あのひとは蜘蛛を潰せない

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319627

感想・レビュー・書評

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  • もし、もう少しだけ早く出会っていたら、何か少しでも違う世界を見たのかな。

  • あの人は蜘蛛を潰さない
    彩瀬まるさん。

    母親に干渉されて、母親の思い通りに、
    ちゃんとしなくちゃいけないと、
    コントロールされている娘の、
    心の葛藤。自立への道。
    親離れ子離れ。
    年下の彼氏さんが、
    とても良い。
    人は、少しづつでも、
    かわれるんだなぁーと思いました。
    蜘蛛や山茶花の花だったり、
    揺れる気持ちの描写がうまい。
    自分の居場所。
    見つけられると良いな。
    自分と置き換えて読める、
    面白い本でした。

  • 綾瀬まるさん初読みです。タイトルからして若い作家さんぽいなぁと思って、なかなか手が伸びませんでした。予想に反して、この感性好きと思いました。感性というか表現の仕方が好みです。
     主人公梨枝は年下の彼が出来たことによって、母親との関係に少しずつ我慢できないものを感じるようになっていきます。母親が娘に過干渉になるところは“毒親”のようだと思いました。息子夫婦が家に戻り孫が誕生して梨枝に向ける干渉が少なくなると、それを淋しく思う矛盾した感情に戸惑う梨枝。全体的にゆっくりと物語が進んでいくように感じられます。
    母の変化や彼、三葉くんの初恋のこと、そしてバファリン女。梨枝の世界はそう広くはないけれど、より人と深く関わることによって少しずつ変わっていくのだなぁとしんみり思えた本でした。→

  • ドラッグストアの店長の梨枝。28歳独身。実家で母と二人暮らし。

    幼い頃から母の顔色を伺いながら過ごして来た気がする。兄が幼なじみと結婚して家を出ていく時も、母は気丈に「梨枝がいるからいい」と気にもとめなかった。

    そんな母は全て「私の言うとおりにしていればいい」と過干渉なまでに面倒を見てくれる。家事は全て母の手によっている。

    ある日、「蜘蛛一つ潰せない」ベテランパートの柳原さんが無断欠勤。温厚な人柄から想像もできないような噂が店内に広がる。
    お詫びに訪れた夫人から、梨枝は思わぬ話を聞かされる。

    平凡などこにでもあるような生活の断片の中で、梨枝は、様々な縁に出会い、心を揺さぶられる梨枝。

    相手のことを慮って、ついつい自分を我慢してしまう梨枝。

    自分のこれまでの人生のありようを、ちょっとだけ変えてみたい。一歩踏み出してもいいのではないか。

    柳原さんと入れ替わりで入ってきたアルバイトの大学生・三葉との出会い。兄夫婦の実家暮らしから、これまで当たり前だと思っていた日常から、梨枝は初めて変化を選択した。母の呪縛を解くように。

    日々の生活の中の繊細な心の移りようが、丁寧に描かれた作品。

  • *威圧的な母の管理のもと、いつも自分に自信のないまま暮らしてきた28歳の梨枝。勤務先のアルバイト大学生・三葉と恋に落ち、兄の帰省をきっかけに一人暮らしを始め、少しづつ、傷つきながらも変わろうとしていく。ひとりぼっちを抱えた人々の揺れ動きを繊細に描きだし、ひとすじの光を見せてくれる長編小説*
    上手いなあ。思わず唸ってしまうくらい、上手い。「穴底の柔らかい土をぐずりと搔いて、眠る」だなんて、ちょっと思いつかない表現だな。ストーリー自体も、底意地の悪い人は出て来ないのに、みんなどこかいびつで頑なで、それが見えない鎖になって他人を圧迫していく様が本当にリアル。共感しながら、反発しながら、寄り添いながら読みました。

  • いい子から抜け出せない主人公、梨枝。母親と二人暮らしには何の不満もなかったけど、勤務先のドラッグストアに新しくやってきたバイト、三葉くんと付き合いはじめて少しずつ変わり始める日常。
    店の常連で、常にバファリンを買う美女や、姉貴分が本当の姉になった雪ちゃん。梨枝の一人暮らしに猛反対の母親。梨枝の周りの女性はとにかく濃い。けれど、そんな彼女たちをさしおいてダントツの存在感を放つ三葉くん。
    自分が悪いと抱え込む方が嫌われなくて楽だけど、抱えきれなくなったらどうするの?とか、ちゃんとした、は口癖なの?とか、海藻でくるまれたご飯の中まで海藻は損した気にならない?とか。
    淡々としたキャラのようで、いつも絶妙のタイミングで切り込んでくる。
    途中、三葉くんと離れてしまう梨枝が倒れたときにぐるぐる浮かぶ回想がすごく切なかった。
    窓辺の猫を指さす三葉くん。外ではクールなのに、自分の前ではこんなにも無防備なんだ。一緒にいてくれるだけで良かったのに。と夢の中で後悔する梨枝。
    恋をした時に誰もがきっと思う嬉しさや、間違い。
    家族との距離感。
    優等生である自分から出られない。
    あー、そうそれ!と共感する部分がたくさん。
    言葉がひとつひとつ、じわりと染み入る。
    夢中になってあっという間に読んでしまった。
    もっとじっくり味わって読めば良かった!
    また今度、丁寧にしっかり読みたい。
    彩瀬まるさん、作品全部読んでみたい。

  • 白石一文の『一瞬の光』を初めて読んだときのような衝撃を受けた。
    鋭利な刃物で肌を切られ、その切り口はとても鮮やかでひりりとした痛みと快感を覚える。
    読んでてそんな気持ちになる。痛みを感じながらもページをめくる手を止めることがが出来なかった。

  • ―――吐くなら水場、恥ずかしい洋服は着ない、人に迷惑をかけない、大きな声を出さない、みっともないことはしない、そういうものから出られない―――

    ドラッグストアのチェーン店で店長を務める28歳のわたし。
    病弱で色白の幼少期を過ごし、兄と結婚した「クローバーうさぎ」の「かまきりの」雪ちゃん。
    雪ちゃんがいるのに、入院している独り身の部下に親切にしている兄。
    完璧主義で、父親がいないからって礼儀のない娘にならないよう「わたし」に厳しく干渉しつづける母親。
    懐いてくる、三葉くん。
    バファリン女。


    世界が母親に管理されていた女が、年下の男の子をきっかけに、自分の世界にもがきながら這い出してくるような、そんなお話。

    はじめて彼氏ができて、母親や雪ちゃん以外の相方に、いきすぎた行為をしてしまう描写がなんともリアル。
    高いスーツを誕生日じゃないのに買ってあげたり、スーパーで肉を3パック買ったり…。
    スーパーのくだりは特に生々しくて、ちょっと息がしにくくなる。

    タイトルと反比例して、「蜘蛛を潰せないあのひと」は冒頭と結末にしか現れないが、わたしあのひとが好きだった…という帯文は、えっそうなの?という印象。

    核心を突くシーンほど言葉足らずで急展開で前後のページを読み返しちゃう突飛さがあったけど、女性的で、ストレートで、いろんなひとの感情や、立ち位置がしっかりあって、おもしろい小説だった。

    餃子を作るところ、好きだな。

  • アラサー女子と年下男子との恋愛が軸で物語は展開。お話の中で2人が家族や周り人達との人間関係とか距離感に悩むどのエピにも頷いてしまう。異性のコミュニケーションにはセックスがあるけど、同性には言葉しかないんだなとか思ったり。何かこの本深い。

  • 登場人物それぞれが心に重い物を抱えている。
    過保護で過干渉な母親と娘の関係はリアルに描かれていた。良い方向に向かうので良かったと思う。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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