じます。Aiの導入が進まないことは、「人災」の発生と似たメカニズムなのかもしれません。

  • 震災にあった医師達の奮闘。

    インタビュー的に色々話されている。
    先生方は『被災者』でもある方ばかり。
    それでも『人助け』の為に奔走する。
    これが医師か。これが医療の根源か・・・。
    9人の医師の、それぞれの話。
    適切に、確実に根を張り費やした日々。
    そしてそこにある実態。
    多分、これだけの先生達じゃない。
    もっと大変な思いをした先生達もいるはず。

    lastに海堂氏は書かれてます。
    『瓦礫じゃないんだよ』と。
    そこには確かに生活を営む人がいた。
    思い出も、家族もそこにいた。
    普通の生活をしていた。息づいていた。
    確かにそうだと反省。
    Ai導入も拒否られてしまって、遺族は帰って来ない人を待つ。
    それで良いのか。
    もし、導入されていたらどれだけの人が遺族のもとに帰れたんだろう?
    医師がもっと声を上げて良いような仕組みは作れないのだろうか?

    霞ヶ関で悠々と『これは大変だ』とtvを見ながら言っている方々は現地をご覧になって、同じ場所で寝泊まりしたのだろうか?

    官僚批判は勇気のいる事。
    だけど事実はキチンと伝えなければ誤解や不安を招くだけだ。
    義援金はどうした?
    不眠不休の医師や看護師、クラーク(事務方)の代わりはどうなった?

    考えさせる、一読の価値ある本。

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