あのひとは蜘蛛を潰せない

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 752
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319627

感想・レビュー・書評

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  • 蜘蛛、さざんか
    描写がうまいな
    登場人物に共感したり反発したり
    ぐるぐる悩みながらも生きていく
    ≪ 傷つけず 関わりあうのか これからも ≫

  • まあこういうのって女の夢だよなあ。すっごい美女なんだろうか。客観的になっちゃうときもちわるさもあるけど浸っていると幸せな気がしてしまう。
    「あのひと」の出番が少なくて面白かった。

  • とても淡々と、しかし的確に、それぞれの人物の行動と、その背景にある支配的な考えかたが表されていて、随所でそれらが日常の物語の中で見え隠れして、ストーリーは進んでいく。
    その運び方がほんとうに上手い。ふと気づくと、主人公の娘が母親に抱く愛憎の感情が痛いほど自分のものとして感じ取れてくる。
    ドラッグストアに勤める地味な普通の女の子に焦点を当てながら、その平坦な日常の裏に隠れる起伏を見事に描いたあざやかな小説。
    気鋭の才能を持つ作者の作品は、本書を皮切りに、よりその心理描写の機微の精度を高めていく。

  • 2015.5.10 pm16:05 読了。
    主人公の心情に、重なる部分が多くてぐさぐさきた。相手を殴るより、自分を殴る方が、楽という見方が特に印象に残った。結局耐えきれずに、周りに八つ当たりしてしまっているところ以外、まるっきりわたしがしていることと同じだった。周りからみたら、こんな風に見えているのかと眼を開かされた気持ちでいる。
    母との関係も考えさせられた。わたしは長女だ。弟はきっと家を出るだろう。そのとき、両親と暮らすのは誰になるのだろう。
    わたしは、将来のことを考えているようで、結局なにも見えてなかった。周りのことも。人生を考えないと。

  • 母と娘の濃密な空気が息苦しかった。柳原さんが再登場するのかと期待していたけどそれはなく、ドラックストアを中心に話は流れていく。これといった驚きや面白味もなく単調な内容だった。

  • 彩瀬まるさんは以前アンソロジーでちょろっと読んだだけなので実質初読。なんだか息苦しさを感じる作品だった。繊細な心理描写が上手い作家さんなのだと思う。インパクトのあるタイトルだけどあの人は物語の筋にはほとんど影響のない人じゃないかしら。2013/228

  • ドラックストアの店長の梨枝の未来。

    女手一つで兄と私を育ててくれた母を、定年退職後1人になるのをかわいそうだと思い、28歳になるまで同居してきた。

    小言ばかりで自分がいないと何もできないのだと支配しようとしてくる母。
    薬物乱用の疑いがある客のバファリン女。
    虚言癖の末に行方不明になった蜘蛛を潰せなかったバイトの柳原さん。
    体が弱いながらも強くて頼もしかった義姉の雪ちゃんの弱さ。
    家族との隔たりを気に病む、心優しい8歳年下の恋人、三葉くん。

    20代後半にして大切だと思える年下の恋人、初めての一人暮らし、自信のない塊だった自分が、
    いろいろな人によって成長していくまで。

    かわいそうだと決めるのは、
    周りじゃなくて自分自身ですね。
    みっともないと思う価値観がみっともない。
    恥ずかしいことなんて、何もない。
    それが一生懸命なら尚更。

    母と娘の確執がそこまで強くないゆるくて優しい話。
    三葉くんが心優しくて、魅力的だなー。)^o^(

  • 「あのひとは蜘蛛を潰せない」このタイトルが読了後にストンと胸の中に沈んだ。

    蜘蛛をみかけたら容赦無く叩き潰す人、殺したくないけど怖くてさわれない人、手に乗せて観察する人、触らないように物を使って逃がしてあげるひと。

    蜘蛛が部屋に入って来たというちっぽけな事柄に対しても、それに対する反応は千差万別だ。なぜそのような対応をするのかなんて、対応する本人にもわからない、無意識の行動だったりする。

    人間の日々の行動や価値観は様々な過去の積み重ね、周りの人の影響で形成されて行く。その過程は誰一人同じ物を辿っておらず、誰一人同一の考え方をする人はいない。

    主人公は自分がみっともなくないか、行動がおかしくないか、母親の言う通りに振る舞えてるかを常に気にしている。そしてそれが自らの行動を縛り、苦しめる。まるで人が掛けている度のあわない眼鏡を、自分もかけて生活をしているようなものだ。自分で考える、自分で判断し、自分で眼鏡を選んでいかなければ生活なんてすぐに息苦しくなる。この話は主人公が自分が眼鏡をかけてることに気がつき、また他人もそれぞれ違う景色をみてることに徐々に気がつき成長していく過程を丁寧に描いてる感じがした。

    物語にでてくる世界の人々はそれぞれ自分の景色に固執したり、相手に理解してもらおうと価値観を押し付けたり、皆三者三様で苦しむ姿が自分と重なり苦しくなった。

    なんでわかってもらえないんだ、私はこんな風に考えてるのに!これが正しいはずなのに!と他人にどっぷり依存して、受け入れてもらいたいという自分の奥深くにある願望をまざまざとみせつけられた気がしてページをめくる指が重くなることも。

    どんなに身近な人でも、まったく同じことを考えてわかりあうことはできない。でも、それを理解しつつ手を取って、違う景色を見ながら、相手が見えない部分を補って行くから、家族や恋人、友人との関わり合いが温かいのだと思った。

  • 息苦しさを感じながらも読んだ。傍から見たらもどかしいのだけど「刷り込み」がなされている側からしてみたら、どうしようもないのだろう。 このまま終わるのかと思いきや最後はいろんな事が良い方に動き始めとてもよかった。

  • 親の呪縛。知らず知らずに刷り込まれたそれぞれの常識。きっと誰しもあるんじゃないかな。私にもある。逃れたいのに気がつけば従っている。それでも、大人になり、距離をおけば、少しずつ、少しずつ、自分の頭で考えられるようになる。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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