あのひとは蜘蛛を潰せない

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 752
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319627

感想・レビュー・書評

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  • きちんとした、厳しめの母親に育てられてずっと一緒に暮らしてきた30代女性、恋人ができて家を出て変化していくさまが描かれていて、読みやすくてやさしい終わり方でよかった

  • タイトル借りです。初読みの作家さん。
    文の流れ方、言葉の選び方が好み。
    主人公の感情にも自然に寄り添える。

    でも、どこか中途半端な印象なのは、どうしてかな。
    主人公に魅力を感じないからか。
    年下の部下がどうして主人公に入れ込むのか、
    最初の理由が段々と変わっていくという過程が見えないので、こんなうまいこといかないでしょうと、つい思ってしまう。
    それと、題名にもなっている最初のエピソードが生かされていない。
    最後まで、蜘蛛がきっかけで何か物事が大きく動くんじゃないかと期待していたから、かなり肩すかしを喰らった。
    題名で選んじゃったからね、その思いが大きいw

  • 読んでてちょっと苦しくなった。そんな風になるのはひさしぶりでなんでかわからないけど、共感なのか既視感なのか、つらい気持ちが私にものしかかってきた。

  • ドラックストアの店長 野坂梨枝が出会う店員たちとのやりとりを綴った物語だが、三葉くんとの同棲生活が中心に展開する.女性の観点から著者が梨枝の気持ちを的確に記述している点が素晴らしい.

  • ☆言葉と行動と想いのこんがらがったからまりと、それがほぐされていく感じが丁寧に描かれた話。恋の話、家族の話。
    ○どんな時に読みたいか○話したいとか、知り合いたいと強く思った誰かが現れたときに。
    ●感想●『しゃべることは、細い糸の上を渡ることに似ている』
    にグッときた。
    すごく好きだった人のことを思い出された物語。たぶんこの本の表現を借りれば、糸を渡り切れなかったんだなと妙に納得してしまった。相手までの糸が細すぎたのか。そもそもなかったのか…渡りすぎて切れちゃったのか…はぁ。。 

  • タイトル借りしたらアタリだった一冊。母親の呪縛から逃れたい女性の葛藤と恋愛。ザクザクくるけど後味はいい。
    彼女の母親はたしかに毒親だったけれど、良薬だって飲みすぎれば毒になる。他人と良好な関係を保つためにいちばん大切なのは、相性でも愛情でもなく適切な距離なのかもしれない。

  • あねもねグループの一人で、出版を心待ちにしていた彼女の小説デビュー作。
    その直前に読んでいた宮木あや子の「野良女」との落差が大きいけれど、こういうじくじくした感じの主人公は王道だろう。読者にとって共感のできる女の子が、男の子との出会いをきっかけに成長していくお話。
    そう考えると、最初のエピソードはいらなかったし、それと連携しているタイトルも、別のものが良かったと思う。
    この小説の印象的なキーワードを探すと、バファリン、きゅうという花の痛み、バレエの少女の絵、そして餃子。宇都宮在住の私としては、代替タイトルに餃子を一押しにしたいところだが(笑)、テーマ的にも、バファリンとか、花の痛みなどをタイトルにかかげたほうが良かったのかなと思う。お兄さんの飼っていた蜘蛛のエピソードとかも、タイトルから不必要にひっぱられてしまっている感じがしたし。

    エンディングについては、島本理生の「よだかの片思い」のように相手とは結ばれないけれど、成長がごほうびというほうがよりリアルだった気もする。でもまだ新人なんだから、いろいろ試せばいいんだろうな。これからが楽しみな作家さんです。ぜひ書き続けてほしい。

  • みっともない、くるしいくるしい。
    傷ついたり、傷つけたり。

    蜘蛛を潰せない、優しいけれど弱いひとびと。

    なんとなく三葉くんが梨枝さんじゃない人を愛せたら、梨枝がたとえば蜘蛛をすぐに潰しちゃうような人を愛せるようになったら世界はもっと生きやすくなるんじゃないかと思うよ。
    それでいいのかもしれないけど。

    なんて苦々しい痛い小説。
    だけど、くるしいくるしいが、いつかみんな愛しいに変わりますように。

  • 「恥ずかしがるより、ちゃんと休んで、
    やばかったら助けを求めろって感じでしょう」
    その言詞に頭をガーンと殴られたようでした。
    そりゃそうだ。
    当たり前だ。
    弱いところを見せるのは、決して恥ずかしいことじゃない。
    けれど、毎日の忙しく進んでいく時間の中で、
    そんなことも見えなくなっていた。そのことに読んでいて気がついた。

    親との自分。友人との、彼氏との、職場での自分。
    色んな読み方ができました。

    ただ心地のいいだけの人には普通にできるのに、
    大事な人にほど不安が付きまとう。普通になんてできない。
    この行動は合っているだろうか。これで嫌われないだろうか。
    大事な人ほど気持ちに執着して手間をかけてお金をかけ時間をかけ、
    結果自分にも相手にも重くなってしまう。
    けれどどんな場合でも使える正解はなかった。
    あったとしても分からなかった。そんな気持ちが
    痛いほど伝わってきました。

    蜘蛛の巣にとらわれるように、暗い闇に悩んで落ちていく毎日。
    しょうがないこと。みっともないこと。
    ひとつひとつにラベルをつけて分類しながら生きているけれど
    それに正解なんてない。あったとしても分からない。

    けど、その中で少しずつ楽になれる方向を見つけていく。
    一緒にいて楽になれる人、楽になること、
    必ずしも正解とは限らないけれど、
    我慢して無理して息をすることよりずっといい。

    読み終わって、うまく言葉にできないけれど、
    何かに救われるような気持ちに満たされた。

  • 面白かったけど、読んでる間
    眉間の皺が消えないような辛い本。

    「みっともない」
    「きちんとしなさい」
    「恥ずかしい」

    私もよく言われたなぁ

    別れや死、犯罪などの特別悪い事件が起きるわけでもないのに
    心を締め付けられる

    悪い人も一人もいないのに、
    お互い傷つけようともしていないのに
    それぞれ、どうしようもない理由もあるのに
    相手に嫌な、窮屈な、不快な思いをさせてしまう。
    そんな心の動きが丁寧に書かれてる。

    彼氏がちゃんと主人公に向き合ってくれてほっとした。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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