- Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103367116
感想・レビュー・書評
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生と死についての短編集。心に残る佳編が多く、この猛暑の中でも、読んでいる間は自分がシンとおさまる感じがした。
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過ぎ去った時間は取り戻せない。悔やんでみてもどうにもならない。時の流れは、なんて残酷なのでしょう。
6つの短編は、それぞれ趣の異なる内容なのですが、静かな語り口に心の奥底がそっと揺さぶられるような気がしました。哀しいでもなく、せつないでもなく、やるせないでもなく、それやこれやをすべてひっくるめて平らかにしたような、なんともいえない余韻の漂うお話でした。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
この本の装丁にぴったりの
短編が詰まった一冊でした。
大切な記憶の欠片を、
どこか薄暗く濃密な場所から
呼び戻してくるような。 -
筆者の本は初めて読んだ。男性・女性、いろいろな視点で描かれた6篇のストーリー。変なロマンチシズムがなく、さらっとして、優しい。
感情についての「気づき」が多く、それをすくって書き上げる感性が豊か。
通底するテーマは、過去の自分を振り返り、いまの自分のありようを素直に認ること。誰もがどこかで求めている「肯定」を与えてくれる。 -
「緑の洞窟」「焼却炉」「私のサドル」「リターン・マッチ」「マジック・フルート」「夜の木の下で」の6編。
これまでの湯本さんの作品、例えば「夏の庭」のように少年・少女を主人公に置くのではなく、多くは既に大人になった主人公が自分の子供から青春時代に感じた怒りや理不尽さ、未来への諦念などを思い起こす形で描かれています。
そこに登場するのは純粋で繊細で儚い者たちです(対照として異常な母親が出てくるのも特徴かもしれません)。
ですから筆致はやや暗く重い。そしてどこか哀しみが含まれてます。
それにしても引き込まれていく文章です。静寂。小川洋子さんの硬質な静謐感とは少し違い、どこか柔らかさのある静寂感の中で語られる物語です。 -
「緑の洞窟」、「焼却炉」、「私のサドル」、「リターン・マッチ」、「マジック・フルート」、「夜の木の下で」
登場人物もストーリーも無関係だけれどなんとなく共通のトーンを感じる6つの短編。
思春期の心の痛みだとか、友達や家族への思い、取り戻すことのできない時間。せつなく辛い物語の中にも、どこか愛情が感じられたり可笑しみもあって‥人と関わること、生きることに希望を感じる読後感。 -
思い出の中で空想と現実が混じったような微妙な立ち位置のファンタジー。
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あまりの装丁の美しさにジャケ買いした時に読んだ時には、このひとつひとつの物語の良さが全然わからなかった。この夏、久しぶりにじっくり時間をかけて読みかえしてみて、ようやく意味がわかったというか、この物語と私の焦点があったような気がする。
誰もが抱える心の奥底にあるさまざまな想いをそっと浮上させて浄化させていくというか。今まで仕舞い込んでいたものをようやく語りだすことで見つけられるものがあるのですね。