- Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103325819
感想・レビュー・書評
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『ディア・ドクター』がすごく良かったので、小説も書くのかと。自身のおじさんの体験をベースにした、かなり短めの中篇。終戦の風景を淡々と描く。読み味はよろしいのだがちょっと値段が高くないかね。
軽い虚無感があるのは、『楡家の人々』、『逸見小学校』とか近い感じ。 -
この戦争は終わるだろう、終わったという感覚は、きっとこんな日常の延長であったのかもしれない。と、いつも冷静で淡々としている主人公。著者の父がモデルという。
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伝記っぽいし、割とふつうだった印象
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西川さんが得意な「ありのまま」で、祖父の戦争経験をつづる。
何もかもに乗り遅れてしまい、空振りしてまい、何の役にも立てず。むしろ、そういう人のほうが多かったのかもしれないと感じた。 -
西川さんが、戦争を体験した伯父さんの手記を元にして書いた中編小説。戦争ものというと、戦争の悲惨さ、残酷さが描かれていることが多いが、この本には血生臭いシーンは全くない。主人公は終戦3ヶ月前に徴兵され、特殊情報部という、肉体的な訓練とは無縁の場所で働き、終戦前日に敗戦を知り、一般市民が敗戦を知る前に、故郷への電車に乗る。「全てに乗りそびれてしまった少年」の空疎な戦争体験がとても淡々と書かれていた。
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2017/7/28
短い。 -
戦時下、兵役へ送り込まれたものの、戦争の実感がないまま帰郷する一人の青年の話。戦争中に全ての男性が銃を持ち、人を撃ったわけではなく、このような人々もたくさんいたのだろうな、とあらためて認識。
ずしりと重い小説も多いけれど、このすっとぼけた感じもなんだか西川さんらしいと感じてしまう。 -
その日とは、昭和二十年八月十五日のこと。そうあの日です。
その日の東京発五時二十五分発の汽車に飛び乗った通信兵の青年ふたり。部隊が解散され故郷へと帰る彼らは日本が負けたこと、戦争が終わったことを既に知っていた。
作者曰く「全てに乗りそびれてしまった少年」の戦争物語。銃撃戦もなければ空襲から逃げ惑うこともありません。しかし確かにそこに「戦争」はあるのです。過激な表現もなく涙を誘う盛り上がりもありませんが、目の前に「戦争」があるのです。その見えないものを見せる手法が却って映像的に迫ってきます。
主人公の周りに配される女性の役割も面白く、訓練する兵隊を遠くからじっと見るシスターたち、汽車で乗り合わせる幼い子連れは自らの希望にすがりつき、そしてたくましい姿を見せる火事場泥棒のふたり組。彼女たちもまた「戦争」と直面せずとも、隣り合わせで生きている人たちなのでしょう。
「戦争」という日常から「戦争が終わった」日常へと移り行く瞬間。全てが終わった後の広島の地に立ち歩み出す主人公に、そんな思いを重ねてしまいます。